別れ道のツバサ

鏡恭二

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始まりのツバサ

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ここは青森県九田市。
のどかなこの街に、帝政大学がある。

今日は卒業式。
それぞれの未来に向かって、学生たちは旅立とうとしていた。

アパートの荷物をまとめ、偶然、街角で出会った男女。
ふたりは言葉少なに、でも確かに目を合わせ、会釈だけで通り過ぎた。

けれど、数歩進んだあと、彼は振り返る。そして敬礼。

「警察官採用試験、通ったんだ。
 俺、卒業したら市民を守る警察官になる。日本の治安を守る男になるよ。」

女は、少し笑って返す。

「そう。よかったね。……私も、医師国家試験、受かったの。
 私も、人の命を守る。頑張ろうね、お互い。」

それが、ふたりの最後の会話になった。

涙がこぼれた。
これは、交わることのなかった男女の、切なくも、確かに熱かった青春の恋物語だ。

帝政大学 AIメディカル統合学部──
西川宗助は、この学部の学生だ。

彼の高校はそこそこ有名な進学校だったが、
受験の燃え尽きで勉強は手につかず、漫画ばかり読んでいた。いわゆる「深海魚」。

「ラブコメ漫画のヒロインみたいな幼馴染が、目の前に現れたりしないかなぁ……」

そんな妄想をしながら、授業をサボって自販機に向かう。
小銭を落として、拾ってくれたのが──

「はい……」

ロングヘアに透明感のある肌、化粧っ気もないのに目を奪われる美しさ。
彼女の名は「まどか💛」だった。

その瞬間、宗助の胸に何かが灯った。

受験は失敗。医学部には届かず、滑り止めのAI医療学部に入学。
そして始まった、ちょっとダラけた大学生活。

最小限の単位だけとって、サボり癖がつき、合コン三昧。
大学デビューを狙って、ミルクティー色の髪、そこそこの服装、普通の顔──

「香織ちゃんは薬学部なんだ。俺はAIメディカル統合だよ」

ある合コンで隣に座った香織と、アニメの話で盛り上がる。
そして二次会、カラオケ。

宗助「情熱のそのあとで、熱唱しまーす!!」

三次会は男子だけの反省会。

「宗助は誰がよかった?」「俺は香織ちゃんかな。笑顔、可愛かったし……」

胸が高鳴った。久しぶりに「本気でいいな」と思った相手。
帰りの始発電車で送ったLINE──

『今日は楽しかったです。また今度、話しましょう』

数時間後、返信が届く。

『昨日は楽しかったですね。また宗助さんの話、聞きたいなぁ』

恋の予感がした。小さく、でも確かな“予感”が。

だが、恋は、思わぬ形で終わる。

別の飲み会。
場が盛り上がりすぎて、気がつけば酔って池に飛び込むバカノリ。

そのとき、ポケットには──

宗助「あっ!!スマホ、入ってた!!」

慌てて取り出すが、画面は真っ黒。
電源はつかない。LINEも連絡先も──すべて、消えた。

誰も助けてはくれない。合コンの仲なんて、所詮その程度だ。

宗助「……終わった」

あの時、人生が変わるチャンスはあったのに。
軽く扱っていた“恋”に、ようやく本気になった矢先だった。


 
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