【完結】『ミゲル - 花園に舞う白い孔雀』(沈む陽、昇る月 - 外伝)

蒼井アリス

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第一章 鏑矢

第5話 ワンナイトスタンド (*R18)

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 ロバートはミゲルの腕を取り、引き寄せる。
 先程の優しいキスではなく、今度は荒々しく唇を奪う。
 舌でミゲルの唇をこじ開け、歯列を舌先でなぞる。
 しばらくは冷静にロバートの出方をうかがうつもりだったミゲルの体温が上がり始める。
 ロバートの舌はミゲルの口内を自在に動き回り、それを阻止しようとミゲルの舌が追いかける。だが、ロバートの舌はミゲルのそれをスルリとかわす。

 舌先の攻防に気を取られていると、「パサリ」という音がミゲルの耳に入ってきた。
 床にジャケットが落ちている。いつの間に脱がされたのだろう。それに気づかなかった自分に腹が立つ。
 その上、ロバートの指先はすでにミゲルのシャツのボタンをすべて外していた。

「えっ?」

 ミゲルが驚いている様子を見てロバートの片方の口角が微かに上がる。
 前が大きく開いているミゲルのシャツの中にロバートは手を忍び込ませ、背中側へと手のひらを滑らせた。
 ミゲルの身体が一瞬硬直する。ロバートの手が冷たすぎるせいだ。
 自分の身体は熱を帯び始めているのに、ロバートの身体はまったく反応していない。
 相手より先に自分が熱くなることはミゲルにとって屈辱以外の何ものでもない。

 ロバートはミゲルの背中に回した手でミゲルの身体を引き寄せシャツを脱がせながら、唇でミゲルの首筋を攻め続けた。
 ミゲルがロバートのシャツのボタンに手をかけようとすると、「きみはしなくていい」とミゲルの手を優しく押さえる。
 まるで手品のようにスルリと自分のジャケット、ベスト、シャツの順に身体から剥がし床に落とすロバート。
 その仕草の美しさに目を奪われていると、身体がふわりと傾いた。
 気がつくとベッドの上に倒されている。
 下から見上げるロバートの肢体は思いのほか逞しい。気取ったイギリス王室御用達テーラーで仕立てたスーツの下に上手く隠したものだと感心する。

 ロバートは、ミゲルの顔の横に片手をついてのしかかりながら、もう片方の手で器用にミゲルのズボンと下着を脱がす。あっという間にすべての衣服を剥ぎ取られる。
 今度は自分のズボンと下着を脱ぎ捨てると、荒々しくミゲルの唇を奪う。
 素肌が触れ合うが、ロバートの身体は冷たいままだ。口づけの荒々しさとは裏腹に、体温はまったく上がっていない。ミゲルの身体はどんどん熱くなっているのに。

 ロバートは唇をミゲルの首筋から乳首へと移動させ、ぷっくりと膨らんだ先端を口に含む。
 舌先でコロコロと転がすとミゲルの口から湿った息が漏れる。

「……っはぁ……」

 乳首を舌で攻めながら、手をゆっくりとミゲルの脇腹からペニスへと感じるツボをなぞるように移動させる。
 ミゲルの肌が桜色に染まり始め、ロバートの手の動きに合わせて時折身体が弓なりにしなる。

「……あっあぁ……」

 ミゲルの呼吸がだんだんと荒くなる。

 快感で朦朧とする中、やっとの思いでロバートの様子を見てみると冷静な目でこちらを観察していた。
 ゾクリとするような冷たい視線。自分の身体はこんなにも熱くなっているのにロバートの手は冷たいまま。
 その冷たい手がミゲルの屹立から後孔へと這う。
 指が入れられ、優しく解され、緩んでゆく。
 侵入してきたロバートの指は迷うことなくミゲルの快感のスポットを探し当てる。
 不規則なリズムを刻みながらその場所を刺激され、ミゲルは完全に快楽に飲み込まれていた。

 自分では制御できないほどミゲルの腰が動く。
 突然、身体の中に熱の塊が侵入してきた。ロバートの屹立だ。
 身体や手は冷たいままなのにロバートのそれは火傷しそうなほど熱い。
 ミゲルは我を忘れてロバートを己の奥へと誘い、引き込み、飲み込む。

「ロバート……もっと……もっと奥……」

 この言葉に反応して、ロバートが勢いよく腰を打ち付ける。
 部屋の中に「パン、パンッ」という音が響く。

 何度も突き上げられているミゲルの身体はベッドの上へ上へと逃げる。ロバートはミゲルの腕を引っ張りベッドの中央に戻し、ミゲルの細い腰を掴んで引き寄せさらに激しく打ち付けた。

「……いい……そこっ……」
 初めて身体を重ねたはずなのにロバートはまるで自分が開発したかのようにミゲルの性感帯を正確に攻める。

 激しく攻めていたロバートの動きが突然止まった。

「えっ?……なんで止めるの?……抜かないでよ……もっと……もっとちょうだい……」

 ミゲルは手玉に取るつもりだったロバートにベッドの上で翻弄されていることにさえ気づかないほどロバートが与える快楽を貪っていた。
 その様子を見下ろしているロバートの表情は冷静そのもので、時折ニヤリと口角が僅かに動くだけだった。

 ロバートは器用にミゲルの身体をくるりと回し四つん這いにさせる。
 後ろを向かされ視界からロバートが消えてしまったミゲルには、ロバートが次にどんな動きをするのかがまったく分からない。
 ロバートの人差し指の指先がミゲルの背骨をスーっとなぞり下りてゆく。
 その動きに合わせてミゲルの身体が美しい弧を描く。

「……あっ……ん……」
 ミゲルの口から吐息が溢れる。
 その吐息に誘われるようにロバートの屹立が後ろから一気に入ってきた。

「あっ、あぁー」

 最奥までたどり着くと動きを止めた。
 ロバートはミゲルに覆いかぶさり耳元に口を近づけ、囁く。
「そろそろ私の形を覚えてくれたかな」

 ここまで主導権を握られたセックスの相手は今まで猛だけだった。猛の場合は気持ちも伴っていたが、このロバートは会うのは今日が二度目。しかも時間にすると数時間程度の知り合いでしかない。なのにこれ程までに身体が反応し夢中になる相手は初めてだ。

 ミゲルの最奥まで届いていたロバートが動き出した。
 最初はゆっくり、徐々にスピードを上げミゲルを後ろから攻め続ける。

「……あぁ……ロバー……ト、……うゎ……もっと、もっとゆっくり……お願い……」

 押し寄せる愉楽に飲み込まれ、流され、乱れる。
 跳ねるミゲルの肢体を見下ろしながらロバートはさらに激しく腰を打ち付ける。

「もう……もうイク!……ロバート……あっ、あぁ!」

 ミゲルの身体が硬直し、次に震えるように痙攣し始めた。
 ロバートは、まだビクリビクリと波打っているミゲルを最後に大きく突き上げ、小さく「うっ」という音とともに息を吐き出し、ミゲルの中で果てた。

「うぁっ……んっ……」
 ロバートが自身の屹立をミゲルから引き抜くと、ミゲルの口から吐息とともに声が溢れる。
「抜くだけでも感じるんだな」と少し棘を含んだトーンでロバートがミゲルに言葉を投げる。

 ロバートは、人との関わりはビジネスライクに徹するという訓練を幼少期から課せられてきた。富と名声を持つ一族の宿命なのかもしれない。それはセックスにおいても同じ。自分の感情に溺れることは決してない。欲情し相手を狂おしく求めることなど今まで経験したことはなく、これからもないだろうと思っている。

 シャワーを浴びるためバスルームへ向かうロバートは振り向き、ちらりとベッドに横たわるミゲルを見る。

「きれいだな」
 そう呟いてバスルームに入っていった。

 乱れたシーツの上でまどろんでいたミゲルの耳に遠くから水音が届く。
「シャワー浴びてるのか」
 薄く目を開けガラス張りのバスルームを見ると均整の取れたロバートの身体が湯けむりの中に浮かび上がっていた。

「きれいだな」
 ロバートとまったく同じ台詞をミゲルはつぶやき、ゆっくりと眠りに落ちていった。

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