剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

文字の大きさ
399 / 422
ガリンダミア帝国との決着

398話

しおりを挟む
 夜襲があった翌日……レジスタンス連合の士気は、前日と同じくらいに……いや、あるいはそれ以上に高まっていた。
 それこそ、本来なら昨夜の夜襲で食料や武器の保管場所を多少なりとも焼かれるといったような真似をされた以上、士気は低くなるのではないか? とアランは思っていたのだが。

「何だってこんなに士気が高いんだ?」
「それだけガリンダミア帝国に抑圧されてきたから、でしょうね。この戦いで勝って、自分の国を取り戻す。支配者から解放する。そう願っているから、レジスタンスたちは士気を上げているのよ。自分たちで気が付いていないだけで、そこには無理に士気を上げているといった一面もあるかもしれないけどね」
「レオノーラ……いいのか、ここに来て」

 現在アランがいるのは、レジスタンス連合の本隊から少し離れた場所だ。
 朝食を終え、これからいよいよガリンダミア帝国の帝都に……正確には帝都の前で待機してるガリンダミア帝国軍に向かって攻撃をしようとしている軍隊から、少し離れた場所。
 ゼオンを召喚する以上、レジスタンス連合と一緒に行動は出来ない。
 昨夜行われた夜襲も、結局のところ実行した黒装束たちの狙いは、アランだった。
 そんなアランがレジスタンス連合と一緒にいれば、また敵が襲ってきた場合に周囲を巻き込む可能性があった。
 それ以外ににも、レジスタンスの中には黒装束たちが……あるいは黒装束たちではなくても、ガリンダミア帝国軍の者が潜んでいる可能性もある。
 そうである以上、人のいる場所にアランがいるというのは、襲撃に周囲を巻き込むというだけではなく、レジスタンス連合に紛れ込んでいる敵に襲撃されるといった可能性も否定は出来なかった。
 以前のように雲海だけ、もしくは雲海と黄金の薔薇だけで行動しているのなら、皆が顔見知りである以上、そこに誰かが紛れ込んでいればすぐに分かる。
 しかし、レジスタンス連合としてここまで巨大になってしまえば、当然ながらその全ての人員を把握するのは不可能だった。

(いやまぁ、イルゼンさん辺りならレジスタンス連合に所属する全員の顔を覚えていても、おかしくはないけど)

 イルゼンの人間離れした能力は、今まで何度も見てきている。
 それだけに、レジスタンス連合に所属する全員……それこそ万単位になるのではないかと思えるだけの人数全員を覚えていても、アランは納得出来た。

「私たちの準備はもう終わってるから、問題ないわよ。下が優秀だと、こういうときに助かるわね」

 満面の笑みを浮かべてそう告げるレオノーラ。
 事実、レオノーラの部下……黄金の薔薇の面々は誰もが高い能力を持つ。
 それは貴族として育ったからというのもあるのだろうが、それ以上に黄金の薔薇として活動してきたからというのが大きい。
 それだけレオノーラたちが潜り抜けてきた修羅場の数は多かったのだろう。
 もっとも、潜り抜けてきた修羅場の数というだけなら、それこそアランもそう違わないのだが。
 ……いや、レオノーラたちよりも能力が低い分だけ、修羅場に遭遇したときの危険度は高いとすら言えた。

「そうか。なら、少しここでゆっくりしていけばいい。俺もどうせ出撃するまでは暇だったから、話し相手になってくれると助かるしな」

 アランは個人で出撃するために、出撃準備となると必要なのはそれこそカロを使ってゼオンを召喚するだけだ、
 テントの類は雲海の後方部隊の面々が回収して運んでくれるので、特に必要なものはない。

「そうね、そうさせてもらうわ。それで……アラン。今日の戦いでガリンダミア帝国軍との戦いがようやく終わる訳だけど、その心境はどう?」
「どうって言われてもな。それこそ本当に今日だけで戦いが終わるのかは分からないし、何とも言えないな」

 昨夜の夜襲で食料や武器の類を焼かれはしたが、それでも焼かれた部分は一部でしかない。
 もちろん、それによってレジタンス連合が受けたダメージは大きいし、何よりも警戒していたにもかかわらず、あっさりと野営地に侵入されたという点で、物理的にはともかく精神的な被害を与えている。
 数ヶ月といった期間は無理でも、数日……いや、十日くらいであれば十分に戦えるだけの食料や武器の予備はまだ残っているのだが、それでもやはり侵入されたというのは大きい。
 それ以外にも、現在はまだそれだけ残っているものの、戦闘が長引いた場合に再び昨夜のような黒装束たちが夜襲をしてくるといった可能性は決して否定出来なかった。
 レジスタンス連合がここまで士気が高いのは、そんな相手に対する恐怖を払拭するため、というのもあるのだろう。
 それが分かっているだけに、アランとしては現状の士気の高さに対して完全に安心するといったような真似は出来なかった。

「あら、そうなの? アランのことだから、もっと喜んでいるのかと思ったのに」
「まぁ……そうだな。本当にこれで戦いが終わるのなら、俺も喜べたのかもしれないけど。そうでないなら、ここで喜んでもぬか喜びに終わるかもしれないな。獲らぬ狸の何とやらって感じで」

 日本でしか通用しない言葉ではあるが、レオノーラはアランの前世を擬似的に体験しているので、アランの言いたいことは十分に理解出来た。
 それだけに、なるほどと納得したような表情を浮かべる。

「今の状況を思えば、アランの言いたいことは納得出来るわね」

 そんな風に話していると、やがて黄金の薔薇の探索者がレオノーラを呼びに来る。

「レオノーラ様、そろそろ出発とのことですので、お戻り下さい」
「あら、もうそんな時間? ……じゃあ、私もそろそろ行くわね。アランも気をつけて」

 そう言い、黄金の薔薇のいる方に向かうレオノーラ。
 そんなレオノーラを迎えに来た探索者の男は、すぐにレオノーラを追う……のではなく、アランに向かって声をかける。

「アラン、今日の戦いでは何が起きるのか分からない。気をつけろよ」
「分かっていますよ。相手はガリンダミア帝国軍。それも一部隊とかじゃなくて、動かせる限りの全軍です。そうである以上、こちらとしても今までのように一方的に対処出来るとは思いませんしね」

 幸いにも、レオノーラを呼びに来たのはアランにとって友好的な相手だったらしく、気をつけるように言ってきたので、アランもそれに言葉を返す。
 黄金の薔薇の中には、アランのレオノーラの関係が適切ではないと、そのように思っている者もそれなりにいる。
 そのような者達は、態度にまで出すような者は少ないが、アランに不満を持っていた。
 それでもレオノーラがいる前では露骨に態度を出すといった者は少なかったが。
 そのような状況である以上、アランも現状に色々と思うところがあったが……今はそのことよりも、ガリンダミア帝国軍をどうにかするといったことを考えるのが最優先なのも事実。

「分かってればいい。じゃあ、レオノーラ様を悲しませるような真似は、くれぐれもしないようにな」

 そう言い、男は去っていく。
 それを見送ると、アランはカロを取り出す。

「カロ、この戦いを制すれば、俺達がガリンダミア帝国に狙われるようなことはなくなる。そうである以上、お互いに頑張って戦おうな」
「ピ!」

 アランの言葉に頷くように、カロは返事をする。
 アランが何を言いたいのか……そして何を期待しているのか、十分に理解しているといった様子の声で。

「ここが敵……ビッシュにとっても最終防衛ラインのはずだ。そうである以上、ビッシュが何かをしてくる可能性は十分にある。それこそ、今まで見たことがないような心核使いが現れても、おかしくはない」

 今までアランが戦ってきた心核使いの中には、色々なモンスターに変身する者がいた。
 その中には、それこそ前世を持ち、映画、ゲーム、漫画、アニメといった諸々を知っているアランであっても、驚愕するしかないような存在も多数いた。
 そうである以上、敵の本拠地である帝都防衛戦においては、向こうも奥の手を隠しておけるといったような真似が出来るとは思えなかった。

「よし。……じゃあ、頼むな相棒」
「ピ!」

 アランの言葉に鳴き声を上げたカロは、次の瞬間ゼオンを召喚する。
 ファンタジー世界において、全高十八メートルもの人型機動兵器というのは当然ながら目立つ。
 レジスタンス連合が野営をしていた場所は帝都からそれなりに離れた場所にあったが……そんな距離からでも、ゼオンの存在は間違いなく目立っていた。
 事実、ゼオンのコックピットに乗り込んだアランが映像モニタで確認すると、そこには帝都の前で待ち受けているガリンダミア帝国軍が動揺している様子がしっかりと見えた。
 もちろん、ガリンダミア帝国軍の軍人にとっても、心核使いというのは見慣れた存在だ。
 ……実際には本来なら心核使いというのは非常に希少なのだが、ガリンダミア帝国軍においてはそれを例外とするかのように多数の心核使いが所属している。
 実際に今までアランが倒してきたガリンダミア帝国軍の心核使いはかなりの数になるのだが、それでも心核使いがいなくなるということはなかった。

「オークに、狼型、巨大なフクロウ、リザードマン、獅子、虎……カマキリ型のモンスターもいるな」

 映像モニタでガリンダミア帝国軍の心核使いをチェックするアラン。
 今まで多数の心核使いを倒してきたというのに、まるでそれが嘘であるかのように多数の心核使いが姿を現していた。
 アランが……より正確にはゼオンが召喚され、ガリンダミア帝国軍の兵士に怯えが見えたので、士気を回復するために心核使いたちを最前線に出したのだろう。
 今日起きるのが最終決戦である以上、ガリンダミア帝国の士気が下がるというのはどう考えても悪手だ。
 ガリンダミア帝国軍もそれを理解しているからこそ、こうして心核使いを大勢前に出したのだろう。
 とはいえ、それはガリンダミア帝国軍の有する心核使いの数を、レジスタンス連合に教えるということななる。
 なるのだが……悪手かと言えば、それは否。

「三十人近い心核使い……いくら何でも多すぎだろ。それにこの様子だと、まだ奥の手がありそうだし」

 ガリンダミア帝国の心核使いに、アランはうんざりとした様子で呟くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...