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逃避行
280話
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「では……勝利を祝って、乾杯!」
『乾杯!』
ロッコーモの言葉に、野営地にいた者たち全員が手に持ったコップを掲げて叫ぶ。
ガリンダミア帝国軍との戦いがあった日の夜……取り合えず、ガリンダミア帝国軍の兵士たちの死体の片付けも終わり、宴会をということになったのだ。
勝利を祝うための宴会ではあるが、同時に雲海や黄金の薔薇の中から何人か出てしまった死者に対する弔いの宴でもある。
湿っぽく見送るのではなく、派手に騒いで見送る。
そのための宴でもあった。
雲海も黄金の薔薇も、所属している者は精鋭揃いだ。
しかし、それでも絶対に死なないという訳ではない。
ましてや、今日の戦いで戦ったのは盗賊の類ではなく、ガリンダミア帝国軍の正規の兵士たち……それも精鋭と呼ぶべき相手だ。
ましてや、死の瞳というマジックアイテムによって最大戦力の心核使いたちも心核を使えなくなっており、それを考えれば被害が少数ですんだのは奇跡と言ってもいいだろう。
とはいえ、それでも生死を共にした仲間が死んだのは悲しいことだ。
今は、その悲しみを吹き飛ばすために多くの者が騒いでいる。
そんな中、アランは多くの者に感謝の言葉をされていた。
「いや、アランのおかげで助かった。もしアランがゼオンを召喚してくれなきゃ、多分……いや、間違いなく俺たちは死んでたな」
「おいおい、あんな連中がいくら攻めて来ても、俺たちならなんとでもなるって。……まぁ、アランのおかげで戦いが早く終わったのは事実だけどな」
他にも何人もがアランに感謝の言葉を口にしていた。
そんな状況はアランにとって決して居心地のいいものではない。
元々、アランは探索者としては決して有能といった訳ではない。
もちろん、決して無能といった訳ではないのだが、それでも雲海や黄金の薔薇の探索者としては実力不足なのは間違いなかった。
それが急に――心核津を入手してからそれなりに経っているが――活躍をするようになり、こうして褒められるといったことは、あまりない。
「あははは。そう言って貰えると嬉しいですよ。ただ、俺が心核を使えるようになるまで皆が頑張ってくれたから、何とかなったというのが大きいと思いますけどね」
アランのその言葉は、人によってはお世辞のようにも聞こえるだろう。
だが、不思議とアランが本心からそのように言ってるように思えた。
……実際にお世辞でも何でもなく、本心からの言葉だからというのもあるのだろう。
もしこの場にいたのがアランだけであれば、それこそ死の瞳で動けなくなっていたところをあっさりと捕まっていたはずだ。
それを思えば、アランが他の皆に感謝するのは当然だった。
そしてアランが本心から言っていると分かっているからこそ、それを聞いていた者たちも素直にその言葉を受け入れることが出来る。
中には、レオノーラがいる場所の近くであれだけ派手な戦闘をしたということで、未だにアランのことを苦々しく思っていた者もいたが。
そうして一時間ほどが経過すると、ようやくアランの周囲には誰もいなくなった。
正確には、皆が酔っ払ってそれぞれ好き勝手に騒ぎ始めたというのが正しい。
何人かはまだ完全に酔いが回っていない者もいるのだが、そのような者はアランを含めて少数だ。
……なお、アランが何故まだ酔っていないのかは、アランが酒を飲んだのは乾杯のときの一杯だけだからというのが大きい。
アランは死の瞳の影響をまともに受けた。
そうである以上、どのような影響があるか分からない。
そんな状況で酒を飲むのは危険だと、そう判断されたのだ。
それでも最初の一杯だけは許した辺り、アランにも乾杯の気持ちよさを味わって欲しいと思ってのことだったのだろうが。
「……ん?」
酒を飲まない分、料理を楽しんでいたアランは、野営地から離れていく人影を見つける。
(あれって……)
その人影に見覚えがあったアランは、ふと疑問を抱いて立ち上がり、人影を追う。
何故その人影を追ったのか。
それは、その人影がアランにとっても重要な人物だったためだ。
少し速度を出して歩き、野営地の隅に向かったその人物に声をかける。
「どうした、レオノーラ。お前も酒は飲まないように言われていたけど、実は飲んでしまって酔い覚ましとかか?」
そんなアランの言葉に、レオノーラは首を横に振る。
「そんな訳ないでしょ? 私も酒は最初の一杯しか飲んでないんだから」
アラン以上に、レオノーラは体調に注意されている。
死の瞳が使われたとき、アランは気絶するといったようなことまではなかった。
それに対して、レオノーラは完全に気絶してしまい、意識が戻るまでかなり時間がかかっている。
アランがゼオンを召喚しているのに対し、レオノーラの場合は他の心核使いと同様に自分が黄金のドラゴンに変身している。
それが、大きな違いとなったのだろう。
レオノーラもそれは分かっていたが、それでもアランが気絶しなかったのに対して自分は気絶し、戦いが終わるまでは意識が戻らなかったのは事実。
その事実が、レオノーラにとっては小さな傷となって残っているのだろう。
それを理解したアランは、半ば呆れたように言う。
「別に今回はレオノーラが戦えなかったってだけだろ? いつもレオノーラが戦わないといけないと駄目って訳じゃない」
「簡単に言うわね」
呆れと、そして若干の羨ましさが混ざった様子でレオノーラが告げる。
レオノーラにしてみれば、何故アランがそんな簡単に言えるのか分からない。
……アランにしてみれば、心核のカロを入手するまで、自分は決して特別な存在ではなかったと、そう理解していた。
それこそ、前世というものを持っているという点では特別だったが、言ってみればそれだけだ。
雲海に所属する探索者たちには、どうやっても勝つことが出来なかったのだ。
アランが前世で読んだことのある漫画や小説では、前世を持ってる者は特殊な存在だった。
それこそ、長剣を持てばすぐに使いこなして一流と呼ぶだけの技量を手にしたり、始め潜ったダンジョンで何故かドラゴンのような存在と遭遇し……そして倒したりといったような。
そんな小説や漫画に出て来る冒険者たちと違い、アランは前世こそあったものの、特に何かこれといった特殊な能力は持っていなかった。
いや、実際には心核使いとしては破格の能力を持っていたのだが、それが判明するまではかなりの時間がかかっている。
それだけに、今まではそこまで自分が特別な存在だとは思えなかった。
そんなアランに比べて、レオノーラはまさに生まれ持った才能が違う。
生身での戦いの実力においても一級品で、心核使いとしての実力も非常に高い。
だからこそ、本格的な挫折を経験することがないまま、ここまでやって来た。……やって来ることが出来てしまったのだろう。
「俺は元々そこまで強かったって訳じゃないしな。そんな俺から見れば、レオノーラの方が羨ましいと思ってるよ」
「……そう?」
アランの言葉に、レオノーラは本当にそのように思っているのかと、そう尋ねる。
そんなレオノーラに、アランは特に躊躇する様子もなく頷く。
アランにとっては嘘でも何でもない、それこそ正直な気持ちなのだから当然だろう。
「そうなの。……なら、いいわ」
「いいのか?」
何故不意にレオノーラがそんなことを言い出したのか、正直なところアランには分からない。
分からないが、それでもレオノーラが落ち込んでいる状況に比べれば、今の方がいいのは間違いなかった。
「いいのよ。私がいいって言ったんだから。……とにかく、今回の一件で分かったのは私やアランみたいな心核使いでも、油断をすると致命的なダメージを受けるかもしれないといったところね」
「そんな手段はそう多くはないけどな。……死の瞳についての詳細な説明は聞いたか?」
「ええ。……使われたから言う訳じゃないけど、かなり非道なマジックアイテムね。使用者の命を代償にするなんて。しかも、誰が使ってもいい訳じゃない」
使用者の魔力が大きければ大きいほど、死の瞳の効果も大きくなる。
だが、当然のように魔力の大きい人材というのは非常に数が少なく、使い捨てには出来ない。
「可能性があるとすれば、魔力が高くても死んでも構わない人物に、騙して使わせるとかかしら」
レオノーラのその言葉は、ダーズラが行った方法を見事に当てていたのだが、それを知ることはない。
「それなら問題ないか。……それでも痛いのは事実だろうけど」
死んでもおかしくない人物であっても、その魔力には使い道は色々とある。
それこそ魔力を搾りとって何らかのマジックアイテムを作るのに使ったり、もしくはマジックアイテムを動かすのに使ったり。
しかし、当然だが死んでしまえばその人物はもう二度と魔力を生み出すことは出来ない。
「そうね。そう考えると、今回の一件は私やアラン……それ以外にも多数の心核使いがいる私たちが相手だからこそ、特別だったんでしょう」
「だとすれば、次もその特別になる可能性は否定出来ないか?」
「……出来ないでしょうね、もちろん、そんな真似を続ければ、それだけガリンダミア帝国は人材が枯渇していくことになるから、私たちにとっても全くの無意味という訳じゃないんでしょうけど」
「だとすれば、そこまで心配する必要もないと思うけどな。……取りあえず、これからどうするかを考えた方がいい」
そう告げるアランに、レオノーラは羨ましさ半分、呆れ半分といった視線を向けるが……やがて、笑みを浮かべる。
月明かりの下に映えるその笑みは、アランの目を奪うには十分だった。
「アラン? どうしたの?」
「いや、何でもない。……ただ、今日はそう悪い日って訳でもなかったと思ってな」
「……そう? 私にとっては悪い日だったけどね」
アランの言葉に、不服そうに告げるレオノーラ。
本人にその気はないのだろうが、普段は凛とした美人のレオノーラがそのような表情を浮かべると、妙に可愛らしい。
未だに騒ぎが起きている中、アランとレオノーラは二人で静かに話し続けるのだった。
『乾杯!』
ロッコーモの言葉に、野営地にいた者たち全員が手に持ったコップを掲げて叫ぶ。
ガリンダミア帝国軍との戦いがあった日の夜……取り合えず、ガリンダミア帝国軍の兵士たちの死体の片付けも終わり、宴会をということになったのだ。
勝利を祝うための宴会ではあるが、同時に雲海や黄金の薔薇の中から何人か出てしまった死者に対する弔いの宴でもある。
湿っぽく見送るのではなく、派手に騒いで見送る。
そのための宴でもあった。
雲海も黄金の薔薇も、所属している者は精鋭揃いだ。
しかし、それでも絶対に死なないという訳ではない。
ましてや、今日の戦いで戦ったのは盗賊の類ではなく、ガリンダミア帝国軍の正規の兵士たち……それも精鋭と呼ぶべき相手だ。
ましてや、死の瞳というマジックアイテムによって最大戦力の心核使いたちも心核を使えなくなっており、それを考えれば被害が少数ですんだのは奇跡と言ってもいいだろう。
とはいえ、それでも生死を共にした仲間が死んだのは悲しいことだ。
今は、その悲しみを吹き飛ばすために多くの者が騒いでいる。
そんな中、アランは多くの者に感謝の言葉をされていた。
「いや、アランのおかげで助かった。もしアランがゼオンを召喚してくれなきゃ、多分……いや、間違いなく俺たちは死んでたな」
「おいおい、あんな連中がいくら攻めて来ても、俺たちならなんとでもなるって。……まぁ、アランのおかげで戦いが早く終わったのは事実だけどな」
他にも何人もがアランに感謝の言葉を口にしていた。
そんな状況はアランにとって決して居心地のいいものではない。
元々、アランは探索者としては決して有能といった訳ではない。
もちろん、決して無能といった訳ではないのだが、それでも雲海や黄金の薔薇の探索者としては実力不足なのは間違いなかった。
それが急に――心核津を入手してからそれなりに経っているが――活躍をするようになり、こうして褒められるといったことは、あまりない。
「あははは。そう言って貰えると嬉しいですよ。ただ、俺が心核を使えるようになるまで皆が頑張ってくれたから、何とかなったというのが大きいと思いますけどね」
アランのその言葉は、人によってはお世辞のようにも聞こえるだろう。
だが、不思議とアランが本心からそのように言ってるように思えた。
……実際にお世辞でも何でもなく、本心からの言葉だからというのもあるのだろう。
もしこの場にいたのがアランだけであれば、それこそ死の瞳で動けなくなっていたところをあっさりと捕まっていたはずだ。
それを思えば、アランが他の皆に感謝するのは当然だった。
そしてアランが本心から言っていると分かっているからこそ、それを聞いていた者たちも素直にその言葉を受け入れることが出来る。
中には、レオノーラがいる場所の近くであれだけ派手な戦闘をしたということで、未だにアランのことを苦々しく思っていた者もいたが。
そうして一時間ほどが経過すると、ようやくアランの周囲には誰もいなくなった。
正確には、皆が酔っ払ってそれぞれ好き勝手に騒ぎ始めたというのが正しい。
何人かはまだ完全に酔いが回っていない者もいるのだが、そのような者はアランを含めて少数だ。
……なお、アランが何故まだ酔っていないのかは、アランが酒を飲んだのは乾杯のときの一杯だけだからというのが大きい。
アランは死の瞳の影響をまともに受けた。
そうである以上、どのような影響があるか分からない。
そんな状況で酒を飲むのは危険だと、そう判断されたのだ。
それでも最初の一杯だけは許した辺り、アランにも乾杯の気持ちよさを味わって欲しいと思ってのことだったのだろうが。
「……ん?」
酒を飲まない分、料理を楽しんでいたアランは、野営地から離れていく人影を見つける。
(あれって……)
その人影に見覚えがあったアランは、ふと疑問を抱いて立ち上がり、人影を追う。
何故その人影を追ったのか。
それは、その人影がアランにとっても重要な人物だったためだ。
少し速度を出して歩き、野営地の隅に向かったその人物に声をかける。
「どうした、レオノーラ。お前も酒は飲まないように言われていたけど、実は飲んでしまって酔い覚ましとかか?」
そんなアランの言葉に、レオノーラは首を横に振る。
「そんな訳ないでしょ? 私も酒は最初の一杯しか飲んでないんだから」
アラン以上に、レオノーラは体調に注意されている。
死の瞳が使われたとき、アランは気絶するといったようなことまではなかった。
それに対して、レオノーラは完全に気絶してしまい、意識が戻るまでかなり時間がかかっている。
アランがゼオンを召喚しているのに対し、レオノーラの場合は他の心核使いと同様に自分が黄金のドラゴンに変身している。
それが、大きな違いとなったのだろう。
レオノーラもそれは分かっていたが、それでもアランが気絶しなかったのに対して自分は気絶し、戦いが終わるまでは意識が戻らなかったのは事実。
その事実が、レオノーラにとっては小さな傷となって残っているのだろう。
それを理解したアランは、半ば呆れたように言う。
「別に今回はレオノーラが戦えなかったってだけだろ? いつもレオノーラが戦わないといけないと駄目って訳じゃない」
「簡単に言うわね」
呆れと、そして若干の羨ましさが混ざった様子でレオノーラが告げる。
レオノーラにしてみれば、何故アランがそんな簡単に言えるのか分からない。
……アランにしてみれば、心核のカロを入手するまで、自分は決して特別な存在ではなかったと、そう理解していた。
それこそ、前世というものを持っているという点では特別だったが、言ってみればそれだけだ。
雲海に所属する探索者たちには、どうやっても勝つことが出来なかったのだ。
アランが前世で読んだことのある漫画や小説では、前世を持ってる者は特殊な存在だった。
それこそ、長剣を持てばすぐに使いこなして一流と呼ぶだけの技量を手にしたり、始め潜ったダンジョンで何故かドラゴンのような存在と遭遇し……そして倒したりといったような。
そんな小説や漫画に出て来る冒険者たちと違い、アランは前世こそあったものの、特に何かこれといった特殊な能力は持っていなかった。
いや、実際には心核使いとしては破格の能力を持っていたのだが、それが判明するまではかなりの時間がかかっている。
それだけに、今まではそこまで自分が特別な存在だとは思えなかった。
そんなアランに比べて、レオノーラはまさに生まれ持った才能が違う。
生身での戦いの実力においても一級品で、心核使いとしての実力も非常に高い。
だからこそ、本格的な挫折を経験することがないまま、ここまでやって来た。……やって来ることが出来てしまったのだろう。
「俺は元々そこまで強かったって訳じゃないしな。そんな俺から見れば、レオノーラの方が羨ましいと思ってるよ」
「……そう?」
アランの言葉に、レオノーラは本当にそのように思っているのかと、そう尋ねる。
そんなレオノーラに、アランは特に躊躇する様子もなく頷く。
アランにとっては嘘でも何でもない、それこそ正直な気持ちなのだから当然だろう。
「そうなの。……なら、いいわ」
「いいのか?」
何故不意にレオノーラがそんなことを言い出したのか、正直なところアランには分からない。
分からないが、それでもレオノーラが落ち込んでいる状況に比べれば、今の方がいいのは間違いなかった。
「いいのよ。私がいいって言ったんだから。……とにかく、今回の一件で分かったのは私やアランみたいな心核使いでも、油断をすると致命的なダメージを受けるかもしれないといったところね」
「そんな手段はそう多くはないけどな。……死の瞳についての詳細な説明は聞いたか?」
「ええ。……使われたから言う訳じゃないけど、かなり非道なマジックアイテムね。使用者の命を代償にするなんて。しかも、誰が使ってもいい訳じゃない」
使用者の魔力が大きければ大きいほど、死の瞳の効果も大きくなる。
だが、当然のように魔力の大きい人材というのは非常に数が少なく、使い捨てには出来ない。
「可能性があるとすれば、魔力が高くても死んでも構わない人物に、騙して使わせるとかかしら」
レオノーラのその言葉は、ダーズラが行った方法を見事に当てていたのだが、それを知ることはない。
「それなら問題ないか。……それでも痛いのは事実だろうけど」
死んでもおかしくない人物であっても、その魔力には使い道は色々とある。
それこそ魔力を搾りとって何らかのマジックアイテムを作るのに使ったり、もしくはマジックアイテムを動かすのに使ったり。
しかし、当然だが死んでしまえばその人物はもう二度と魔力を生み出すことは出来ない。
「そうね。そう考えると、今回の一件は私やアラン……それ以外にも多数の心核使いがいる私たちが相手だからこそ、特別だったんでしょう」
「だとすれば、次もその特別になる可能性は否定出来ないか?」
「……出来ないでしょうね、もちろん、そんな真似を続ければ、それだけガリンダミア帝国は人材が枯渇していくことになるから、私たちにとっても全くの無意味という訳じゃないんでしょうけど」
「だとすれば、そこまで心配する必要もないと思うけどな。……取りあえず、これからどうするかを考えた方がいい」
そう告げるアランに、レオノーラは羨ましさ半分、呆れ半分といった視線を向けるが……やがて、笑みを浮かべる。
月明かりの下に映えるその笑みは、アランの目を奪うには十分だった。
「アラン? どうしたの?」
「いや、何でもない。……ただ、今日はそう悪い日って訳でもなかったと思ってな」
「……そう? 私にとっては悪い日だったけどね」
アランの言葉に、不服そうに告げるレオノーラ。
本人にその気はないのだろうが、普段は凛とした美人のレオノーラがそのような表情を浮かべると、妙に可愛らしい。
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