美醜逆転の世界でレンタル彼氏をしてみた

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初めてのデート【中編】

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雑貨屋を見終わると、ちょっとお手洗いに行くとマナと別れた。その間にマナが気に入っていたものを雑貨屋で購入した。


渡すのはデートが終わって別れる時と決めているのでしばらくしまっておく。






そして合流しようとマナのところに向かうとそこには…女たちに囲まれているマナの姿があった。マナの表情と相手の女たちの顔を見る感じだと良い感じの雰囲気じゃなくて、かなり悪い雰囲気。たぶん、相手の女たちがマナに絡んできたという感じだろう。マナが自ら喧嘩を売りに行ったりするような性格じゃないだろうし。


一応、今日はマナの彼氏だ。しっかりと彼氏としての役割を果たさなければいけない。

近付くと会話が少しずつ聞こえて来る。

「あんたみたいなブスがなんでそんなオシャレしてるの?」


「そうよね。そんな恰好をしても見せる相手もいねぇのに」


「あんたなんかに着られている服が可哀そう」

かなりひどいことを言ってるね。俺も金には汚い人間だから人のことはあんまり言えないが、本当にこの世界の人間の価値観というものを大きく表している。


どうやら俺が近付いてきたことにマナは気付いたようで首を横に振っている。来なくていいと伝えているんだろうが、だけどここでいかなかったら彼氏ではないだろう。彼女がピンチに陥っているのに手助けせずにずっと見ているなんて、そんなの彼氏とは言えないとは思うしね。


もちろん、レンタル彼氏ではなくて、俺が関係なかったら助けなかったと思うけどね。




だから今はごめん、助けるよ。




「ごめん、その子は俺の彼女なんだけど、なんかようかな?」

急に声を掛けたことで相手の女たちは目を見開き、びっくりしている。


「はぁ!?」


「いやだからその子は俺の彼女だからさ、あんまり怖がらせないでくれるかな」


「こんな奴に彼氏!?」


「うん、この子の彼氏なんだ」

どうやら目の前の彼女たちは僕の言葉を信じてきれていないようだ。それならと思って俺は改めてマナの手を優しく握った。


「彼氏なんだ。だから、ごめんね」


「う、うそ…」

「本当だよ。僕は彼氏でこの子は彼女だ」




手を繋ぐだけじゃさすがに証明としては弱いか。でもさすがにキスをしたりするのは彼女の同意なしにするわけにはいかない。

ここで一人目のお客さんを逃すようなことがあってはならないのだ。ここは慎重に彼女を守りつつ、彼女との関係もしっかりと保って行かなければならない。



その間に挟まれているのが俺の現状。


「ほんとにあんたはこいつの彼氏なの?」


「彼氏だよ。だからさ、そんな怖い顔で俺の彼女のことを見ないでくれるかな」


「う、うそよ。こんな奴に彼氏がいるなんて」


「本当だよ。彼女は僕の恋人」

このままじゃ埒が明かないので俺は少しだけ行動に出る。さすがにいきなりキスをしたりするのは嫌悪感が強いだろうから、比較的まだやわらかい方にしよう。


俺はマナの方を向いてなるべく優しく抱きしめる。マナは何をされているのか状況を理解していないのか、それともハグを受け入れてくれているのか分からないけど、抵抗されることはなかった。

そしてその光景を相手の女たちに見せることで自分たちが恋人であることを強くイメージ付けて、ここから立ち去るような雰囲気を作る。



それからどれくらい時間が経ったのか分からない。でも、さすがにそろそろ離れるべきかと思って、離れようとするとなぜかそれができない。


「ま、マナさん?」

その理由はマナが俺の背中に手を回していて、力を加えているからだ。この世界の女の力というのを少し侮っていたかもしれない。僕が全力で抜け出そうとしても抜け出せず、今はマナが自分の意思で離してくれるのを静かに待つしかない。


「マナさん、このままだとデートを再開できないから離してくれると嬉しいな」

なるべく優しく言うとマナも理解したようで離してくれた。


「ご、ごめんなさい」


「ううん。こっちこそ急に抱きしめたりしてごめんね」

そこで俺はなんでこんなことをしたのか思い出して、あの女たちを探すと近くにもういなかった。


「どうやらあの子たちはどこかに行ったみたいだね」


「そうみたいです」


「よかったよ。それにしてもごめんね」


「な、なんでヒロさんが謝るんですか?」


「だって俺がマナさんから離れなければ、マナさんがあんな人たちに絡まれることもなかっただろうし」

この世界でのマナの立場を少し考えるべきだった。今日のマナは俺の恋人でお客だ。楽しくデートを成功させるのが仕事なのであれば、少しでも邪魔が入ることも考慮して行動するべきだった。


でも、マナは自分の所為だと思っているようで顔は暗くなっていく。



「それはヒロさんの所為じゃありません。私みたいなブスがこんなオシャレをしていたのが悪いんです」

マナは苦笑いを浮かべながらそう話していた。ここまで自虐の方に考えがいってしまうのはこの世界で罵倒されたりして育ったからだろう。

王国騎士になどの仕事に就いても自尊心が戻ることはなかった。



俺も別に自信過剰ってわけじゃないが、それなりに自分のことは好きだ。

人によっては俺みたいな性格の奴が嫌いな奴もいるだろうし、それをしっかりと伝えて来るような奴もいた。だが、俺は別にそんなこと気にしない。だって俺はこの性格がそれなりに好きだから。


「マナさんの所為じゃありません。今回は俺の責任です。それにマナさんはとてもキレイです」

俺が特殊な価値観を持っているようにこの世界では思われるんだろう。だが、それでも俺から見てマナは普通にキレイな部類に入る人間だ。なのでこの言葉にウソはない。


「だからあまり自分のことを卑下しないでください。マナさんがそんな風に卑下すると『キレイ』だって言っている俺の感覚がおかしいみたいじゃないですか。俺は本気でマナさんのことをキレイだと思っているので」

まぁ…おかしいんですけど、この世界ではね。


でも、マナにはこういう感じで言う方がいい。

自分のことだと卑下するので、少し俺を巻き込むことで卑下しずらい状況を作り出す。別に俺はマナの性格を治したいわけではないが、今日はデートだ。隣でずっとこれから卑下されるのはさすがに面倒だし。


「マナさんはもっと自分に自信を持っていいんです。これまでマナさんは色々なひどい言葉を言われてきたかもしれないですけど、少なくともここに一人、あなたのことを好きな人がいるので安心してください。俺じゃ頼りないかもしれないけど」

マナは一瞬動きを止めたが、すぐに頬が赤く染まりだした。

「…あ、ありがとうございます…」




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