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3.ちょっとするだけ
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時は戻って、例の部屋の中。
「リシェル……?」
祈りの手を組むリシェルに、アルトが訝しげな目を向けている。突然、大精霊への感謝を叫んだのだから当然だろう。
リシェルとしてはこの機会を逃したくはなかった。既成事実さえ作ってしまえば、真面目なアルトは絶対に責任を取ってくれる。
そんな恐ろしい下心を抱いたリシェルは、両手でアルトの手を握りしめた。
「アルト! 私なら大丈夫だよ。なにも迷うことはないよ。これは大精霊様のお導き。さっさとこの部屋を攻略しよう!」
「え、いや、どう考えても罠だろ……。それに、そんな……リシェルに負担をかけることはできない」
「負担なんてないし、大丈夫だよ。だって、さっきの板に、この部屋では予期せぬ命を授かってしまうことはありません、て書いてあったし。アルトは、どーんと気楽にミッションを遂行するだけだから!」
アルトとの子なら大歓迎だが、まだまだ旅を続けたい。そんなリシェルからすると、まさに至れり尽くせりである。ここを作った主はきっと女性だったのだろう。それは女神なのか、古代人なのか。それとも魔族なのかは、わからないけど。そもそも、部屋の目的すら不明なのだから。
「たしかに書いてあったけど、なにも大丈夫じゃなくないか?」
自信満々に告げたのに、アルトの顔は渋いままだった。むしろこっちを見てくれない。頑なに視線を逸らすのはきっと、リシェルの肌を見ないようにしているためだ。
なんとも解せない。アルトは健全な成人男性で、性欲旺盛なお年頃なのに。
まさかもう心に決めた人がいるのだろうか。そう予測したリシェルの顔が青く染まっていく。
「な、なぜ……この状況で迷うの……?」
「迷うというか、リシェルにそんなことをできるわけないだろ」
リシェルニ、ソンナコトヲ、デキルワケナイ。
あまりにもショックが過ぎて異国の言葉かと思ってしまった。理解するまでに数十秒の時間を有したほどだ。
「な、なんで!? ちょっとセックスするだけじゃん!」
「ちょっと、の基準おかしいだろ!」
激しく拒否されてしまった。いや、おかしいと言えばそのとおりだが。
どう言いくるめてやろうかと思案を始めるリシェルの前で、アルトはハッと口元に手を当てる。何か異変に気づいたのだろうか。
「いや、待てよ……。まさかとは思うけど、もしかして俺は幻覚を見てるのか……?」
「え、どうしたの? アルト?」
「そうだ、こんなご都合展開があるわけない。まさか幻覚魔法が仕掛けられていたのか? そもそも、リシェルはセックスなんて言わない」
「え? いやいや、大丈夫だよ。これは幻覚じゃなくて現実だから。ね?」
ただの現実逃避だった。真面目な彼には状況が理解できないのだろう。
いや、受け入れたくないのかもしれない。アルトはリシェルから目を逸らしたまま頭を抱えている。
「リシェル……?」
祈りの手を組むリシェルに、アルトが訝しげな目を向けている。突然、大精霊への感謝を叫んだのだから当然だろう。
リシェルとしてはこの機会を逃したくはなかった。既成事実さえ作ってしまえば、真面目なアルトは絶対に責任を取ってくれる。
そんな恐ろしい下心を抱いたリシェルは、両手でアルトの手を握りしめた。
「アルト! 私なら大丈夫だよ。なにも迷うことはないよ。これは大精霊様のお導き。さっさとこの部屋を攻略しよう!」
「え、いや、どう考えても罠だろ……。それに、そんな……リシェルに負担をかけることはできない」
「負担なんてないし、大丈夫だよ。だって、さっきの板に、この部屋では予期せぬ命を授かってしまうことはありません、て書いてあったし。アルトは、どーんと気楽にミッションを遂行するだけだから!」
アルトとの子なら大歓迎だが、まだまだ旅を続けたい。そんなリシェルからすると、まさに至れり尽くせりである。ここを作った主はきっと女性だったのだろう。それは女神なのか、古代人なのか。それとも魔族なのかは、わからないけど。そもそも、部屋の目的すら不明なのだから。
「たしかに書いてあったけど、なにも大丈夫じゃなくないか?」
自信満々に告げたのに、アルトの顔は渋いままだった。むしろこっちを見てくれない。頑なに視線を逸らすのはきっと、リシェルの肌を見ないようにしているためだ。
なんとも解せない。アルトは健全な成人男性で、性欲旺盛なお年頃なのに。
まさかもう心に決めた人がいるのだろうか。そう予測したリシェルの顔が青く染まっていく。
「な、なぜ……この状況で迷うの……?」
「迷うというか、リシェルにそんなことをできるわけないだろ」
リシェルニ、ソンナコトヲ、デキルワケナイ。
あまりにもショックが過ぎて異国の言葉かと思ってしまった。理解するまでに数十秒の時間を有したほどだ。
「な、なんで!? ちょっとセックスするだけじゃん!」
「ちょっと、の基準おかしいだろ!」
激しく拒否されてしまった。いや、おかしいと言えばそのとおりだが。
どう言いくるめてやろうかと思案を始めるリシェルの前で、アルトはハッと口元に手を当てる。何か異変に気づいたのだろうか。
「いや、待てよ……。まさかとは思うけど、もしかして俺は幻覚を見てるのか……?」
「え、どうしたの? アルト?」
「そうだ、こんなご都合展開があるわけない。まさか幻覚魔法が仕掛けられていたのか? そもそも、リシェルはセックスなんて言わない」
「え? いやいや、大丈夫だよ。これは幻覚じゃなくて現実だから。ね?」
ただの現実逃避だった。真面目な彼には状況が理解できないのだろう。
いや、受け入れたくないのかもしれない。アルトはリシェルから目を逸らしたまま頭を抱えている。
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