22 / 30
22
しおりを挟む
今回の実験的な計画に採用されたのは、商船ではなく、一般的な石船と呼ばれる、砕石運搬船だ。
木造のいかだのような構造で、その中央が左右に海面へと開閉するようになっている。
その上に船体が沈まないようにしながら、規定の重量まで、魔石の端材を積みこんで海中に投棄する仕組みだ。
「あの船の底は重さで抜けないのですか?」
素人ながらの質問をしたら、船の船長が面白おかしく、教えてくれた。
「あのそこには、あらかじめ魔石から漏れ出る魔力をもとめて、食いしん坊な水の精霊たちがまとわりついておりますので。そいつらを結界で固定して、目的の海域まできたら、結界を解除する」
「ああ、なるほど」
「底板になっている鉄板が曲がったり、折れたりしない限りは、大丈夫なんですよ」
船長はこんな魔石廃材の海洋投棄をもう、二十年も手掛けているという。
熟練の職人の仕事を見ているようで、わたしはさすがだな、と唸った。
「その船に竜はやってこない?」
「見ての通り」
港でこれから出て行こうとしている、まだ廃材を搭載していない船を、彼は指差した。
その船は全長五十メートルほどあり、わたしが知る竜たちよりも二回りは大きい。
彼らはよほどのことがなければ、自分より大きい相手に立ち向かうことはない。
危険な道を選ばなくても、食事をえる方法がちゃんとわかっているからだ。
もしかしたら帝国で人の作った竜舎に住み、人を乗せて運ぶ代わりに、毎日の食事というのも彼らの考え出した食事を得るための方法の一つかもしれないけど……?
「竜は自分よりも大きい相手に立ち向かうないから」
「王妃様、よくご存知でいらっしゃいますね。子供を連れているとか、危険が迫っているとかでもない限り、そういったことはあまりないでしょう」
そうなると今回の竜の話になってくる。
彼の意見を聞いてみたくなった。
「一昨日からばらまいていただいてますこの廃材ですが、効果のほどはいかに?」
「うーん。まだ現れませんね。何といういうか、こう」
「はい?」
「増えた気がするのですよ」
「は? 増えた、とは?」
もしかして、若い竜を迎えに仲間の竜がやってきたのだろうか?
砕石運搬船の船長はこれから暇だという。
その案内に従い、船を見回っていたら、また難問が出てきた気がした。
「私も長く、二十年ほどこの仕事をやっていますので、竜の見た目から年齢というのがだんだんと推察できるなってきました。これまでいたやつはまだまだ若い。生まれて数年、くらいですかね?」
「わたしもそう持ってきました」
「これは奇遇です、王妃様。どうしてそんなお考えに?」
わたしは半島の鉱山がある方を指差す。
そこから運ばれてくる廃材を今回、目のまえにある船に積み込んで、海中に投下する作業が始まろうとしていた。
「わたしは帝国の出身ですから、竜の出産に立ち会ったこともあります。もう何回も子供を抱いたことも」
「それは珍しい! そんな話はなかなか聞きませんね。耳にするだけでも貴重な体験になる」
「そんな大したことではありません。冬になると竜は大陸の西側へと移動します。人がたどり着けない険しい場所で、彼らは産卵するといわれています」
「それなのに帝国では、竜を飼育している、と?」
「まあ、それは今回の話ではありません。産卵するためには、公国を通り越して、さらに西へと下る必要があります。でもそれは、若い竜が単独で行うには難しいはず。仲間の案内が必要だと思います」
今回、騒動を起こしている竜は仲間からはぐれたのではないか、と。それが私の持論だったりする。
年長の竜が幼い竜を迎えにきてくれているなら、これほどありがたいことはない。
さっさと魔石の廃材を食べて体力をつけ、西へと向かって欲しいものだ……と思っていたら。
「船長! 先に海に出て、投棄し終わった船が戻ろうとしたら」
若い水夫が報告に来た。
あれ、また何か問題発生?
「竜たちが船の周りをやたら泳いでまわるので、船を動かせないとか、連絡が入りましたよ!」
「またかよ! で、何匹いる?」
「背びれの数から、三頭はいるみたいです」
おやおや、これは一大事だ。
木造のいかだのような構造で、その中央が左右に海面へと開閉するようになっている。
その上に船体が沈まないようにしながら、規定の重量まで、魔石の端材を積みこんで海中に投棄する仕組みだ。
「あの船の底は重さで抜けないのですか?」
素人ながらの質問をしたら、船の船長が面白おかしく、教えてくれた。
「あのそこには、あらかじめ魔石から漏れ出る魔力をもとめて、食いしん坊な水の精霊たちがまとわりついておりますので。そいつらを結界で固定して、目的の海域まできたら、結界を解除する」
「ああ、なるほど」
「底板になっている鉄板が曲がったり、折れたりしない限りは、大丈夫なんですよ」
船長はこんな魔石廃材の海洋投棄をもう、二十年も手掛けているという。
熟練の職人の仕事を見ているようで、わたしはさすがだな、と唸った。
「その船に竜はやってこない?」
「見ての通り」
港でこれから出て行こうとしている、まだ廃材を搭載していない船を、彼は指差した。
その船は全長五十メートルほどあり、わたしが知る竜たちよりも二回りは大きい。
彼らはよほどのことがなければ、自分より大きい相手に立ち向かうことはない。
危険な道を選ばなくても、食事をえる方法がちゃんとわかっているからだ。
もしかしたら帝国で人の作った竜舎に住み、人を乗せて運ぶ代わりに、毎日の食事というのも彼らの考え出した食事を得るための方法の一つかもしれないけど……?
「竜は自分よりも大きい相手に立ち向かうないから」
「王妃様、よくご存知でいらっしゃいますね。子供を連れているとか、危険が迫っているとかでもない限り、そういったことはあまりないでしょう」
そうなると今回の竜の話になってくる。
彼の意見を聞いてみたくなった。
「一昨日からばらまいていただいてますこの廃材ですが、効果のほどはいかに?」
「うーん。まだ現れませんね。何といういうか、こう」
「はい?」
「増えた気がするのですよ」
「は? 増えた、とは?」
もしかして、若い竜を迎えに仲間の竜がやってきたのだろうか?
砕石運搬船の船長はこれから暇だという。
その案内に従い、船を見回っていたら、また難問が出てきた気がした。
「私も長く、二十年ほどこの仕事をやっていますので、竜の見た目から年齢というのがだんだんと推察できるなってきました。これまでいたやつはまだまだ若い。生まれて数年、くらいですかね?」
「わたしもそう持ってきました」
「これは奇遇です、王妃様。どうしてそんなお考えに?」
わたしは半島の鉱山がある方を指差す。
そこから運ばれてくる廃材を今回、目のまえにある船に積み込んで、海中に投下する作業が始まろうとしていた。
「わたしは帝国の出身ですから、竜の出産に立ち会ったこともあります。もう何回も子供を抱いたことも」
「それは珍しい! そんな話はなかなか聞きませんね。耳にするだけでも貴重な体験になる」
「そんな大したことではありません。冬になると竜は大陸の西側へと移動します。人がたどり着けない険しい場所で、彼らは産卵するといわれています」
「それなのに帝国では、竜を飼育している、と?」
「まあ、それは今回の話ではありません。産卵するためには、公国を通り越して、さらに西へと下る必要があります。でもそれは、若い竜が単独で行うには難しいはず。仲間の案内が必要だと思います」
今回、騒動を起こしている竜は仲間からはぐれたのではないか、と。それが私の持論だったりする。
年長の竜が幼い竜を迎えにきてくれているなら、これほどありがたいことはない。
さっさと魔石の廃材を食べて体力をつけ、西へと向かって欲しいものだ……と思っていたら。
「船長! 先に海に出て、投棄し終わった船が戻ろうとしたら」
若い水夫が報告に来た。
あれ、また何か問題発生?
「竜たちが船の周りをやたら泳いでまわるので、船を動かせないとか、連絡が入りましたよ!」
「またかよ! で、何匹いる?」
「背びれの数から、三頭はいるみたいです」
おやおや、これは一大事だ。
7
あなたにおすすめの小説
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
契約婚しますか?
翔王(とわ)
恋愛
クリスタ侯爵家の長女ミリアーヌの幼なじみで婚約者でもある彼、サイファ伯爵家の次男エドランには愛してる人がいるらしく彼女と結ばれて暮らしたいらしい。
ならば婿に来るか子爵だけど貰うか考えて頂こうじゃないか。
どちらを選んでも援助等はしませんけどね。
こっちも好きにさせて頂きます。
初投稿ですので読みにくいかもしれませんが、お手柔らかにお願いします(>人<;)
殿下の御心のままに。
cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。
アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。
「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。
激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。
身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。
その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。
「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」
ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。
※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。
※シリアスな話っぽいですが気のせいです。
※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください
(基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません)
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる