23 / 30
23
しおりを挟む
砕石運搬船の乗組員達と別れる。自分がこれから乗る予定だった船に移動した。
気をつけて行ってらっしゃいと、砕石運搬船の乗組員たちが大きく手を振ってくれる。
私たちの船は、ようやく到着したある人物たちを同乗させると、ゆっくりと港を離れた。
帝国の派遣した指南役の竜騎士達だった。
「どのあたりかしら。ここからでは見えないわね」
そうは言っても海面は遠い。
ここからは何かがバシャバシャとはしゃいでいるようにしか見えない。
「これでご覧になられますか?」
「ありがとう船長」
今乗っている船は、王室御用達の船で、マストが4本もある巨大な軍艦。
外洋を守っていたのを、わたしがこの港に来るということで、陛下が先回りして待機させていたのだという。
港にあった商船よりもふた回りほど大きく、しかしその足はどの国よりも早い。
船の操舵室に設置されている双眼鏡というよりかは望遠鏡。
それで賑わっている海面部分をじっと見つめたら、真っ青な羽を持つ水竜が、二頭。
「あれ、あれれ? 飛竜がいる?」
もう一頭は紅の羽をもつ飛竜だった。
二頭は体格が小さくオス。
飛竜の方はメスで体格が大きい。
竜はメスの方が身体が大きいのだ。人間とは大違いである。
「三頭、いるように見受けられます。このまま近づいたものかどうか。指南役様はいかがですか?」
「ぶるるるっ、近づくなんてとんでもない。船底が損傷し、座礁してしまいます! 王妃様が乗船されているというのに、とんでもないことです!」
指南役――竜騎士はみんなほっそりとした鍛え上げた肉体をしている。
彼が後に従えている四人の若い竜騎士たちもそうだ。誰もが戦士に相応しい風格を携えている。
しかし、彼はどうだろう。
ぼよんと突き出たお腹、たるんだ頬、あごの周りには生やしてはならないはずの髭まで生やしている。
「随分とだらしない格好された、指南役様ですこと」
「なっ、なんと! 私は王妃様の心配をしてですな!」
竜に乗るとき、肉体を守るため、多くの防具を身に付けなければならない。
顔に被るヘルメットなどはその良い例で、顎下で紐を金具で止める。
だけど、万が一、怪我をしてヘルメットを脱がせるときに、ヒゲがあっては絡まって脱がせるのが手間な時があるのだ。
その意味で、帝国の定めた規定に背く彼は、もはや指南役でも、竜騎士でもなんでもなかった。
ただの旅行にきた貴族である。
「帝国の規約では髭を生やすことを禁止しています。私も飛竜に良く載っていましたから、法規はよく知っています。水竜に乗り、水中や海中で彼らに命じて作業をしたこともあります」
「そっ。それは……はい、存じ上げております。この竜騎士ガルド、僭越ながら姫君だったご自分に教鞭を――」
「あなたに教えを受けた覚えはありません。私の教師は竜であり、帝国の竜騎士でも飛竜を駆り大空を飛ぶことができる者は少ない。水竜と共に潜ることができる者など、それこそ数えるほどです。あなたのような人物なんて、私は存じ上げませんし、あなたの能力は私よりも低い!」
「なっ、なんと無礼な! それではこの竜騎士ガルドの能力がまるでないような、お言葉ではありませんか!」
ええ、ええ。そうですとも。
あなたは無能の上に、愚かな竜騎士だわ、ガルド。
気をつけて行ってらっしゃいと、砕石運搬船の乗組員たちが大きく手を振ってくれる。
私たちの船は、ようやく到着したある人物たちを同乗させると、ゆっくりと港を離れた。
帝国の派遣した指南役の竜騎士達だった。
「どのあたりかしら。ここからでは見えないわね」
そうは言っても海面は遠い。
ここからは何かがバシャバシャとはしゃいでいるようにしか見えない。
「これでご覧になられますか?」
「ありがとう船長」
今乗っている船は、王室御用達の船で、マストが4本もある巨大な軍艦。
外洋を守っていたのを、わたしがこの港に来るということで、陛下が先回りして待機させていたのだという。
港にあった商船よりもふた回りほど大きく、しかしその足はどの国よりも早い。
船の操舵室に設置されている双眼鏡というよりかは望遠鏡。
それで賑わっている海面部分をじっと見つめたら、真っ青な羽を持つ水竜が、二頭。
「あれ、あれれ? 飛竜がいる?」
もう一頭は紅の羽をもつ飛竜だった。
二頭は体格が小さくオス。
飛竜の方はメスで体格が大きい。
竜はメスの方が身体が大きいのだ。人間とは大違いである。
「三頭、いるように見受けられます。このまま近づいたものかどうか。指南役様はいかがですか?」
「ぶるるるっ、近づくなんてとんでもない。船底が損傷し、座礁してしまいます! 王妃様が乗船されているというのに、とんでもないことです!」
指南役――竜騎士はみんなほっそりとした鍛え上げた肉体をしている。
彼が後に従えている四人の若い竜騎士たちもそうだ。誰もが戦士に相応しい風格を携えている。
しかし、彼はどうだろう。
ぼよんと突き出たお腹、たるんだ頬、あごの周りには生やしてはならないはずの髭まで生やしている。
「随分とだらしない格好された、指南役様ですこと」
「なっ、なんと! 私は王妃様の心配をしてですな!」
竜に乗るとき、肉体を守るため、多くの防具を身に付けなければならない。
顔に被るヘルメットなどはその良い例で、顎下で紐を金具で止める。
だけど、万が一、怪我をしてヘルメットを脱がせるときに、ヒゲがあっては絡まって脱がせるのが手間な時があるのだ。
その意味で、帝国の定めた規定に背く彼は、もはや指南役でも、竜騎士でもなんでもなかった。
ただの旅行にきた貴族である。
「帝国の規約では髭を生やすことを禁止しています。私も飛竜に良く載っていましたから、法規はよく知っています。水竜に乗り、水中や海中で彼らに命じて作業をしたこともあります」
「そっ。それは……はい、存じ上げております。この竜騎士ガルド、僭越ながら姫君だったご自分に教鞭を――」
「あなたに教えを受けた覚えはありません。私の教師は竜であり、帝国の竜騎士でも飛竜を駆り大空を飛ぶことができる者は少ない。水竜と共に潜ることができる者など、それこそ数えるほどです。あなたのような人物なんて、私は存じ上げませんし、あなたの能力は私よりも低い!」
「なっ、なんと無礼な! それではこの竜騎士ガルドの能力がまるでないような、お言葉ではありませんか!」
ええ、ええ。そうですとも。
あなたは無能の上に、愚かな竜騎士だわ、ガルド。
10
あなたにおすすめの小説
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
契約婚しますか?
翔王(とわ)
恋愛
クリスタ侯爵家の長女ミリアーヌの幼なじみで婚約者でもある彼、サイファ伯爵家の次男エドランには愛してる人がいるらしく彼女と結ばれて暮らしたいらしい。
ならば婿に来るか子爵だけど貰うか考えて頂こうじゃないか。
どちらを選んでも援助等はしませんけどね。
こっちも好きにさせて頂きます。
初投稿ですので読みにくいかもしれませんが、お手柔らかにお願いします(>人<;)
殿下の御心のままに。
cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。
アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。
「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。
激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。
身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。
その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。
「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」
ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。
※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。
※シリアスな話っぽいですが気のせいです。
※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください
(基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません)
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる