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獣人を率いる者
345話
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サイの獣人は、巨体という言葉が相応しい姿をしていた。
そして部屋の中には、ゴールスと思われるサイの獣人以外にも数人の人影がある。
その全員が、明らかに腕利きの者たちだった。
「来たか」
そう呟くサイの獣人……ゴールス。
何故その人物がゴールスなのだとアランが認識したのかといえば、部屋の中にある豪華な椅子にそのサイの獣人が座っていたためだ。
また、クラリスや他の面々からゴールスについての情報収集をしている以上、この部屋の中にいるサイの獣人が一人であることから考えて、ゴールスなのは間違いなかった。
「ええ、来ました」
圧力を感じさせる言葉を発したゴールスではあったが、クラリスは一歩も退いた様子がなくゴールスに言葉を返す。
そんなクラリスの様子に、少しだけ眉を動かすゴールス。
まさか、クラリスがこうも堂々と自分に言葉を発してくるとは思わなかったのだろう。
そんなゴールスを見て、アランもまた驚く。
(耳栓の類はないな。やっぱり何らかの手段で俺たちの会話を聞いていたのか?)
クラリスは、ここで言霊を使うような真似はしないと、そう断言していた。
アランにしてみれば甘いという感想を抱くが、クラリスの性格を考えればそれも仕方がないかという思いがある。
ゴールスは何らかの手段で自分たちの会話を聞いており、それによってこうして正面から堂々と渡り合っているのではないか、と。
(そうなると、怪しいのは……)
それ以上は何も言葉を発さず、無言で視線を交わしているクラリスとゴールスをそのままに、アランは部屋の中にいる相手を確認していく。
(五人……思ったよりは少ないな)
三階の中でも最も広い部屋だけに、五人……いや、ゴールスとアランたちを含めれば全部で九人いるというのに、狭苦しさは感じない。
そんな五人の獣人は、一見すれば特に構えている様子はない。
だが、それはあくまでも客観的に見てそう見えないだけで、もしアランたちが何か妙な動き……具体的にはゴールスを傷付けようとした場合、即座に反撃をするといった準備が整っていた。
そこまではアランも分からなかったが、見た感じでは間違いなく自分たちを警戒している。
……こうして本拠地の中でも一番警備が厳重な場所にやって来たのだから、そのように警戒するのも当然だろうが。
「それで、何の用事でここまで来たんだ?」
沈黙を破り、ゴールスが尋ねる。
その目には、すでにクラリスに対する侮りの色はない、
こうして一言だけだが会話を交わし、その結果としてクラリスは子供だが決して侮っていい相手ではないと、そう理解したのだ。
「今日は少し聞きたいことがあって来ました。……ゴールス、貴方は何故一族の長になりたいのですか? そして、一族の長になって何をしたいのですか?」
「俺が一族の長になったらか? そうなったら、もちろん一族に繁栄をもたらすさ」
「繁栄、ですか。言葉だけで言うのなら容易いでしょう。ですが、それは具体的にどのように?」
ゴールスから一切視線を逸らさず、クラリスは尋ねる。
その瞳には、ある意味言霊以上の力が宿っていた。
だからこそ、ゴールスを前にしても怯えるといった様子がないのだろう。
……もしゴールスが本気になれば、それこそクラリスは一瞬にして死んでしまう。
いくら言霊といったような絶対的な力をもっていようとも、言霊というのはあくまでも口で命令をすることによって効果を発揮する。
耳栓を使って言葉を防ぐのは難しいかもしれないが、それなら言葉を口に出させなければいいだけの話でもある。
もしくは、アランとレオノーラというクラリスと一緒にここにきた二人を頼りにしているのかもしれないが、ゴールスの側には五人の腕利きがいるのだ。
今この状況で正面からやり合えば、勝つのは自分たちだと思える。
それでも実際に手を出すといったような真似は出来ない。
手を出せば勝てるだろうが、そのような真似をした場合は色々と問題が大きくなるためだ。
実際にはクラリスが強引に自分の屋敷に侵入した以上、本来なら問題はないのだが。
あるいは、それで大きな騒動になったりした場合、これまでの自分の後ろ暗い行動が非難される恐れもあった。
そのようなことがあったとしても、力でどうにかするのは不可能ではない。
不可能ではないが、だからといってそのような真似を意図的にする必要もなかった。
「そうだな。俺のように力のある者が支配すれば、一族は明るい未来に向かう。それは当然のことだろう?」
「……具体的には、何をどのようにするのですか?
抽象的なことしか口にしないゴールスに、クラリスは追撃するように尋ねる。
実際、自分がガリンダミア帝国と繋がっているということは、ゴールスにとっても大きな理由となっている。
しかし、今の状況でそれを口にするといったようなことをした場合、間違いなく自分にとって大きなダメージとなるだろう。
それを理解しているからこそ、今の状況でその件を口にする訳にはいかない。
「現在俺と敵対している相手に、それを話せると思うか? ……むしろ、そういう意味では俺の方こそ聞きたい。お前のような子供が一族の長になってどう他の者を導くつもりだ? 言霊を使い、無理矢理命令を聞かせるつもりか?」
「そんなことは考えていません。……もしそのつもりがあるのなら、それこそここで言霊を使ってゴールスをどうにかすると思いませんか?」
クラリスの口からそのような言葉が漏れた瞬間、ゴールスの視線は厳しくなる。
それこそ、敵意が巨体から滲み出した……といった表現が相応しいだろう。
当然ながら、ゴールスもクラリスの言霊については強く警戒しているのだろう。
もっとも、アランにしてみればゴールスの気持ちも十分に理解出来るのだが。
いや、正確には分からないから想像するしかないというのが正しい。
アランは前世の存在のおかげか、言霊の効果がない。
だからこそ、言霊を使われた者たちの様子から考えて、そういうものなのだろうと、そのように思う。
「そうだな。だが、もしそんなことをすれば、どうなるか……それはお前が一番よく理解しているだろう?」
ゴールスの念を押すような言葉。
クラリスはそんなゴールスの言葉にも、全く怯んだ様子もなく頷く。
「ええ、そうですね。……ですが、私は貴方を殺すために暗殺者を送るなどという、みっともない真似はしません」
みっともないという言葉に、ゴールスの顔がピクリと動く。
だが、ゴールスが見せた反応はそれだけのまま、口を開く。
「何のことを言ってるのか分からないな。俺が暗殺者を送っただと? 何の証拠もなく、そのようなことを言われても困る」
誤魔化した!?
ゴールスの言葉を聞き、アランは思わず内心で叫ぶ。
そもそも、今の状況でクラリスを狙うべき人物というのは、それこそゴールス以外に存在しない。
何より……
「私を暗殺しに来た犯人、生け捕りにしてるのですが?」
そう、クラリスには暗殺者本人という絶対的な証拠があった。
黒豹の女の獣人。
ジャスパーですら、捕らえるのに少し苦労をする程度の実力を持っている相手だ。
獣牙衆の一員であるというのも、ガーウェイによってすでに確定している。
そのような相手を捕らえているのだから、それ以上の証拠はないだろう。
だが……そんなクラリスの言葉に、ゴールスは馬鹿らしいと余裕の笑みを浮かべる。
「暗殺者が俺からの依頼だと口にしたと? ……だとすれば、それはそれで余計に俺の潔白の証明となるだろう。暗殺者がこちらを誤魔化す為に、そのように言ってるといった可能性は、否定出来ないのだからな」
「それは……」
ゴールスが言ったのは、暗殺者の言葉は信用出来ないといったものだ。
アランから見れば、それは言い掛かりでしかない。
ないのだが……実際、暗殺者の口から出た言葉にどれだけの信憑性があるのかと言われれば、アランとしても素直に信じることが出来ないのは事実だった。
「それに、暗殺者になら俺も狙われている。……俺の場合はお前以外にも敵対している相手がそれなりにいるから、その暗殺者がお前の仕業であるとは思っていない。だからこそ、俺を狙った暗殺者がクラリスから頼まれたと言っても、それを信用することはなかったのだが……お前は違うのか?」
ゴールスの主張に、クラリスは反論出来ない。
もちろん、クラリスはゴールスに対して暗殺者を送るといったような真似はしていない。
だが、そのようなことがあったと言われれば、クラリスとしても何も言えないのだ。
「私の名前を出したのですか。……では、その暗殺者に会わせて下さい。もしゴールスが望むのであれば、言霊を使ってその暗殺者に依頼人について話させましょう」
「悪いがそいつはもういない。暗殺者だぞ? 生かしておけば、それこそいつまたこちらを狙ってくるのかも分からないんだ。そうである以上、出来る限りすぐ殺した方がいいのは、間違いない」
断言するゴールスを見て、アランは疑問を抱く。
(交渉するにしても、少し強気すぎないか? 今の状況は、はっきり言ってゴールスの方が追い詰められてるんだ。それこそ、クラリスの気が変われば……あっさりと言霊を使われかねない。なのに、ここまで堂々と嘘を吐くのか?)
すでにアランは、ゴールスが暗殺者に狙われたという言葉すら恐らくは嘘だろうと判断していた。
クラリスが暗殺者に狙われたから、自分も狙われたことにしたのだろうと。
普通なら、そのような言葉が信じられるはずもない。
だが……ゴールスはこのデルリアにいて大きな影響力を持っている。
それこそ、本人がその気になれば偽りの暗殺者を作る程度の事は何の問題もなく出来る、それだけの影響力が。
当然ながら、アランだけではなくクラリスやレオノーラもまた、そんなゴールスの言葉の裏にある考えを予想することは出来たのだろう。
だが、それでも今の状況を思えば、確たる証拠がない以上、反論は出来なかった。
「ともあれ……このままお互い、無意味な争いをしても意味はありません。退いてくれと言っても、そちらは退かないのでしょう。ならば……獣人らしく、力で勝負しませんか?」
そう、クラリスは告げるのだった。
そして部屋の中には、ゴールスと思われるサイの獣人以外にも数人の人影がある。
その全員が、明らかに腕利きの者たちだった。
「来たか」
そう呟くサイの獣人……ゴールス。
何故その人物がゴールスなのだとアランが認識したのかといえば、部屋の中にある豪華な椅子にそのサイの獣人が座っていたためだ。
また、クラリスや他の面々からゴールスについての情報収集をしている以上、この部屋の中にいるサイの獣人が一人であることから考えて、ゴールスなのは間違いなかった。
「ええ、来ました」
圧力を感じさせる言葉を発したゴールスではあったが、クラリスは一歩も退いた様子がなくゴールスに言葉を返す。
そんなクラリスの様子に、少しだけ眉を動かすゴールス。
まさか、クラリスがこうも堂々と自分に言葉を発してくるとは思わなかったのだろう。
そんなゴールスを見て、アランもまた驚く。
(耳栓の類はないな。やっぱり何らかの手段で俺たちの会話を聞いていたのか?)
クラリスは、ここで言霊を使うような真似はしないと、そう断言していた。
アランにしてみれば甘いという感想を抱くが、クラリスの性格を考えればそれも仕方がないかという思いがある。
ゴールスは何らかの手段で自分たちの会話を聞いており、それによってこうして正面から堂々と渡り合っているのではないか、と。
(そうなると、怪しいのは……)
それ以上は何も言葉を発さず、無言で視線を交わしているクラリスとゴールスをそのままに、アランは部屋の中にいる相手を確認していく。
(五人……思ったよりは少ないな)
三階の中でも最も広い部屋だけに、五人……いや、ゴールスとアランたちを含めれば全部で九人いるというのに、狭苦しさは感じない。
そんな五人の獣人は、一見すれば特に構えている様子はない。
だが、それはあくまでも客観的に見てそう見えないだけで、もしアランたちが何か妙な動き……具体的にはゴールスを傷付けようとした場合、即座に反撃をするといった準備が整っていた。
そこまではアランも分からなかったが、見た感じでは間違いなく自分たちを警戒している。
……こうして本拠地の中でも一番警備が厳重な場所にやって来たのだから、そのように警戒するのも当然だろうが。
「それで、何の用事でここまで来たんだ?」
沈黙を破り、ゴールスが尋ねる。
その目には、すでにクラリスに対する侮りの色はない、
こうして一言だけだが会話を交わし、その結果としてクラリスは子供だが決して侮っていい相手ではないと、そう理解したのだ。
「今日は少し聞きたいことがあって来ました。……ゴールス、貴方は何故一族の長になりたいのですか? そして、一族の長になって何をしたいのですか?」
「俺が一族の長になったらか? そうなったら、もちろん一族に繁栄をもたらすさ」
「繁栄、ですか。言葉だけで言うのなら容易いでしょう。ですが、それは具体的にどのように?」
ゴールスから一切視線を逸らさず、クラリスは尋ねる。
その瞳には、ある意味言霊以上の力が宿っていた。
だからこそ、ゴールスを前にしても怯えるといった様子がないのだろう。
……もしゴールスが本気になれば、それこそクラリスは一瞬にして死んでしまう。
いくら言霊といったような絶対的な力をもっていようとも、言霊というのはあくまでも口で命令をすることによって効果を発揮する。
耳栓を使って言葉を防ぐのは難しいかもしれないが、それなら言葉を口に出させなければいいだけの話でもある。
もしくは、アランとレオノーラというクラリスと一緒にここにきた二人を頼りにしているのかもしれないが、ゴールスの側には五人の腕利きがいるのだ。
今この状況で正面からやり合えば、勝つのは自分たちだと思える。
それでも実際に手を出すといったような真似は出来ない。
手を出せば勝てるだろうが、そのような真似をした場合は色々と問題が大きくなるためだ。
実際にはクラリスが強引に自分の屋敷に侵入した以上、本来なら問題はないのだが。
あるいは、それで大きな騒動になったりした場合、これまでの自分の後ろ暗い行動が非難される恐れもあった。
そのようなことがあったとしても、力でどうにかするのは不可能ではない。
不可能ではないが、だからといってそのような真似を意図的にする必要もなかった。
「そうだな。俺のように力のある者が支配すれば、一族は明るい未来に向かう。それは当然のことだろう?」
「……具体的には、何をどのようにするのですか?
抽象的なことしか口にしないゴールスに、クラリスは追撃するように尋ねる。
実際、自分がガリンダミア帝国と繋がっているということは、ゴールスにとっても大きな理由となっている。
しかし、今の状況でそれを口にするといったようなことをした場合、間違いなく自分にとって大きなダメージとなるだろう。
それを理解しているからこそ、今の状況でその件を口にする訳にはいかない。
「現在俺と敵対している相手に、それを話せると思うか? ……むしろ、そういう意味では俺の方こそ聞きたい。お前のような子供が一族の長になってどう他の者を導くつもりだ? 言霊を使い、無理矢理命令を聞かせるつもりか?」
「そんなことは考えていません。……もしそのつもりがあるのなら、それこそここで言霊を使ってゴールスをどうにかすると思いませんか?」
クラリスの口からそのような言葉が漏れた瞬間、ゴールスの視線は厳しくなる。
それこそ、敵意が巨体から滲み出した……といった表現が相応しいだろう。
当然ながら、ゴールスもクラリスの言霊については強く警戒しているのだろう。
もっとも、アランにしてみればゴールスの気持ちも十分に理解出来るのだが。
いや、正確には分からないから想像するしかないというのが正しい。
アランは前世の存在のおかげか、言霊の効果がない。
だからこそ、言霊を使われた者たちの様子から考えて、そういうものなのだろうと、そのように思う。
「そうだな。だが、もしそんなことをすれば、どうなるか……それはお前が一番よく理解しているだろう?」
ゴールスの念を押すような言葉。
クラリスはそんなゴールスの言葉にも、全く怯んだ様子もなく頷く。
「ええ、そうですね。……ですが、私は貴方を殺すために暗殺者を送るなどという、みっともない真似はしません」
みっともないという言葉に、ゴールスの顔がピクリと動く。
だが、ゴールスが見せた反応はそれだけのまま、口を開く。
「何のことを言ってるのか分からないな。俺が暗殺者を送っただと? 何の証拠もなく、そのようなことを言われても困る」
誤魔化した!?
ゴールスの言葉を聞き、アランは思わず内心で叫ぶ。
そもそも、今の状況でクラリスを狙うべき人物というのは、それこそゴールス以外に存在しない。
何より……
「私を暗殺しに来た犯人、生け捕りにしてるのですが?」
そう、クラリスには暗殺者本人という絶対的な証拠があった。
黒豹の女の獣人。
ジャスパーですら、捕らえるのに少し苦労をする程度の実力を持っている相手だ。
獣牙衆の一員であるというのも、ガーウェイによってすでに確定している。
そのような相手を捕らえているのだから、それ以上の証拠はないだろう。
だが……そんなクラリスの言葉に、ゴールスは馬鹿らしいと余裕の笑みを浮かべる。
「暗殺者が俺からの依頼だと口にしたと? ……だとすれば、それはそれで余計に俺の潔白の証明となるだろう。暗殺者がこちらを誤魔化す為に、そのように言ってるといった可能性は、否定出来ないのだからな」
「それは……」
ゴールスが言ったのは、暗殺者の言葉は信用出来ないといったものだ。
アランから見れば、それは言い掛かりでしかない。
ないのだが……実際、暗殺者の口から出た言葉にどれだけの信憑性があるのかと言われれば、アランとしても素直に信じることが出来ないのは事実だった。
「それに、暗殺者になら俺も狙われている。……俺の場合はお前以外にも敵対している相手がそれなりにいるから、その暗殺者がお前の仕業であるとは思っていない。だからこそ、俺を狙った暗殺者がクラリスから頼まれたと言っても、それを信用することはなかったのだが……お前は違うのか?」
ゴールスの主張に、クラリスは反論出来ない。
もちろん、クラリスはゴールスに対して暗殺者を送るといったような真似はしていない。
だが、そのようなことがあったと言われれば、クラリスとしても何も言えないのだ。
「私の名前を出したのですか。……では、その暗殺者に会わせて下さい。もしゴールスが望むのであれば、言霊を使ってその暗殺者に依頼人について話させましょう」
「悪いがそいつはもういない。暗殺者だぞ? 生かしておけば、それこそいつまたこちらを狙ってくるのかも分からないんだ。そうである以上、出来る限りすぐ殺した方がいいのは、間違いない」
断言するゴールスを見て、アランは疑問を抱く。
(交渉するにしても、少し強気すぎないか? 今の状況は、はっきり言ってゴールスの方が追い詰められてるんだ。それこそ、クラリスの気が変われば……あっさりと言霊を使われかねない。なのに、ここまで堂々と嘘を吐くのか?)
すでにアランは、ゴールスが暗殺者に狙われたという言葉すら恐らくは嘘だろうと判断していた。
クラリスが暗殺者に狙われたから、自分も狙われたことにしたのだろうと。
普通なら、そのような言葉が信じられるはずもない。
だが……ゴールスはこのデルリアにいて大きな影響力を持っている。
それこそ、本人がその気になれば偽りの暗殺者を作る程度の事は何の問題もなく出来る、それだけの影響力が。
当然ながら、アランだけではなくクラリスやレオノーラもまた、そんなゴールスの言葉の裏にある考えを予想することは出来たのだろう。
だが、それでも今の状況を思えば、確たる証拠がない以上、反論は出来なかった。
「ともあれ……このままお互い、無意味な争いをしても意味はありません。退いてくれと言っても、そちらは退かないのでしょう。ならば……獣人らしく、力で勝負しませんか?」
そう、クラリスは告げるのだった。
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