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回想録2
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あの後、私は急いで帰路へ向かいました。
彼女との余韻が、ほかの貴族に消えないようにする為です。
揺れ馬車の中で、先程の彼女とのやり取りを思い返します。家に帰ると、義姉が何か言ってましたが気にする必要はありません。
風呂にも入らずベッドへ向かい、会ったばかりの淑女に思いを馳せました。
マルグリット嬢。短いやり取りではありましたが、彼女は博識であると、十分に理解しました。
明日はサロンへ向かうつもりです。その時に彼女がどこの生まれで、どんな人なのか探りを入れてみましょう。高位貴族なのですからきっと素晴らしい出自の方に違いありません。
香水の残り香が更に強くなった気がします。思わず深く吸い込み、胸の奥がざわめくのを感じます――我ながら少し気持ち悪いでしょうか。
普段は贅沢をしない私です。多少値は張るかもしれませんが、香水の種類も調べてみたいと思います。きっと、義姉も許してくれるでしょう。そう自分に都合よく言い聞かせながら、残り香に共に私は深い眠りへと落ちていったのです。
私はすぐに彼女の正体で衝撃を受けるとも知らずに――……。
翌日、サロンへ行くとある噂で持ち切りでした。
ラ・トゥール家の娘が社交界に出ていた。との話です。ラ・トゥール家と言えばこの国でも有数な侯爵家であり、様々な異名を持ちます。
ラ・トゥール一族その物があまり社交界に参加しないのに、家長の父親と娘が侍女と共に参加していたとの事でした。
侍女の顔は少し赤らんでいた。
淑女の方は完璧な挨拶と会話で男性陣を渡り合っていた。
ウィットに飛んだジョークもあったらしく、関わった男性は全員彼女の虜になった…など等です。
「あ、あのう…そのラ・トゥール家のお嬢さんはどんな名前なのですか?」
思わず私も踏み込んでしまいます。
「なんだ、キミはマルグリット・ド・ラ・トゥール嬢を知らないのか?」
マルグリット、あの昨夜会ったマルグリット嬢でしょうか――?
大凡の淑女が嫌がるだろう鷲鼻も、整った顔立ちにはなんの意味成しておらず、くすんだ灰色の目は、私の様な愚かな人間を真っ直ぐに見据えているのでしょう。そして天使のような悪魔の笑顔――あの笑顔に少し弄ばれたい自分がいることも、否応なしに理解できてしまうのです。
しかし、早まるのは良くありません、マルグリットと言う名は珍しくはありません。
それに彼女があの異名を持つ淑女ではない可能性も捨てきれません。
「いやぁ…何分、社交界には疎くて。」
「だからと言って、ラ・トゥールの娘を知らないやつはいないだろう。ほら、年齢の割には背が高くて、鼻筋の整った灰色の瞳で有名な魔女だ。
まぁ、お前みたいなやつが中々お目にかかれる存在じゃないから、知らないのも無理はないな。」
なんと言うことでしょう。昨日のマルグリットと同じ特徴ではありませんか。それでも、私は否定したくなりました。
彼女が公爵から侯爵へ落ちぶれた家。塔の上の魔女ー…禁断の名家等、そんな汚名を被る家ではない――と。
だからと言って、本人に聞く訳にはいきません。とはいえ、今の社交シーズン、必ずしも会えるとは限りません。それに会えたところで、彼女から声を掛けられる保証はどこにもありませんでした。
他の紳士に絵姿を見せて確認するなんて事は…私のプライドが許されません。
私は神に祈りました。近く、パーティーで彼女に会えますように、そして彼女がそんな出自ではありませんように、と――。
祈りは通じたのか神は一つ目の願いを叶えてくれました。
あの祈りから数日後、なんとあのバルビエ侯爵から夜会の招待状を頂いたのです。
「バルビエ侯爵の医学論文を話してたんだ。」
あの時の声と香りが蘇ります。
もし、これが本物のバルビエ侯爵からの招待状で、もしバルビエ侯爵本人とお会いすることができるなら、彼女もきっと同席しているだろうと考えました。
もしそうでなかったら、この招待状を呪うところでした。
私は念入りに身支度し、カツラと燕尾服を新調しました。顔と体型は悪くても、これならどっからどうみても立派な紳士に見えるでしょう。
もちろん、巷で耳にしたつけボクロも忘れません。そうでしょう?
義姉の厳しい視線と口から出てくる言葉は、家に置いてきました。
はやる気持ちを抑え、バルビエ侯爵邸へと向かいました。そこで、私の読み通り彼女はおりました。
神はやはり見ていてくださってると、改めて感謝しました。しかし、バルビエ侯爵を初め、他の貴族と話していると中々彼女の所にはいけません。
私の方から声をかけるのもマナー違反です。
彼女が私に気づいてくれたらと思うばかりで、中々その機会には恵まれませんでした。
噂通り、彼女の周りでは彼女のジョークが面白いのか、はたまたその知性で男性を虜にしているのか、笑い声が耐えませんでした。
私は改めて自分の地位、見た目、そしてほんの小さな運でも逃す男なのだと実感しました。
悲しみは夜風に慰めてもらおうと、バルコニーへと足を向けたのです。
彼女との余韻が、ほかの貴族に消えないようにする為です。
揺れ馬車の中で、先程の彼女とのやり取りを思い返します。家に帰ると、義姉が何か言ってましたが気にする必要はありません。
風呂にも入らずベッドへ向かい、会ったばかりの淑女に思いを馳せました。
マルグリット嬢。短いやり取りではありましたが、彼女は博識であると、十分に理解しました。
明日はサロンへ向かうつもりです。その時に彼女がどこの生まれで、どんな人なのか探りを入れてみましょう。高位貴族なのですからきっと素晴らしい出自の方に違いありません。
香水の残り香が更に強くなった気がします。思わず深く吸い込み、胸の奥がざわめくのを感じます――我ながら少し気持ち悪いでしょうか。
普段は贅沢をしない私です。多少値は張るかもしれませんが、香水の種類も調べてみたいと思います。きっと、義姉も許してくれるでしょう。そう自分に都合よく言い聞かせながら、残り香に共に私は深い眠りへと落ちていったのです。
私はすぐに彼女の正体で衝撃を受けるとも知らずに――……。
翌日、サロンへ行くとある噂で持ち切りでした。
ラ・トゥール家の娘が社交界に出ていた。との話です。ラ・トゥール家と言えばこの国でも有数な侯爵家であり、様々な異名を持ちます。
ラ・トゥール一族その物があまり社交界に参加しないのに、家長の父親と娘が侍女と共に参加していたとの事でした。
侍女の顔は少し赤らんでいた。
淑女の方は完璧な挨拶と会話で男性陣を渡り合っていた。
ウィットに飛んだジョークもあったらしく、関わった男性は全員彼女の虜になった…など等です。
「あ、あのう…そのラ・トゥール家のお嬢さんはどんな名前なのですか?」
思わず私も踏み込んでしまいます。
「なんだ、キミはマルグリット・ド・ラ・トゥール嬢を知らないのか?」
マルグリット、あの昨夜会ったマルグリット嬢でしょうか――?
大凡の淑女が嫌がるだろう鷲鼻も、整った顔立ちにはなんの意味成しておらず、くすんだ灰色の目は、私の様な愚かな人間を真っ直ぐに見据えているのでしょう。そして天使のような悪魔の笑顔――あの笑顔に少し弄ばれたい自分がいることも、否応なしに理解できてしまうのです。
しかし、早まるのは良くありません、マルグリットと言う名は珍しくはありません。
それに彼女があの異名を持つ淑女ではない可能性も捨てきれません。
「いやぁ…何分、社交界には疎くて。」
「だからと言って、ラ・トゥールの娘を知らないやつはいないだろう。ほら、年齢の割には背が高くて、鼻筋の整った灰色の瞳で有名な魔女だ。
まぁ、お前みたいなやつが中々お目にかかれる存在じゃないから、知らないのも無理はないな。」
なんと言うことでしょう。昨日のマルグリットと同じ特徴ではありませんか。それでも、私は否定したくなりました。
彼女が公爵から侯爵へ落ちぶれた家。塔の上の魔女ー…禁断の名家等、そんな汚名を被る家ではない――と。
だからと言って、本人に聞く訳にはいきません。とはいえ、今の社交シーズン、必ずしも会えるとは限りません。それに会えたところで、彼女から声を掛けられる保証はどこにもありませんでした。
他の紳士に絵姿を見せて確認するなんて事は…私のプライドが許されません。
私は神に祈りました。近く、パーティーで彼女に会えますように、そして彼女がそんな出自ではありませんように、と――。
祈りは通じたのか神は一つ目の願いを叶えてくれました。
あの祈りから数日後、なんとあのバルビエ侯爵から夜会の招待状を頂いたのです。
「バルビエ侯爵の医学論文を話してたんだ。」
あの時の声と香りが蘇ります。
もし、これが本物のバルビエ侯爵からの招待状で、もしバルビエ侯爵本人とお会いすることができるなら、彼女もきっと同席しているだろうと考えました。
もしそうでなかったら、この招待状を呪うところでした。
私は念入りに身支度し、カツラと燕尾服を新調しました。顔と体型は悪くても、これならどっからどうみても立派な紳士に見えるでしょう。
もちろん、巷で耳にしたつけボクロも忘れません。そうでしょう?
義姉の厳しい視線と口から出てくる言葉は、家に置いてきました。
はやる気持ちを抑え、バルビエ侯爵邸へと向かいました。そこで、私の読み通り彼女はおりました。
神はやはり見ていてくださってると、改めて感謝しました。しかし、バルビエ侯爵を初め、他の貴族と話していると中々彼女の所にはいけません。
私の方から声をかけるのもマナー違反です。
彼女が私に気づいてくれたらと思うばかりで、中々その機会には恵まれませんでした。
噂通り、彼女の周りでは彼女のジョークが面白いのか、はたまたその知性で男性を虜にしているのか、笑い声が耐えませんでした。
私は改めて自分の地位、見た目、そしてほんの小さな運でも逃す男なのだと実感しました。
悲しみは夜風に慰めてもらおうと、バルコニーへと足を向けたのです。
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