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第二章 自重を知らない回り

プロローグ

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 トッポは久しぶりに王都の自分の店に帰って来ていた。
 龍天山の運営も安定して来ていて、ドラゴニックメタルの需要で雇用が増えた所に龍姫をしたって数十人の龍人が集まり、かなりの発展をしていっているし、更に住人を募る予定で帰ってきたのだった。

「や~まさかこんなに早く発展するとは思わなかったっすよ」

「まさに嬉しい悲鳴ね」

 執務室に主が久々に戻り、トッポの奥さんが嬉しそうに給仕をする姿がほほえましい。

 元来は王国とのやり取りを奥さんに任せていたので、自宅を王国に置いていたが、支店長も育って来たのでドラゴニアに呼ぼうと思っていたのもあった。

「あなた、これからは私も行けるの?」

 奥さんは蜂蜜色の短い癖毛の長身で、たれ目が庇護欲を掻きたれるっすとトッポに言わせるのだけあってとても可愛らしい。
 そんな奥さんにニコリと笑いながら聞かれると、少し考える風にうなる。
 本当は即答でOKを出したいが、これもトッポにとってのコミュニケーションであった。

「そうっすね、街道も地龍建ちのお陰で安全だし移り住むっすかね」

 飛び上がるように喜ぶとピタッと止まると

「あら?移り住むの?行くだけだと思ってたわ」

「実はこれから魔物素材もドラゴニアのギルドが中心になりそうなんす、今まで出回っていなかった龍人国の取引は間違えないっす」

「そうなのね、忙しくなりそうね」

 奥さんは指を口の前で合わせて楽しそうに笑ってドラゴニアの風景はどんな感じかとか色々と聞いて来て、楽しそうにしていた。

「だから、色々な職人やらの手配をしないといけないんす、勿論手伝ってもらうっすよ」

「は~い」

 二人で店の者に色々と手配を申しつけ、二人は職人地区に手分けして話をしに向かった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

その頃王城にて


「ですから龍天山は元来我が辺境伯領です、当然私が税を取る権利があるのですよ」

 デップリト太った男が国王を前に龍天山の権利を寄こせと訴え続けている。
 国王もハインツも辟易としつつその訴えを聞いていたが、ついにめんどくさくなったのか

「訴えは聞いた、しかし、辺境伯家では必要ないから商人にくれてやった、税は商人に請求しろと言ったのは貴様だったな?」

「う、しかしあれほどの恩恵は商人ごときには勿体無いかと・・・」

「商人も数年前に男爵になり、税を確実に納めておる。
しかも今回の発展で新たに領主になった男に子爵位をおくる予定である。
 もはや辺境伯家の支配権は認められん」

 肘掛に肘を置きめんどくさそうに、却下を伝えると男は顔を赤くし立ち上がると

「当然の権利を主張しているだけだ!そもそも新興貴族など認めてもいない!戦も辞さないつもりだ!!ハンターギルドからも人では出るのだからな!!!!」

 国王は呆れてハインツにさっさと済ませろとサインをだし、玉座に深く座りなおした。

「辺境伯、あなたの暴言は看過出来ませんな」

 冷たい目で辺境伯を見つめると、手元の書類を取り出し、配下に縄を掛けられた数人の男達を連れてこさせた。
 男達を見ると辺境伯は明らかに動揺しうろたえる。

「な、なぜ我が息子が縄をうたれているのだ!!」

「貴方は数年前から息子の嫁に姫をと色々画策されてましたね、上手くいかないとそこの男達に馬車を襲わせようとしたり・・・
あまつさえ、王太子のお命を狙われてましたね」

 書類を見せ付けるように断罪を始めるハインツに辺境伯は指を刺し

「貴様なぞに言われる覚えも身に覚えも無いわ!」

「愚かですね。
 すべての証拠はここにあります。
 しかも公金横領の証拠も全て揃っているのですよ、ハンターギルドのギルドマスターは確か貴方の弟でしたね
 彼の罪状もかなり上がっていますよ、前ハンターギルド長のお嬢さんにした行為も全てね・・・」

「ね、捏造だ証拠は無いはずだ!何より弟も我もこの国に役立っていたからここまで来れたはずだ!!」

「貴様は証拠を隠すのが上手かっただけで、近年は調子に乗りすぎてそれすらおろそかにした結果、ここまで証拠が出てきたのだ。
確実に断頭台に送れる証拠がな、息子は直ぐに証拠が出てくる稚拙さだったがな」

 王とハインツの断罪に膝を突く、ハインツは手に持った棒鞭で辺境伯の肩をしたたかに打ち付けると、たまらず膝をつく。

「ぐ」

「貴方はやりすぎましたね、きっちりと責任はとっていただきます」

「いやだ!我は辺境の猪豚と歌われた騎士だぞ、放せ!!」

 辺境伯達はその後、通称「ハインツのお部屋」に連行されて行った。

「これで、先ずは一つ問題が片付きましたね」

「ああ、ついでだ、気づきはしないだろうが、元辺境伯領をブラウン様の領地にしておいてくれ、クロバとトッポには周知しておいてくれ」

「あはは、気がついたら辺境伯なんて、どんな顔をされるか楽しみですね」

「問題ない、今後の楽しみになるのだからな、後は」

「ハンターギルドをもう少し見せしめに甚振りますか」

 中々に腹黒い二人の自重のない好意(誤字ではなく)がブラウンの知らない所で進んでいくのだった。
 しかも、これは始まりにすぎなかった。
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