剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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逃避行

254話

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 隠し通路を進んでいたアランたちだったが、途中で何度か最初と同じような人形と遭遇するも、やはりこの場所での戦闘は許可されていないのか、アランたちと戦闘になるようなことはなかった。
 移動するのに邪魔にならないように……そして攻撃と認識されないように、動きの止まった人形を移動させると、そのまま隠し通路を進む。
 途中で亀ほどではないにしろ、かなり大きなトカゲの人形とも遭遇したが、そちらも特に問題なくスルー出来た。
 そうして、隠し通路に入ってからアランの感覚で一時間ほど経った頃……通路の先に、眩い光が見えた。
 今までも通路の中は仄かに光っており、足場に困るといったようなことはなかったのだが、そんな仄かな光とは比べものにならないほどに明るい光。

『おお!』

 そんな光を見た一行の多くの者が嬉しそうな声を上げる。
 一時間や二時間狭い場所……それも仄かではあっても明かりのある場所を移動していた程度では、雲海や黄金の薔薇の探索者たちは狭いといったことや暗いといったことで不満を口にすることはない。
 ましてや、アランたちが戦った亀の人形も通れるほどの通路なのだから、相応の広さがあった。
 だが、それでもやはり通路の先に光が見えれば、それに喜ぶなという方が無理だ。
 そうして一行は足早に……それでいながら、何か罠があってもすぐ対処出来るように用心深く地下通路を進む。
 そのまま数分。
 やがてアランたちは地下通路を出て、かなりの広さを持った場所を目にする。
 それもただの広い空間という訳ではなく、そこには百を超える数の人形が待機していた。

「うおっ!」

 その人形の数を見た探索者の一人が思わずといった様子で驚き、咄嗟に武器を構える。
 だが、そんな探索者に反応して人形が動く様子はなく、ただその広間に置かれているだけだ。
 ……そう、本当にただ置かれているだけの人形なのだ。
 とてもではないが、その人形が動くとは思えない。

「……ここで待機しているのか? まぁ、この人数に襲いかかってこられたら、負けはしないけど苦戦するだろうから、助かるけど」

 探索者の一人が広い空間の中を見て、そう呟く。
 ここに存在する人形は、その全てが人型の人形だ。
 それもここまで来る途中で遭遇したような、成人男性よりも小さめの。
 これだけの人形に一度に襲いかかられると、数が数だけに苦戦はするだろう。
 だが、それでも最終的には自分たちが勝てるという思いがあるのは、間違いのない事実だった。
 ……それでも苦戦したり、それなりに怪我をしたりといったようなことにはなったかもしれないが。

「で、どうする? 向こうはまだ動いてないみたいだし、今のうちに破壊してしまうか?」

 ロッコーモが、いつでもオーガに変身出来るといった様子でそう告げる。
 せっかく敵が何かをする様子もなく、黙ったままなのだ。
 そうである以上、今のうちに数を減らすというのはそうおかしな話ではないだろう。
 ……だが、アランはそんなロッコーモの言葉に対して首を横に振る。

「いえ、やめておきましょう。ここで戦った場合、向こうもやられっぱなしになるとは思いませんし」

 そう言いながらも、アランはもし人形が自分の知っているロボットと同じような性質を持っているのなら、ここでいくら破壊されても暴れないだろうという予想があった。
 ……あくまでも予想でしかないので、それが外れるという可能性も決して否定出来ないのだが。
 そして万が一外れた場合、この場所で大きな戦いになってしまう。
 そうなると、この奥に向かうといった真似も出来ない。
 ここにいる人形があくまでも人型である以上、亀の人形が待機している場所……もしくは、上手くいけばその亀の人形を製造している場所に行くことが出来る可能性は十分にあった。
 だからこそ、今の状況においてここで暴れるといったような真似は可能な限り避けたいというのがアランの考えだ。
 その辺りの説明をすると、ロッコーモも若干不承不承ではあるが頷く。

「分かったよ。……あの亀の甲羅は出来るだけ多く確保したいしな」

 ロッコーモにしてみれば、あの亀の甲羅は自分がオーガに変身したときに盾として使える貴重な物だ。
 もちろん、盾として使うだけなら金属の盾を特注するといった真似も出来るが……そのような盾と比べて、亀の甲羅は無料で入手出来るのだから使い捨てとしてのつもりで使っても構わないというのは気楽だ。

「では、まずはどこに通路があるのか探しましょう。この場所にこういう場所がある以上、多分隠し通路とかそいう感じにはなってないと思うんですが」

 そう告げるアランだったが、この空間には人形が多数待機している為に向こう側の壁をしっかりと確認は出来ない。

「アラン、一応聞くけど、本当にここにいる人形たちが襲ってくるってことはないんだよな?」

 探索者の一人が、そうアランに尋ねる。
 壁を調べている間……そして、この広間から出て人形の製造施設に向かう途中で、背後から人形に襲われては堪らない。
 そんな思いで尋ねてきたのだろうが、アランもそれに自身を持って大丈夫というようなことは出来ない。

「多分大丈夫だとは思います。ただ、何事にも絶対はありません。もしこの人形たちが襲ってきても、それに対処出来るように準備しておいた方がいいかと」
「……まぁ、広い場所でこの数に襲われるよりは、狭い場所の方がいいか」

 広い場所であれば、アランたち一人に対して数匹の人形が襲うといったようなことも出来る。
 だが、狭い場所であれば当然の話だが、一人に対して襲いかかれる人数は決まっている。
 もし無理に一人に対して複数で襲いかかっても、狭い場所であれば自由に動ける者がいるので、その者が援護を出来る。
 そういう意味では、自分たちよりも多数の相手と戦うには狭い場所で戦うのが有利なのは当然だった。

「じゃあ、とにかく進みましょう。壁沿いに移動すれば、人形たちに邪魔されないで壁を調べることが出来ると思います」
「そこまで警戒する必要はないと思うんだけどな。結局戦うとしてもあの人形とだろ? なら、そこまで気にする必要もねえだろ」

 そんな風に言う探索者もいたが、この先どれだけ長く潜っているのか分からない以上、体力は温存しておきたいというのがアランの正直な気持ちだった。
 何人かは不満そうな様子を見せていたが、アランたちは壁に沿って移動し……

「あった」

 特に事件も何もなく、あっさりと壁から伸びている通路を見つけることに成功した。
 まさかこんなにあっさり見つかるとは思っていなかったのか、アランを含めて多くの者が驚きを見せる。
 とはいえ、アランはすぐに驚きの表情を消す。
 亀の人形と戦った場所なら、この空間に続く道を隠しておく必要があった。
 だが、この場所から他の場所に続く通路は別に隠す必要がないのだ。
 であれば、堂々と通路があってもおかしな話ではない。

「行きましょう。この場所に繋がっている通路ということは、人形の生産施設の可能性が高いです。それを見つければ……大きな発見になりますよ」

 人形の生産施設を見つけても、それが儲けになるとは限らない。
 ましてや、もし儲けになるとしても、今のアランたちはガリンダミア帝国軍から逃げ隠れしている以上、迂闊にここで見つけた何かを売ったりは出来ない。
 ……そもそも、ここでそれらを売れば、それはガリンダミア帝国の力となってしまう可能性が高い。
 ガリンダミア帝国軍から逃げている現状で、そのような真似をするつもりはアランにはなかった。
 レジスタンスになら、売ってもいいのかもしれないが。
 とはいえ、レジスタンスはレジスタンスでガリンダミア帝国軍と戦ってはいるが決して優勢ではない。
 アランを助けるために帝城に侵入して暴れたのは事実だが、それはあくまでも雲海や黄金の薔薇の協力があってこそだ。
 唯一鋼の蜘蛛はそれなりに名前が上がった。……実際には、アラン救出作戦よりも前に行われた砦の襲撃で落ちた名声を何とか多少は回復したというのが正しいのだろうが。

「行きましょう」

 アランはそう告げ、通路を進む。
 ここで何かお宝が入手出来たら、取りあえずそれは今すぐに売るんじゃなくて、ガリンダミア帝国から脱出してから金に換えようと、そう思いながら。
 そうして通路を進み始め……

「なぁ。この通路の広さを考えると、もしかしたらここって……」
「亀の人形が通る場所の可能性が高いでしょうね」

 ロッコーモの言葉に、アランはそう返す。
 実際、この通路は他の人形……例えばさきほどの空間に集まっていたような人型の人形が通るにしては、広すぎる。
 そうである以上、この通路の先には亀の人形の製造施設があるのはほぼ間違いないと思えた。
 ……もっとも、亀の人形以外の人形の製造施設がある可能性は否定出来なかったが。
 そもそもの話、先程の空間から繋がっている通路がアランたちが今いる場所以外にもあるかどうかというのは、調べていない以上、まだ分からないのだから。
 もしかしたら、このあの空間から伸びている通路はここだけという可能性も否定は出来ない。

「とにかく進みましょう。今はまずこの先に進んで、人形の製造施設があるのかどうかを確認して、それをどうにかする方が先でしょうし」

 そんなアランの言葉にロッコーモは頷くと、いつ何があってもいいように武器を構えながら通路を進む。
 そして少し進むと、先頭を進む探索者が口を開く。

「待て。何か聞こえる」

 その言葉に、アランたちは動きを止める。
 何かが聞こえるということは、何かがある……もしくは誰かがいるということを意味している。
 そうなると、アランたちの存在に気が付く可能性もあるので、慎重に行動しない訳にはいかなかった。

「どうだ? 何があるのか分かるか? 気配は感じないみたいだが……」
「ああ。人やモンスターの類じゃないな。人形の可能性もあるが」

 人形の中にも、魔力を持っていて気配を感じる人形もいれば、全く何の気配も感じさせない人形もいる。
 そうである以上、警戒する必要はあるが……それでも通路でこうしている訳にはいかないと、一行は進むのだった。
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