その乾いた青春は

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恋に落ちない殺人未遂

恋に落ちない殺人未遂〈下〉調査編

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 「事情聴取って一体何をするんだ?」

 俺は見るからに張り切っている雛に聞いてみた。

 「んー?そりゃ身辺調査だよ。3年3組の人に被害者のことを聞くの!」

 「でも、みんな部活だろ?」

 「甘いねー。まず、職員室に行って3年3組の担任の先生に仲良かった人とかをきくのだよ」

 な、なるほど。このバカが今日初めて頭が冴えていた。

 「そうと決まればレッツゴー!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら雛は階段をくだっていく。

 第三話:調査パートですか?

 職員室は学校の入り口付近にある。
 まぁ、これなら不審者が来ても大丈夫ということだろう。

 「……たのも」

 「ちょっと待て」

 俺はやはりバカな雛の首根っこをとっつかまえる。

 「お前はほんとにバカだな」

 俺が呆れかえっていると、左の方から話声が近づいて来た。

 「…でもやっぱり微積は難しくて」
 「いやいや一年生で微積ができるだけで相当」

 それは先生らしき人と話している1年3組の花崎さんだった。

 「あら?お二人とも、こんにちは。まだいらしたのですね」

 「あ、うん」

 俺はさっき会った気まずさからか、少し噛んでしまった。

 「あれー?野木先生?」

 花崎さんの隣の先生を見た雛が反応した。

 「えっと、僕、君の授業もってたっけ?」

 「いえいえ、でも話題ですよー。とても分かりやすい授業をする数学の先生がいるって」

 「そんな…」

 野木先生とやらは照れたようで、頭をポリポリかいた。

 「あ!そういえば野木先生は1年3組の担任でしたよね!事件の時の状況とかわかりますか?」

 「えっと、今日あったあの事故のことだね。実はその時、1年4組で永田先生と話し込んでいて、わからないんだ」

 「そうなんですか…」

 恐らく、永田先生とは1年4組の担任だろう。
 この学校では実験は2クラス合同で行うから不自然ではない。

 「あ、じゃあ、野木先生。3年3組の担任の先生を呼んできてもらえますかー?」

 「え、あ、わかったよ。じゃ、花崎。話はまた後でね」

 「はい、先生」

 なんだか俺らの都合で先生をパシリに使ったみたいだ。なんか悪いな。

 「そういえば、雛さんは探偵なんですよね」

 「え?うん、そーだよー?」

 「じゃあなんで、ミステリー研究会に入らないんですか?」

 「えっとねーそれはー………あっ」

 雛はそこから口を閉じてしまった。

 「え、どうしたんですか?」

 「言いたくない」

 「え」

 雛はそう言ったっきり、うつむいてしまった。

 「あ、あの、えっと、ごめんなさい。なにか聞いちゃいけなかったことみたいで…」

 「あ、いいんですよ、花崎さん。こいつ、いつもおかしいですから」

 「優くんは黙ってて」

 俺が花崎さんをフォローすると、雛はガバッと顔を上げて話に割り込んできた。

 「お待たせ~3年3組の担任の先生を呼んできたよ~。あれ?」

 とても嫌なタイミングで野木先生が戻ってきた。そしてとても壮大な勘違いをしてしまったらしい。とんでもない一言を言った。

 「修羅場?」

 どこがやねん。





 結局あのあと、雛は口数が一気に減り、調査は主に俺が進める形となってしまった。

 3年3組の先生から聞いた話だと。被害にあったのは『遠江 静』という3年生で、体育の見学中に鉢植えが頭に落ちてきたらしい。

 そして、その人と仲がよかった2人の人の名前と、部活も聞いたのだが、その二人がバスケ部とテニス部で2人に話を聞きに行くだけで、息が上がってしまった。

 聞いたことをまとめると、一人目は学級委員の萌木優香さん。

 「遠江さんはとても優しい真面目な人でしたよ。3年生ならともかく、1、2年の時は授業をサボる生徒も多かったのですが、真面目に取り組んでいましたし、わからないところを先生に聞きに行っていました。理系科目とかはしょっちゅうでしたね」

 二人目は同じ部活の大雪奈々さん。

 「でさぁー、あいつめっちゃ告られんの、まぁ後輩も先生も、同姓のやつまで告ってたかなー。でもあいつ最近調子悪くて体育とかいつも見学してたなー」

 そんな話を聞いている隣では、あいつはまだうつむいたままで、俺が「今日は終わりにしようか」というとただ頷いてそそくさと帰ってしまった。

 俺には何が起こっているのか全くわからなかった。
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