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6:樹上の誓いⅡ
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「わたしは任務や慰問活動で各国を巡ることがあります。勿論、ガルディア国内でも各所を巡りますし、王都でしたら教会本部も近いので、年に三度は寄ることになりますよ」
これが正しい答えなのかは分かりません。
正直いえば、わたしが近くに寄ったとて、王族たるエルム王子がそう易々会いに来られるとも考えられません。
きっとそう。エルム王子の考えている通り、身体の調子が戻れば会うことというのはあまりないのでしょう。こうしてお話をする機会など殆どないのでしょう。
ですが、やはりエルム王子とて、わたしが救うべきの一人なのです。
その苦が取り除けるというのなら、何かできることをし尽くすというのが、わたしの使命なのです。
「そうですね……、例えばですがこういうのは如何でしょう」
「……?」
「魔力感知というものです。わたしが王都に立ち寄った際……、いえ、いずれかの場所に赴く度でも。とにかく、辿り着く度に予め決めたリズムにて小刻みに聖力を放ちます。すると、殿下は近くにいればわたしの存在を感じることができるのです」
信号とでもいいましょうか。
これならば、何処かでという漠然としたものよりも、より多くの期待を胸にできると思うのですが……。
エルム王子は少し考えておりました。目を細め、珍しく無の表情で黙っておられました。
やがて花開くように微笑むと、楽しそうだねと。
「でも、いいや。それじゃ君が魔物に気が付かれて危ない目に合うかもしれないし」
「も、勿論任務の前には――」
そこもしっかりと対策を考えておりました。
勿論、任務の前には行いません。それでは転移魔法でなく、わざわざ馬車を駆使して移動する意味がなくなってしまいますから。
なので、この合図は任務の後。それも十分安全を配慮した、人気の少ない場所で行うのです。その方が、多くの魔力に紛れず伝わりますからね。
ところがそれを堂々披露する機会は与えられませんでした。自信満々に披露する気でありましたが、エルム王子は興味を無くしたように話を逸らします。
「ところで、まだ下りないの?」
「下りません」
「え~~」
不貞腐れたような声を出しながらもエルム王子は笑っています。
これが正しい答えなのかは分かりません。
正直いえば、わたしが近くに寄ったとて、王族たるエルム王子がそう易々会いに来られるとも考えられません。
きっとそう。エルム王子の考えている通り、身体の調子が戻れば会うことというのはあまりないのでしょう。こうしてお話をする機会など殆どないのでしょう。
ですが、やはりエルム王子とて、わたしが救うべきの一人なのです。
その苦が取り除けるというのなら、何かできることをし尽くすというのが、わたしの使命なのです。
「そうですね……、例えばですがこういうのは如何でしょう」
「……?」
「魔力感知というものです。わたしが王都に立ち寄った際……、いえ、いずれかの場所に赴く度でも。とにかく、辿り着く度に予め決めたリズムにて小刻みに聖力を放ちます。すると、殿下は近くにいればわたしの存在を感じることができるのです」
信号とでもいいましょうか。
これならば、何処かでという漠然としたものよりも、より多くの期待を胸にできると思うのですが……。
エルム王子は少し考えておりました。目を細め、珍しく無の表情で黙っておられました。
やがて花開くように微笑むと、楽しそうだねと。
「でも、いいや。それじゃ君が魔物に気が付かれて危ない目に合うかもしれないし」
「も、勿論任務の前には――」
そこもしっかりと対策を考えておりました。
勿論、任務の前には行いません。それでは転移魔法でなく、わざわざ馬車を駆使して移動する意味がなくなってしまいますから。
なので、この合図は任務の後。それも十分安全を配慮した、人気の少ない場所で行うのです。その方が、多くの魔力に紛れず伝わりますからね。
ところがそれを堂々披露する機会は与えられませんでした。自信満々に披露する気でありましたが、エルム王子は興味を無くしたように話を逸らします。
「ところで、まだ下りないの?」
「下りません」
「え~~」
不貞腐れたような声を出しながらもエルム王子は笑っています。
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