お飾りの側妃となりまして

秋津冴

文字の大きさ
2 / 30

2

しおりを挟む
 生まれたばかりの子供たちを、その豊かな羽毛で覆われた翼の下に囲う。
 それから、彼女はこちらに目を向ける。
 自分たちのことを間違えないで、とそんな視線がそこには含まれていた。
 そうね、あなたは鷹、というよりはもっと首が長いし、それにくちばしじゃなくて、ワニのような大きな長細い口をしている。

「鷹の頭部を持つのはグリフォンだから。そんなこと言ったらレジーが気を悪くするわ」
「レジー? 名前まで知っておいでなのですか‥‥‥」
「言ったじゃない。彼女が生まれてからずっと仲良しなんだから」

 そう言って、彼女。
 飛竜のレジーに手を伸ばすと、レジーはグリフォンなんか失礼だ、私はドラゴンですよ。と主張するかのように、頬をちょっとだけ持ち上げて見せた。
 イリヤがひいっと小さく悲鳴を上げる。
 レジーの動作は猫のそれに似ていて、頬の下には、人間の頭部大の鋭利な牙が数本、にょきっと生えていた。

「今から落ち着いているから、子供に触れることができるかもよ?」
「いいいっ、いえいえ。結構です、そんなの怖くて無理」

 食事の後に専用の歯ブラシで磨いてあげるととても嬉しそうな顔をするんだけどね?
 私の幼馴染にして、異種族の彼女はつい最近、数度目の出産を終えたばかり。
 数年前に最初に母親になった時は、さすがに彼女の面倒を見てきた飼育員と、馴染みの深い私にしか近寄ることを許さなかったけれど。
 今では私が許可をすれば見知らぬ人にでも、近づくことは許してくれた。

「もったいないの。こんな機会滅多にないのに」
「お嬢様は慣れていらっしゃるから‥‥‥」
「今ならあなたにだって、抱き上げることくらいは許してくれると思うんだけど」
「いいいえっ、結構です」

 やはり侍女のイリヤは臆病だ。
 そんなに怖がることないのに。
 慣れてくれば、ドラゴンだって余裕というものが出てくる。
 何度も出産に立ち会えば、卵の殻を破って出てきたばかりの子供に私が触れても、レジーが怒ることはまずない。
 とはいえ、人間の子供が生まれたときに、産湯に浸かるように。
 ドラゴンの子供も、母親のブレスと舌によって、清潔になるらしい。
 その儀式が終わるまでは、誰も立ち入ることが許されない。
 だから私は最後の一頭が卵から出てくるまで、その子以外の子供達と触れ合っていたのだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

契約婚しますか?

翔王(とわ)
恋愛
クリスタ侯爵家の長女ミリアーヌの幼なじみで婚約者でもある彼、サイファ伯爵家の次男エドランには愛してる人がいるらしく彼女と結ばれて暮らしたいらしい。 ならば婿に来るか子爵だけど貰うか考えて頂こうじゃないか。 どちらを選んでも援助等はしませんけどね。 こっちも好きにさせて頂きます。 初投稿ですので読みにくいかもしれませんが、お手柔らかにお願いします(>人<;)

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。

華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。 嫌な予感がした、、、、 皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう? 指導係、教育係編Part1

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

[完]僕の前から、君が消えた

小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』 余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。 残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。  そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて…… *ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

処理中です...