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しおりを挟む入室するとそこには父と母、家令のセバスが待ってくれていた。
母はさっき部屋に訪ねて来てくれた時の様に
足を組んで座っており、いつもの姿とは違うが、
何となくこちらの方が似合っている様に見える。
「レイラ。こちらに座りなさい。ここのところ、スープだけだったのだろう?」
という父の言葉にいつもの席へ腰掛けると、
「どうぞ。」
と入れられたお茶はカモミールの優しい香りがする。家令のセバスだ。セバスが入れる紅茶はいつもおいしいが、母の好みである春摘みの香り豊かなものが多い。
両親のカップの中とは色も違うし、
レイラのためを思って体に優しいハーブティーをブレンドして淹れてくれたのだろう。
レイラは、表情は変わらないけれどいつもみんなのことを思い家を整えてくれるセバスの優しいところを感じて嬉しく思った。
ありがとうと告げたそのとき、ノックの音と共に
優しいミルクとシナモンの香りがした。
「レイラ様!本当にようございました。
レイラ様のお顔を3日も見れないなんて…!
さぁさぁ、食べてくださいまし。
急にお肉やケーキなんて食べるとお腹がびっくりしてしまいますからね。
ミルク粥です。どうぞお熱いうちにお召しになってください。」
女の子は少し太っているくらいが1番可愛いのです!食べるのを我慢なさるなんて…と眦には涙が浮かんでいる。
アニタはメイド長であり、レイラの乳母でもある。
第2の母とも言える人であり、その娘のマリアは第2の姉である。
メイド長として高位貴族夫人の様ないつも完璧な礼儀作法を身につけているが、レイラに対して愛情深い人であり自分の子どものように子どもの頃はアニタの大きな胸で抱きしめてもくれたりもした。
このミルク粥はレイラにとって母の味ともいえる。
風邪をひいた時などしか出てこないが、ミルクに砂糖とシナモンを入れて、パンを浸して煮たものだ。
甘くて美味しくて優しい味。
この夫妻の優しさに甘やかされて育ってきたのだ。
両親を含め、家族ともいえるセバスやアニタをこんなにも心配させてしまった。
「お父様、お母様、それにセバスにアニタ。
心配を掛けて本当にごめんなさい。
お母様はいつも私らしくいなさいと言ってくれていたのに、私ったら他の方の姿ばかり追いかけてしまっていたわ。
お母様やお姉様みたいだったらって何度も考えたの。
けど、どんなに考えたって私はお母様でもお姉様でもないわ。
やっぱりぽっちゃりさんなんて言われるのは悲しいけど、事実だものね。
私らしく舞踏会ではお菓子ビュッフェを楽しむことにするわ」
「レイラ。よく言ったわね。
大丈夫。あなたは誰より可愛いのよ。
紛い物の美しさに狂って女神の加護を受けている
鶏ガラ達とはあなたは違う。あなたは私とドミニクの子。頑張りなさいとは言わないわ。
そのままのあなたで舞踏会に臨めばいいの」
そういう母はやっぱりかっこ良くて
舞踏会でもきっと大丈夫だと思えた。
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