剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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囚われの姫君?

236話

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 帝城の中と外で大きな騒動になっている中で、当然のように帝城にメイドとして潜入していた二人のメイドも、それぞれに行動を開始していた。
 ……もっとも、鋼の蜘蛛に所属しているダーナの方は、レジスタンスとして一応の戦闘訓練を受けてはいるものの、それはあくまでも一応だ。
 不意を突けば兵士の数人を倒すことも出来るかもしれないが、正面から戦えば兵士に何とか勝てるといった程度の実力でしかない。
 ましてや、騎士を相手にした場合は不意を突いても倒すことは難しいだろう。
 そんなダーナに対して、メライナは元々が探索者……それも実力ある探索者だ。
 それこそ、騎士の数人を相手にしても正面から勝てる実力は持っていたし、不意を突いて攻撃することが出来れば、より多くの騎士を相手にしても倒せるだろう。
 そういう意味では、実際に行動が起きた今の状況ではメライナの方が頼りになるのは間違いなかった。
 とはいえ、メライナも色々と行動する必要がある以上、人手は幾らあっても足りない。
 そんな訳で、今もまたメライナとダーナの二人は一緒に行動していた。

「それで、どうするの? 心核とアランのどっちを先に?」
「それはこっちの味方が到着してからでしょうね。ただ、出来る限り行動しやすいようにしておくに越したことはないわ」

 二人揃って、廊下を走らない程度の早歩きしながら、そのように言葉を交わす。
 普段であれば目立ったかもしれないが、今は周囲を同じように歩いているメイドも多いし、それどころか走り回っている兵士たちも多数いる。
 だからこそ、二人のメイドが移動していても特に気が付く様子はない。

「行動しやすいようにって……何をするのよ?」
「簡単なことよ。鍵のかかっている門を開けたり、その側に兵士がいたらその兵士を倒して見えない場所に移動させたり」
「……簡単? 簡単って、一体何だっけ?」

 メライナの言葉に、ダーナはそう呟く。
 少なくても、ダーナにしてみればメライナの言ってること、そしてやろうとしていることは、とてもではないが簡単そうには思えない。

「簡単でしょ? ダーナだって兵士の一人や二人は不意を突けば倒せるでしょうし」
「それは……」

 メライナの言葉に、ダーナは黙り込む。
 実際、それが出来るかどうかと言われれば、出来る。
 だが、そのような真似をすれば明らかに危険だというのも、間違いのない事実なのだ。

「鋼の蜘蛛も、今回の一件で活躍する必要があるんでしょ?」
「それはそうだけど、こっちにはこっちで色々とやるべきことがあるのよ」

 ダーナにしてみれば、元々自分は情報収集だけではなく、鋼の蜘蛛が行う作戦のためにメイドとして潜入していたのだ。
 そうである以上、出来ればここであまり目立つような真似はしたくないというのが、正直なところなのだが……

(とはいえ、鋼の蜘蛛が全面的に協力している以上、私が手を貸さない訳にはいかないわね)

 はぁ、と。小さく溜息を吐いてから、気分を切り替えるようにして口を開く。

「分かったわ。付き合うわよ」

 結局ダーナとしては、そう言うことしか出来なかった。
 そして二人は、まず最初に帝城の正門……ではなく、他にもいくつかある通用門の一つに向かう。
 本来なら、正門を開けるのがいいのは間違いない。
 だが、このような状況になっている以上、当然のように正門の側には多くの兵士や騎士が集まって防御を固めているだろうと、そう理解出来たからだ。
 だからこそ、正門に比べれば守っているだろう者が少ない通用門の一つに向かったのだが……

「ちょっと、これは大丈夫なの?」

 ダーナの口から、そんな声が漏れる。
 当然だろう。視線の先には通用門を守る兵士が十人近く、そして騎士も一人存在していたのだから。
 ダーナにとっては、とてもではないが自分とメライナでどうにか出来る戦力には思えなかった。

「どうするのよ? こんな場所にもこれだけの戦力を派遣してるとなると、厳しいわよ?」

 兵士や騎士に聞こえないようにそう告げるダーナだったが、メライナは自信に満ちた笑みを浮かべ、口を開く。

「そうね。普通に戦ったらちょっと苦戦するでしょうし、そして苦戦したら、次々と援軍が来るのは間違いないわ。……私の武器があれば、それでもどうにかなったんだろうけど……」

 当然の話だが、メイドとして帝城に潜入しているメライナは、普段探索者として活動しているときに使っている長剣を持ってきてはいない。
 短剣程度なら隠し持てるのだが、普通のメイドが長剣を……それも、一目で業物と分かるだろう代物を持っているというのは、怪しすぎる。
 メライナもそれが分かったいるからこそ、愛用の長剣は帝城に持ってきていない。
 そうなると、どうにかして長剣を入手したいところだが……幸いにして、長剣というのはこの世界においても非常にありふれた武器だ。
 一番……という訳ではないかもしれないが、三本の指に入るくらいには、武器全体の中で数の多い武器だろう。
 実際、兵士の中の何人かも長剣を持っているし、騎士もまた長剣を手にしている。

(出来れば、騎士の長剣を奪いたいわね)

 長剣と一口に言っても、当然だがその武器の性能は大きく違ってくる。
 一般的な兵士が使っている長剣と、選ばれた存在の騎士が使っている長剣となれば、当然のように騎士の持つ長剣の方が高性能なのは当然だろう。

「それで、どうするのよ?」
「安心しなさい。正面から戦いを挑めば、勝つのは難しいわ。けど……相手が動揺している状況でなら、そこまで問題はないわ」
「……動揺?」
「ええ。多分レオノーラ様か……」

 そうメライナが言った、ちょうどそのタイミングで、帝城に展開していた結界が破られ、メライナやダーナのいる場所からでも、結果を破って城に突入してきた黄金のドラゴンを見ることが出来た。
 メライナたちが黄金のドラゴンを見ることが出来たということは、当然だが通用門の前にいた兵士や騎士も同様であり……あまりに予想外の展開に動きが止まったその瞬間、メライナはメイド服のスカート、太股のガーターベルトから抜いた短剣を手に、走り出す。
 腕利きの探索者らしく、その走る速度は速い。
 自分たちが頼りにしていたバリアが破られた直後だけに、そんなメライナの行動には兵士どころか騎士ですら気が付かない。
 とはいえ、気が付かなかったのはそこまで長い時間ではない。
 十秒あったかどうかといった程度の時間ではあったのだが、メライナのような腕利きの探索者にしてみれば、十秒という時間は実際に行動を起こし、その結果をもたらすには十分だった。

「ぐあっ!」

 この場に唯一いた騎士が、首筋を短剣で切り裂かれて、噴水のように血飛沫を周囲にまき散らす。
 メライナは、そんな騎士の血飛沫の方向すら調整し、兵士たちに対する目潰しとして利用する。
 そして、メライナの行動はこれだけでは終わらず、一番厄介な騎士を倒した動きのままで、兵士に向かって斬りかかる。
 一人目の兵士は騎士と同様に首を斬り裂かれて血を吹き出したものの、二人目の兵士に向かおうとしたときは、すでに兵士たちも黄金のドラゴンに結界を破壊された衝撃からは立ち直っており、襲ってきたメライナに向かってそれぞれが武器を構える。
 緊張の一瞬。
 しかし、その一瞬を破ったのはメライナではなく……ましてや兵士でもなく、一人離れた場所で待機していたダーナだった。
 兵士たちの意識がメライナに向いているからこそ、ここまで上手い具合に隙を突けたのだろう。
 それも、メライナがここにいる者たちのな中では最強だった騎士を一撃で殺したから、というのが大きい。
 そんなメライナを、兵士たちは警戒しない訳にはいかなかったのだ。
 そんな状況で、背後からダーナに襲われたのだ。
 ダーナの能力はメライナに比べると低いが、それでも目の前にメライナという強敵を前にしている状況で、背後からダーナに襲われたというのは兵士たちに大きな衝撃と……何より、動揺を与える。
 そしてメライナにしてみれば、相手が動揺したことに付け込むのは、そう難しい話ではない。
 兵士たちに向かって突っ込んでいき……全ての兵士たちを殺すに、数分とかからなかった。

「ふぅ。じゃあ、さっさと終わらせましょう」
「……そうね」

 短剣に付着している血を振り払い、騎士の長剣を奪いながらメライナが告げると、ダーナが口に出来る言葉はそれだけだった。
 ダーナにしてみれば、メライナが強いというのは知っていたし、探索者であるというのも知っている。
 だが、それはあくまでも知っていただけで、実際に目の前でメライナの実力を見て、初めて本当にメライナは腕利きの探索者であると、納得したのだ。
 ……メイド服を着ている女がそこまでの実力を発揮するのは、見ている者にしてみれば異様な者に映ったのは間違いないが。
 ともあれ障害を排除したメライナは、素早く通用門を開ける。
 残念なことに、通用門を開けた先に顔見知りどころか、レジスタンスの者たちの姿もなかった。
 黄金のドラゴンが結界を破壊したのは先程なのだから、当然ではあるのだろうが。

「取りあえず、他の通用門も開けに行きましょう。ここ一ヶ所だけだと、中に入ろうとする人たちが狭くてなかなか中に入れないでしょうし」
「……本気? この通用門ですら、あれだけの人数が守ってたのよ? 他の通用門だって、同じような人数で守っているはずよ」

 メライナの言葉に、ダーナは信じられないといった様子でそう告げる。
 だが、メライナは騎士から奪った長剣を手に、心配はないと頷く。

「さっきは無理だったけど、この長剣があればそれなりに戦いようはあるわ。……さすがガリンダミア帝国の騎士だけあって、一級品を使ってるわね」

 長剣を見ながら呟くメライナの言葉に、ダーナは嫌そうな表情を浮かべる。
 ダーナの国が攻められたときのことを思い出したのだろう。
 もしくは、従属国から吸い取った富を使って騎士たちに一級品の武器を持たせていることにか。
 そのおかげでメライナが満足するような武器を得られたのは、皮肉でしかなかったが。
 こうして、メライナとダーナの二人は、複数の通用門を守っている兵士や騎士を倒しては、通用門を開けていくのだった。
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