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第二章
2.
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ケーキの隣に置いてあった炭酸水を、引っ掴んで勢いよく飲み干した。炭酸で喉が焼けるように痛かったが、記憶の最後に見た、自分の翼が切り落とされる恐怖の瞬間に比べたら、なんてことない。
" 自分の……翼がっ!!"
ブワッと感情が揺れ動いた波が来て、一瞬にして涙がボロボロと零れた。
テーブルの向かいに座ったキムさんは、そんな僕を頬杖をついて見詰めていた。
記憶の中にも、この人がいた。今よりも、もっと柔和な顔つきで、眼の奥が温かく笑っていた。そして、キムさんの背中には翼があった。
「キムさんは、天使だったんですか?」
「はい。翼は黒いんですけど。それで、相談っていうのは……」
「…ちょ、と待って下さい…」
キムさんが話し出すのを遮って、僕は両手で顔を被った。涙が溢れて止まらず、上を向いて拭いても拭いても目の前が潤んだままだ。
今脳裏に映し出されていた記憶の主である天使は、5才の僕の命を助けたから罰として人間になったのだという。つまり、僕は彼の犠牲のもと生きているのか?
「あの、お話を聞く前に教えて下さい。天使は、今何処に?」
「私が話したいのも、その事です」
キムさんは、僕が落ち着くまで待ってくれていた。その数分で僕は深呼吸をし、テーブルの上にあったティッシュの箱を手繰り寄せて鼻をかむ。
フォークが刺さったままの苺は迷った末、皿に立てかけた。
僕が顔を上げて、キムさんを見たのを合図に、彼はぽつりぽつりと話し始めた。
「ジョン様を助けた天使は『ジミル』といって、私とは魂が繋がっている兄弟のような存在です。だから、何処にいてもジミルの存在は感じられていました。けれど、ジミルが人間になってしまったら、その繋がりがぷっつりと切れて……何処にいるのかわからなくなったんです」
キムさんが一瞬だけ彷徨わせた視線に、心細さを感じた。きっと、ジミルという天使が大好きで、ずっと一緒だった存在がいなくて不安で仕方ないのだろう。
「私はジミルと離れる前に、ジョン様を護ると約束しました。だから、ジョン様の所に居ればまたジミルに逢えると思っていました」
「約束?護るって?」
「ジョン様が、命を落とさないように。生きて再び逢えるようにって。ジョン様は、5才で死ぬ運命でした。運命は、今も変わらない。数年生きている時間が延びただけにすぎないのです。そして今日の20歳の誕生日が、リミットなんです!」
「え?リミットって?つまり僕は、これから死ぬってこと?」
「……そうなんですが、そうではありません」
「?」
「ジョン様は、天使になるんです!」
「……」
思考停止。
" 僕が、天使になる……"
予想外の話に、とてもついていけない。
「私が頼みたいのは、ジョン様が天使になったら、ジミルを探しだして欲しいんです」
「探しだす?どうやって?」
「手がかりはその羽根しかありません。ジミルは人間にされた時に、記憶をコピーしてロックをかけていました。だから再会してもジョン様のことが、すぐにはわからないと思います。だけど、記憶の鍵はジョン様に関わっている。必ず、ジョン様を思い出す。そうしたら……」
「……そうしたら?」
「ジミルを、天使に戻して下さい」
" 自分の……翼がっ!!"
ブワッと感情が揺れ動いた波が来て、一瞬にして涙がボロボロと零れた。
テーブルの向かいに座ったキムさんは、そんな僕を頬杖をついて見詰めていた。
記憶の中にも、この人がいた。今よりも、もっと柔和な顔つきで、眼の奥が温かく笑っていた。そして、キムさんの背中には翼があった。
「キムさんは、天使だったんですか?」
「はい。翼は黒いんですけど。それで、相談っていうのは……」
「…ちょ、と待って下さい…」
キムさんが話し出すのを遮って、僕は両手で顔を被った。涙が溢れて止まらず、上を向いて拭いても拭いても目の前が潤んだままだ。
今脳裏に映し出されていた記憶の主である天使は、5才の僕の命を助けたから罰として人間になったのだという。つまり、僕は彼の犠牲のもと生きているのか?
「あの、お話を聞く前に教えて下さい。天使は、今何処に?」
「私が話したいのも、その事です」
キムさんは、僕が落ち着くまで待ってくれていた。その数分で僕は深呼吸をし、テーブルの上にあったティッシュの箱を手繰り寄せて鼻をかむ。
フォークが刺さったままの苺は迷った末、皿に立てかけた。
僕が顔を上げて、キムさんを見たのを合図に、彼はぽつりぽつりと話し始めた。
「ジョン様を助けた天使は『ジミル』といって、私とは魂が繋がっている兄弟のような存在です。だから、何処にいてもジミルの存在は感じられていました。けれど、ジミルが人間になってしまったら、その繋がりがぷっつりと切れて……何処にいるのかわからなくなったんです」
キムさんが一瞬だけ彷徨わせた視線に、心細さを感じた。きっと、ジミルという天使が大好きで、ずっと一緒だった存在がいなくて不安で仕方ないのだろう。
「私はジミルと離れる前に、ジョン様を護ると約束しました。だから、ジョン様の所に居ればまたジミルに逢えると思っていました」
「約束?護るって?」
「ジョン様が、命を落とさないように。生きて再び逢えるようにって。ジョン様は、5才で死ぬ運命でした。運命は、今も変わらない。数年生きている時間が延びただけにすぎないのです。そして今日の20歳の誕生日が、リミットなんです!」
「え?リミットって?つまり僕は、これから死ぬってこと?」
「……そうなんですが、そうではありません」
「?」
「ジョン様は、天使になるんです!」
「……」
思考停止。
" 僕が、天使になる……"
予想外の話に、とてもついていけない。
「私が頼みたいのは、ジョン様が天使になったら、ジミルを探しだして欲しいんです」
「探しだす?どうやって?」
「手がかりはその羽根しかありません。ジミルは人間にされた時に、記憶をコピーしてロックをかけていました。だから再会してもジョン様のことが、すぐにはわからないと思います。だけど、記憶の鍵はジョン様に関わっている。必ず、ジョン様を思い出す。そうしたら……」
「……そうしたら?」
「ジミルを、天使に戻して下さい」
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