詩の遊び場

Riza

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赤い月

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「赤い月」
あの赤い月が
遠くに見える場所まで
駆け足で行ってみようよ

スニーカーの紐を固く結んで
君の手を取った

僕の手は汗ばんでいて
君の手はとてもあたたかった

宙はどこにあるのだろう

見上げるとまあるいドームのように
私たちを包んでいる

赤い月と追いかけっこ
走っても走っても
ただそこに佇んで
私たちのことを斜めから見下ろして
「こっちに来てごらん」と言うばかり

「あの月の隣にいるのはヴィーナスかな」
君はそんなことに興味がなさそうに
ただ煙草を吸っている

誰もいない草原
私たちしかいない秘密の空間

蛍が一匹どこからか迷い込んできて
黄色い光は僕たちをほのかに照らす
君はそれを大切な宝物のように
手の中にしまい込んで覗いてた

「ねえ、これからどこに行く?」

その問いかけに君はただ笑って
蛍を宙へ離すと
また煙草に火をつけた

「どこに居たっていっしょだよ」

煙草の光は赤く赤く
宙に向かって紫煙が流れていった
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