ダントン回想録

大変よくできました

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回想録7

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晩餐会当日、私はおろしたての燕尾服を身にまとっておりましたが、家族はこぞって喪服のように黒い服に身を包んでおりました。
 義姉はハンカチーフを振り、兄達は妙に暗い顔をしておりました。
 何か覚悟を決めた両親の顔は決して忘れません。
 執事が深々とお辞儀をして、私の馬車を見送ってくれました。

 …私の葬儀も家族ならきっとこれぐらいやってくれるでしょう。

 ドラン家の三男坊たる私は、急ぎラ・トゥール家まで向かいました。
 予定時刻の前に着くのは失礼にあたりますが、予定時刻の後なら許されます。
 だからといって、大幅な遅れはマナー違反になります。少しでも私――…いえ、ドラン男爵家はまともな家だとアピールしなければなりません。

 バルビエ侯爵の家に招かれた際も緊張はしましたが、同じ医師同士であったのと、いただいた手紙も、もっと友好的なものでした。

 胸ポケットにしまい込んだ手紙は私の胸の鼓動を早めます。
 同じ侯爵でもここまで違うのも訳があります。
 それはマルグリット嬢の父親だからという理由わけだけではありません。
 私の口からは畏れ多く、お話することはできませんが、そのうち皆様にも分かるかと思います。

 私の住む屋敷が、ちょっと良い下町だとすると、そこから王都へ向かい、郊外へ向かいます。
 整備された美しい森林は、治安も良く、きちんとされているため貴族だけでなく、平民も安心して使う事ができます。

 そこから馬車を走らせ、家が少しずつまた増えていきます。
 王都と違い、そこは汚物にまみれる事もなく、綺麗に整頓されておりました。
 町を抜けると高原が広がります。美しい山々に向かうように引かれた道をそのまま向かうと、大きな川を挟み込む様にお屋敷があります。
 
 さぁ、屋敷に着きました。

 この国のの一つ…ラ・トゥール邸です。

 馬車がゆっくりと正門前に止まります。
 懐中時計を見ると、約束の時間から5分に到着です。時間通りです。

 邸とは言いますが、私から見たらそれは立派な城でした。
 確かに王都にあるお城に比べれば小さいものでしょうが、それでもラ・トゥールの名に相応しい佇まいでした。

 門番に招待状を見せると、門が開き馬車は再びゆっくりと侯爵家の玄関の方へ向かいます。

 正門を抜け、半円を描く様に馬車が玄関前に止まります。 
 
 一昔前なら私はそこで15分も20分……いや30分は待たされたでしょう。勝手に降りる事は許されません。
 少しばかり待ちましたが、身なりのいい執事が馬車をノックし出迎えて下さいました。
「ドラン男爵家のダントン様でいらっしゃいますね?」
 もうその立ち振る舞いたるや…!
 
 私は上手く返事もできずにうなずくだけでした。身なりのいい執事は軽く微笑み、「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。お足元に気をつけて。」白手袋をはめた手を差し出すその優雅な身のこなし…人の手紙を読んで十字を切っていた執事とはまるで別世界です。

 しかし、あんな執事でも今は傍にいてくれた方が私の気は休まるのかもしれません…。
 誘った所で静かに首を横に振るのが目に見えますがね…。

 私より少し先に歩く執事の後を追いながら、味方はここに居ないのだと思い知らされます。

 玄関の扉を開けた執事は、私を通そうとしましたが、扉の上を見ると、頂いた手紙に封をされていた紋章が私を迎えます。
 
 フクロウの目が私に何かを問うような顔をしていました。
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