デュアルワールド

たぬまる

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アテネポリスの騒乱

タウラス出陣

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 俺が何度も回復魔法を使用してもドドリーゴの傷は治らず、身体はドンドン冷たくなっていく。
 こうなったら復活アイテム「神の雫」しかないか……

「アーリア、少し離れて居てくれないか?アネモイ、アーリアを頼む」

「かしこまりました、さぁ姫此方へ ”システムマジック、アイアンシェル”」

 アネモイがアーリアを連れ、少しはなれた所で半透明な鈍色の膜を発生させた。アレスはそれを確認すると、アイテムボックスから虹色の液体の入った小瓶復活アイテム「神の雫」を取り出した。
 オリンポスファンタジーで、復活アイテム「神の雫」を持っている者は、ほぼいない。初期のオリンポスファンタジーには、復活アイテムや復活魔法は存在していなかった。
 復活するには復活ポイントに転送されるしかなかったが、ある時俺は復活魔法を見つけることに成功した。
 しかし、それはクロノス社から使用を控えるように警告を受けた。

 理由は、復活魔法を多用すると蘇った人間は、現実世界において死の概念が薄くなる危険性が有るということだった。

 しかし、復活魔法やアイテムを望む声に渋々答える形で、限定5個だけランキング5位に商品として一度だけ配られたことがあった。超レアアイテムだ。


 それをドドリーゴの身体に振り掛けると、傷は塞がったが呼吸は戻らない。
 何がダメなんだ?「神の雫」はアイテムボックスに戻っていないという事はちゃんと使えたはずだ。

「何でだ?何でなんだ!」

 俺は人の死を此処まで近くに感じたことは無かった。他に方法は無いか必死に考えるが、俺の復活魔法は神の雫と同じ効果だ。くそ!まったく思いつかねぇ。
 俺はどうしたらいいんだ!無力感に苛まれ涙がこぼれた。その瞬間、ドドリーゴが薄い緑の光の膜に包まれふわりと起き上がり、光が収まるとドドリーゴがゆっくりと目を開いた。

「……ここは?俺はゼウス様の前に居たはず?」

 戸惑うドドリーゴの右頬に軽くパンチすると

「痛て!あ?アレス?どうしたんだ?」

「心配させやがってこの野郎」

 俺の行動にドドリーゴは戸惑ったような顔をして呆然としている。

「ドドリーゴ!良かったですわ!!アレス様ありがとうございます」

 アーリアがこっちへやってきて飛び上がって喜び合っていた。
 俺はアネモイの方へ視線を向けると、すでにアリエスとタウロスが来ていた。

「マスター御指示を」

「アリエス、このポリスにもぐりこんだ犬を狩り出せ!レギオンドック200を出そう。
 タウロス、レギオンリビングアーマを800出す、敵軍を狩りつくせ。
 アネモイは此処でアーリア達を守れ、ナイトローグ20を預ける」

「「「は!」」」

 3人は了承し、俺はアイテムボックスからレギオンの魔石を手渡した。3人は恭しく受けとり、アネモイ以外は窓から外へ飛び出していった。

 アネモイはナイトローグを呼び出し、部屋と廊下に配置すると俺の後ろへ控えた。

「あの、アレス様今の方々は?」

「俺の配下だよ、俺も今から出るからアネモイと大人しくいてくれ」

 俺が頬に触れてそう言うと、アーリアは涙目になって俺を見上げた。

「わ、私は王族です、民の盾として前線に立たねば……」

 震えるアーリアは何処かニケを連想させる、仕方ない……

「アーリアの変わりに俺が盾となり剣となろう、それに王族が後ろにいれば士気が上がるんだよ」

「でも」

 俺はなおも言いすがるアーリアの肩に手を置いてイスに座らせ、目を見つめた。

「俺に任せておけ、アーリアはお願いと言えば良いんだ」

「アレス様お願いです、我が民をお救いください」

 胸の前で手を組んで俺を見上げるアーリアに笑いかけ

「任せろ!
 アネモイ、後は任せた」

「マスター御武運を」

 俺も窓から外へと飛び出し、飛翔魔法を唱え空へと舞い上がり、遥か上空へと上がっていった。

 篝火が見える平原よりも少し離れた所に船影がうっすらと見えた。

「俺はあれを獲物にするか」

 アイテムボックスからデスサイズ(死神の鎌)を取り出し、ステルスローブを頭から着込んで、一気に船影の方へと向かっていった。




 タウロスは城壁の外へ飛び出すと、アレスから預かったリビングアーマーを800召喚をして、平原の丘陵に陣取ったミノス伯爵とミケーネ帝国連合軍に向かって駆け出した。

 ミノス伯爵とミケーネ帝国将軍、サイ・スンは天幕の中で報告を受け、愚かな指揮官もいたものだと酒を飲みながら笑いあっていた。
 城壁の外に全身鎧の歩兵隊が突然現れたのは見ていた。しかし、哀れな歩兵隊は4万の弓兵の矢に飲まれてここに辿りつくことはできないだろう。

「しかし、愚かな指揮官ですな」

「ああ、まったく自殺なら他所でやってほしいものだな」

 黒い鎧を着たサイ・スンが笑うと、オレンジの帽子と法衣を着たミノス伯爵が頷いて笑う。

 だが暫く後、驚く報告が齎される。

「閣下!お逃げください!!我らは化け物に攻められています」

「何をバカな!!」

 伝令を押しのけ、サイ・スンが外に出ると、中央まで全滅した陣容が目に入ったのだ。

 時間は少し戻り、タウラスたちが敵軍と衝突する直前。

「なぜだ!なぜ矢をあれだけ受けて倒れない!」

 敵はハリネズミのようになっても進み続けていた。兵達はかなりの恐怖を覚え、中には腰を抜かす
者も居た。

「おう、もう食って良い」

 タウロスの言葉に答えるように、リビングアーマは自分達に刺さっていた矢をその身体に取り込み始めた。
 取り込み終わると、リビングアーマーの身体が一回り大きくなった。

 その質量で盾を構えた敵兵に衝突し、吹き飛ばしていく。タウラスは両手に持った二つの戦斧を振り回し、敵兵をまるで草を刈るように軽やかに薙ぎ払っていった。

「わあはははは!リビングアーマ隊はとにかく兵を狩り続けな。
 アタイは大将首を取ってくる」

 そう言って二つの戦斧を前方に投げると、遥か先まで敵兵を薙ぎ払い道が出来た。
 タウラスはガンドレットを打ち鳴らし、楽しそうにその道を生き残りを殴り飛ばしながら駆けていった。



 な、何なんだ……あれは……刈り取られたように出来た道を駆け抜けてくる。最初は点だった奴が今ははっきりと見える。
 我らは誇り高き帝国軍第12騎士団だぞ、ワシは帝国24騎士24席のサイ・スンだぞ。
 何故こんなに理不尽なことがおきているんだ。

 かがり火に照らされた血塗れのガントレットをつけたメイドは、戦場にはあまりにもアンバランスだった。我が精兵が倒そうとが殺到するが、まるで踊るようにその華奢な身体を動かすたび、兵達が空に舞う。

「あ、悪魔でも相手にしているのか我らは」

 ドンドン近づいてくるメイドに恐怖を覚えたワシは後退ると、ミノス伯爵がワシの足に当たる。

「ミノス伯爵、あれはなんだ?!」

「わ、解りません!あんな化け物が居るなんて聞いたことない!」

 ミノス伯爵が叫んだ瞬間”どん!!”という音と共に地面が揺れ、天幕が吹き飛んだ。
 そして、ワシ等の前にあの化け物メイドが風に髪をなびかせ立っていた。

「よ!星の導きで殺し合いに来たぜ」

「お、お前はなんだ!」

 口角を上げてニヤリと笑うメイドにワシが問いかけると、まるでつまらない物を見るような目になり

「はぁ、厚顔不遜にも我が主が住まわれるポリスに攻め入ってきた愚か者をぶっ殺しに来たメイドだよ」

 主?ならば、ワシの中で交渉プランが立ち上がる。

「よし!貴様の主を帝国で保護してやろう、兵にも手出しをしないように言っておく。
 どうだ?」

 帝国は今領土拡大中でかなり景気が良い。何より絶大な力を持つ強国に保護されるなど名誉な事だ。喜んで此方につくだろう。

「は?お前何を言っているんだ?
 お前達を狩り尽せと主はおっしゃったのだ、交渉など出来るわけないだろう?」

「な!何を言っているんだ?10万の兵が此方に居るんだぞ?
 何より帝国には1000万の軍勢が……」

 わしの言葉に耳を貸さずメイドはへらへらと笑い

「戦ってみた結果だけど、お前らごときではリビングアーマすら傷つけることも出来ない。
 800対10万で蹂躙されている事でもまるわかりだろう?
 その兵力でどうやってそれより遥か彼方の高みにいらっしゃる主に害をなすと?
 何より、貴様は此処で死ぬのだからな」

 り、リビング……アーマー……だと?
 バカな!あの災害級の魔物が800……

「うそだ」

「まぁ信じる信じないはお前次第だ、死ぬのは変わりないけど」
 
「ひぃ」

 ワシらの後ろでミノス伯爵の悲鳴が聞こえた瞬間。

”ぶじゅ”

 メイドが消え、後ろから湿った音が聞こえ続けていたが、怖くて振り向くことが出来ない。

「わ、わかった降伏する、降伏だ。
 だから止めてくれ、お願いだ、助けてくれ」
 
 ワシは無様でもいい、助かりたい一身で地面に頭をこすりつけ、慈悲を希った。

「はぁ?貴様は軍人だろう?戦えよ!」

「た、頼む主殿に確認してくれ!それでダメなら戦うから、お願いします~」

「はぁ~貴様には誇りは無いのか?聞いてみてやるから逃げるなよ。
 逃げたら主からオルトロス借りてでも探し出すからな」

 メイドはワシが何度も何度も首を縦に振るのを確認すると、独り言を言い始めた。

 結果、我らはアーリア王女陛下の奴隷としての労働力と、帝国の情報を伝える事で生き残ることが出来た。




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