剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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逃避行

260話

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「おや……ちょうどよかった。他の遺跡に通じる道を発見したと、報告があったところですよ」

 アランとレオノーラが緑の石を見つけたと報告しにいったところ、イルゼンの口からはそんな言葉がかけられる。

「そうなんですか? ……じゃあ、どうします? 一応何か重要そうだったので、緑の石はそのままにしてきたんですけど。……出来れば、あっちをまず何とかした方がいいと思いますよ。もしかしたら、緑の石を取れば人形の製造が止められるかもしれませんし」
「そうですね。そちらにも興味があるのは間違いないですが……ふむ、ではまずそちらに案内してくれますか? そのあとで、アラン君には見つけた遺跡に通じる道の探索をして貰います」
「え? 俺がですか?」
「ええ。この遺跡の探索は、あくまでもアラン君の指示で行うと、そう決めていましたよね?」
「いや、それ……もう終わったようなものじゃ? そもそも、別の遺跡に通じてるって、イルゼンさんが言ってたじゃないですか。なら、そっちは俺が調べなくても……」
「別の遺跡というのは言葉の綾ですよ。一応、この遺跡と繋がっているのですから、同じ遺跡と考えてもいいでしょうし」
「それは……」

 屁理屈もいいところなのでは?
 そう言おうとしたアランだったが、いつもの胡散臭い笑みを浮かべているのを見れば、ここで自分が何を言っても恐らく話を効いて貰えないだろうというのは、容易に予想出来た。
 そして、このようなイルゼンに対しては、自分が何を言っても全く効果がないのだということも。

「分かった……分かりましたよ。イルゼンさんは、なにをどうやっても俺にその新しい遺跡を探索させたい訳ですね。……でも、何だってそんなに俺に?」
「当然、アラン君にはしっかりとした探索者として成長して欲しいからに決まってるではないですか。今のアラン君はまだまだ未熟。ですが、いつまでも未熟なままでいい訳がありません。……僕が言うのもなんですが、アラン君がしっかりとしていれば、ガリンダミア帝国軍に連れ攫われることもなかった訳ですし」

 そう言われると、アランも反論出来ない。
 実際、敵の奇襲を許して自分が捕まってしまったのは、間違いのない事実なのだから。
 ……それ以外にも、イルゼンが情報戦で出し抜かれたという一面もあるのだが。

「それで? 探索するにしても、誰を連れて行けばいいんですか? ……それと、俺たちが見つけた緑の石はどうします?」
「そちらは僕がしっかりと見ておきますよ。……それと、誰が一緒に行くのかは、アラン君が決めて下さい。了承を得られるのなら、誰を連れていっても構いませんから」

 イルゼンのその言葉は、アランにとって驚きをもたらすに十分であり……その視線は、自分の横にいるレオノーラに向けられる。
 了解を得られるのなら誰を連れていってもいいということは、当然の話だがそのメンバーの中にはレオノーラが入っていても不思議ではない。
 未知の遺跡を進むとなると、腕の立つ人物がいれば非常に心強い。
 ……もっとも、その手の人物が多ければ多いほどにいいのかと言われれば、その答えは否なのだが。
 いくら腕利きの人数が多くても、遺跡には当然の話だが広さに限界がある。
 腕利きであろうとも、並んで三人しか通れないような場所に十人で進めば当然身動きがとれなくなる。
 腕利きであれば、そのような状態であってもすぐに殺されるといったようなことはないだろう。
 だが、それでも大きな被害を受けるということに変わりはない。
 そういう意味では、適切な人数を用意する必要があるのは間違いのない事実だった。
 何より……

(この製造施設に繋がっていたのは、遺跡の最下層だった。つまり、他の遺跡も同様になっている可能性が高い。……あの亀の人形が相手なら、対処出来ない訳でもないだろうけど……他の遺跡でも同じ人形がいるとは限らないし)

 いわゆるボス的な存在だけに、全く同じ存在がいるというのはアランにとっても少し考えにくい。
 だが同時に、この場所から繋がっているということは、そのようなことになる可能性は十分にあるということを意味しているのも事実だ。

(結局行ってみるしかないか。それに考えようによっては、最初にボスを倒すことが出来れば、それから先に進むのは楽になるってことだし)

 半ば自分に言い聞かせるように考えるアラン。
 そうでもしなければ、やっていられないというのが正直なところなのだろう。

「で、アラン。誰を連れて行くのか決めたの?」
「……レオノーラ、頼めるか?」

 リアやニコラスといった両親も、アランにとっては頼れる相手なのは間違いない。
 だが、それでも今のこの状況で両親に頼るのは少し違うと思えた。
 何より、何だかんだとリアもニコラスもアランには甘い。
 そんな両親と一緒に探索するとなれば、そちらに頼ってしまう可能性が高かったのだ。
 だからこそ、今は何とか両親以外の者たちと共に遺跡を攻略しようと、そう考えたのだ。
 ……それで即座にレオノーラという、強力な戦力を手にする辺り、アランもある意味で手段を選んではいないのだろう。

「私? 別に構わないわよ。それに、この遺跡……少し興味があるし」
「そうなのか? ……それは少し意外だったな」

 アランにしてみれば、まさかレオノーラからそのような言葉が出るとは思って射なかったのか、少しだけ驚いた様子を見せたものの、それならそれで遠慮なく頼らせて貰おうと判断する。

「なら、頼む。あとは……誰がいい?」
「そうね。出来れば何かあったときのために、心核使いは連れていきたいわ。……私とアランも心核使いだけど……ねぇ?」

 その先は、レオノーラが何も言わなくてもアランにも理解出来た。
 アランのゼオン、レオノーラの黄金のドラゴン。
 双方共に非常に強力な存在ではあるが、強力であると同時に非常に巨大な存在だ。
 そのような存在がこの遺跡の中で姿を現せば……それがどうなるのかは、考えるまでもなく明らかだった。
 だからこそ、レオノーラの心核使いを連れて行くという言葉に、アランは反対をすることはない。……いや、むしろ積極的に賛成する。

「そうなると、誰を連れて行くかだな」

 現在、雲海と黄金の薔薇にはアランとレオノーラ以外に心核使いは四人いる。
 だが、そのうちの一人……ケラーノは、心核で変身するモンスターがトレントであるという関係から、真っ先に除外される。
 基本的に自力では移動出来ない以上、待ち伏せや防衛戦といったように動かない戦いならまだしも、今回のように積極的に動いてとなると……少し頼りない。
 それ以前に、ケラーノは心核を入手してからまだ日が浅いということも大きな問題だろう。

「ケラーノさんは外れて貰うとして……そうなると、残りは三人。ロッコーモさん、カオグルさん、ジャスパーさんか」

 ロッコーモは言わずもがな、戦闘能力という点では非常に頼りになる。……それ以外は少し頼りないが。
 カオグルは戦闘力はロッコーモに及ばないが、白猿は非常に機敏で汎用性が高い。また、本人も心核を使っていない状態で色々なことを広く浅くといったように出来る。
 ジャスパーは、カオグルと同じように色々と出来るが、どちらかと言えば戦闘に偏っている感じか。
 そんな三人の誰を選ぶかというのは、アランにとって大きな悩みだ。

(うーん……やっぱりロッコーモさんがこの中だと一歩リードか? 戦闘力だけってのはちょっと問題だけど、それでもこの遺跡を俺と一緒に攻略してきただけに、何となくノウハウも分かってるだろうし)

 もちろん、カオグルやジャスパーもこの場にいる以上、この遺跡を通り抜けてきたのは間違いない。
 だが、それはあくまでも昨日、一昨日とアランたちがモンスターや人形を倒した結果として、特に戦いらしい戦いはしないでここまできたのだ。
 それは、現在の状況で考えると、アランとしては少しだけ……本当に少しだけだが、頼りないように思える。

「ロッコーモさんに頼みたいんだけど、どう思う?」
「それを私に聞くの? 今回の一件は、アランの勉強という意味もあるんでしょ? なら、人に聞くような真似をしないで、自分で考える必要があるんじゃない?」
「それは……」

 アランもそう言われれば、納得せざるをえないのは事実だ。
 そうして、これ以上レオノーラに聞いても意味はない……いや、教えて貰えないだろうと判断し、自分の能力で連れて行く面々を決めることにする。
 もしレオノーラがこの場にいなければ、もちろんアランが最初から自分で一緒に行く面々を決めていたのだから、それは特におかしくはないことだったのだろうが。

(取りあえず、偵察が得意な人は必要だよな、かといって、そっちの人数ばっかりってのも色々と不味いだろうから……その辺、少し悩むな。食料の類も少しは持っていった方がいいだろうし)

 泊まりがけで探索をするつもりはないが、遺跡の中というのは何が起きてもおかしくはない。
 以前アランとレオノーラが引っかかったように、転移の罠といったような代物がある可能性は十分に存在する。
 そうである以上、いざというときのために数日分の食料を持っていくのは当然だった。
 ……この場合の食料というのは、焼き固めたパンや干し肉といったように、保存性を優先して味は二の次だったが。
 それと、当然のように水も必要となるが……こちらは魔法で水を作れる者がいれば心配はいらない。
 レオノーラと共に転移の罠に引っかかった経験があるだけに、食料は是非とも用意しておく必要があった。

「ロッコーモさん、ちょっといいですか! こっちに来て下さい!」

 叫ぶアランの声に、少し離れた場所で周囲の警戒をしていたロッコーモは何かあったのかとアランの方に近付いてくる。
 戦闘力に特化しているロッコーモだけに、他の者たちの邪魔にならないようにと自主的に警戒していたのだが……それでも暇だったのは間違いないのか、アランに向かって近付いてくる様子はかなり嬉しそうだ。
 アランもそんなロッコーモなら遺跡の探索に喜んでついてきてくれるだろうと、笑みを浮かべるのだった。
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