”オマケ”の狐はお暇したいと思います

雨宮天音

文字の大きさ
15 / 42
Ceci n'est pas une rêve.(これは夢ではない)

しおりを挟む
それに合わせて全員が立ち止まる。
すると後ろから侍従じじゅう君がジェラード君の前に進んだ。
気づかなかったが侍従君は後ろに居たらしい。

少しくすんだ金髪の侍従じじゅう君はポケットから鍵を取り出す。
そして慣れた動作で鍵を開け扉を開いた。

ギャルロンさんを先頭に栗さんジェラード君の順に入る。
ジェラード君やミントさんに促されて俺、ミントさん、はしばみ君、侍従君の順に部屋に入った。

部屋の真ん中より少し右。
テーブルの上にある燭台しょくだい侍従じじゅう君が火を点した。
いつの間にろうそく持ち歩いてたの侍従君!?

そこからベッドサイド、壁の燭台しょくだいに火をいれていく。
室内がだいぶ明るくなった。

室内は城同様重厚じゅうこうな雰囲気がただよっている。
まず目についたのはかなりデカいベッド。
お城に似つかわしいサイズだ。

きれいなガラのクッションがいくつも壁際かべぎわに置かれている。
枕代わりに使いなさいということだろうか。
布団もクッションと同じ柄のカバーがされている。

次に目がいったのは窓辺まどべ
ジェラード君が居たからというのもある。

ジェラード君は何を見ているんだろう?
と思っていたらジェラード君が振り向いた。

「おいで。見てごらん」

とジェラード君に手招きをされて窓際まどぎわへ近寄る。
窓ガラスは古いもののようでデコボコしている。
その味のある質感がレトロでいい。

外を見やれば。
よりいっそう暗さが増していた。
千紫万紅せんしばんこうの花は夜陰やいんに沈みモノクロの花になり果てていた。

「朝にでも見るといい。中庭がよく見えるはずだ」

ありがとうという意味を込めて会釈えしゃくする。
たぶんジェラード君は中庭が1番綺麗に見える部屋を選んでくれたんだと思う。

「どう致しまして。じゃあ僕らは行こうか。後で紙とペンとインクを届けさせるよ。ここでゆっくり過ごしてくれ」

感謝しているということは伝わったようだ。
筆談用の紙とペンをもらえるそうだ。

ありがとうの意味をこめて。
再度会釈をして少し見上げてジェラード君を見る。
満足そうな笑顔だった。

皆さん出ていって。
部屋が静まり返る。

筆談か。
少し緊張する。
ここ最近はお世辞にも綺麗な字とは言えない字ばかり書いているからだ。

万年係長のせいで。
俺には人とあまり関わらない事務仕事しか回してもらえない。

だから。
メモぐらいしか自筆で書く機会がない。
そのメモもほとんど書かない。

自分の名前を書く機会もあるが。
それ以外くずしすぎて他人には読めない字しか書いていない。

何が言いたいかと言うと。
筆談をしようとしても相手が読める字が書けるか心配なのだ。

それに。
日本語が通じるかも心配だ。

英語なんて日常会話すら無理だし。
フランス語に至っては自己紹介ぐらいしかできない。

ヨーロッパ版古文のラテン語はどうかと聞かれれば。
ことわざみたいなのだったら聞けばわかる程度。

全部読めも書けもしない。
…いや。
英語は一部書けるか。

ドイツ語はどうかって?
取ってないから知らないんだ。
フランス語取ったのだって世界の公用語として使われてるからだし。

よって。
筆談なんてできるか不安だ。

あーあ。
早く目が覚めてほしい。

かといって起きたら会社に行かないといけないのは憂鬱ゆううつだけど。
考えたらちょっと涙がにじんできた。

万年係長と天牡あまものことを忘れようと。
暮れなずむ空を見上げる。

東側にはもう星が出はじめていた。
なんだか《上を向いて歩こう》みたいだな。

俺は涙をこぼさないようにじゃなくて。
止めようとしてるんだけど。

夜空を眺めてもなじみのある星は見当たらない。
外国からだと見え方が違うんだろうか?

晩秋ばんしゅう窓辺まどべで。
ゆっくり空を見上げていたら体が冷えたらしい。

どうしよう。
トイレ行きたくなった。
さっき間取りを聞いておけばよかった。

部屋の中をひとしきり探したが。
館内地図らしきものはない。

困った。
勝手に部屋を出てもいいものかわからない。
少し迷ったが思いきってドアへ手をかけた。






豊見がラテン語に言及げんきゅうしたのはイギリスでは今もクロスワードパズルに使われているからです。
クロスワードパズルって国によってすごい特徴ありますよね。
ニューヨークのほうの新聞のはサブカルとエンタメがわからないと解けない。
とか。
イギリスのは文学とラテン語詳しくないとムリ。
とか。
ニューヨークのは某女性キャプテンのアメコミ詳しくなりますよw

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...