文字の大きさ
大
中
小
4 / 7
4. 略奪
それから、リーリエは頻繁に王宮へと出かけていくようになった。
アレクシスとの仲を深めているのだろう。
いずれ紹介されるまで、クリスタは歯噛みして待つことしかできない。
(絶対、絶対王太子も私のものにしてみせるわ)
そう思いはするものの、元々交流があったらしい美しい姉から、どうやって王太子の心を奪えばいいのだろうか。
最悪、奪えなくてもいい。この縁談がダメになりさえすれば。
せめて、醜聞となるようなリーリエの欠点が見つかれば……。
クリスタは、リーリエがいない間にこっそり部屋に忍び込み、姉の縁談を壊すきっかけになりそうなものを探した。
初めの数回は何も収穫がなかったが、たまたま手に取った紙の束に、クリスタの求めるものは有った。
「魅了の術……」
特定の異性を自分に夢中にさせる術。
リーリエが別の魔術を研究している中で、偶然発見したらしい。
ただ、おそらく特定の星並びの日にしか成功しないであろうことと、気の遠くなるような周期に一度しかないこと、その日が差し迫っており、危険な術のためその日が過ぎてから発表することがメモ書きとして残してあった。
これだ、これしかない。
幸い自分も魔力持ちである。まともに魔術を使ったことはないが、幸い丁寧に手順が記してあるため、これなら素人のクリスタにも行うことができるだろう。
「待ってて、お姉様」
王太子は呪いを無効化する魔導具を身に着けているらしいが、ダメで元々だ。
何もやらないよりずっといい。
そうしてクリスタは、魅了の術を成功させたのだった。
◆◆◆
アレクシスは優しく、良い恋人だった。
顔を合わせれば心の底から嬉しそうな顔をし、どんな我儘も聞いてくれた。
ただ、不満がないわけではない。
「僕は本当はずっと君と一緒になりたかったんだ。隣国のフランシーヌ姫とは殆ど顔も合わせたこともなかったし……。だから、こうして君と一緒にいられて本当に嬉しいんだよ」
「私もよ、アレクシス様」
「ああ――愛してるよ。本当に、心の底から。あの時から、ずっと君に心奪われたままなんだ」
「あの時?」
「初めてあった時のことだよ。ほら、王宮の夜会で……。呪い無効のブローチが上手く動作しなくて、必死に我慢していた僕に気づいて、そっと解呪してくれたよね。美しくて、本当に女神のようだった」
「アレクシス様……」
こうして、存在しない思い出を語るのだ。
おそらくはリーリエとの出来事なのだろう。
この様子から見ると、王太子は心底姉に惚れていたようだ。
それも今は、クリスタのものだが。
「君のためならなんでもするよ、僕にどうして欲しいか教えて欲しいな」
「ありがとうございます、アレクシス様」
クリスタはアレクシスに微笑んだ。
整ってはいるが、華のある顔立ちではない。
キラキラと光る金の瞳は美しいが、それは眉目秀麗な第二王子も共通して持っているものだった。
(どうせなら、第二王子のほうが良かったかも)
王宮に出入りするようになったことで、第二王子のディートリヒとも頻繁に顔を合わせるようになった。
噂で聞いていた通りの美しい王子を初めて見かけた時、クリスタは思わず目を見開いた。
サラサラとした銀の髪に黄金の瞳を持つディートリヒは、絵本から出てきたような理想の王子様そのものだった。
それ以来、なんとかディートリヒに近づこうとしていてはいるものの、タイミングが合わないのかまだ直接言葉を交わすことはできないでいる。
魅了の術はもう使えないが、近づきさえすれば、ディートリヒと仲良くなることもきっとできる筈だ。
一方リーリエの方はというと、あれから部屋に引きこもって殆ど出てこなくなってしまった。
悔しがる顔をクリスタに見られたくないのだろう。
公爵はそもそもリーリエにはさほど興味はなさそうだし、クリスタの母はリーリエを目の敵にしていたので、これを機にリーリエを公爵家から追い出そうと考えているようだ。
(お姉様には、そばにいて私を支えて貰わないといけないから、追い出すのは阻止しないとな)
クリスタは幸せだった。
アレクシスとの仲を深めているのだろう。
いずれ紹介されるまで、クリスタは歯噛みして待つことしかできない。
(絶対、絶対王太子も私のものにしてみせるわ)
そう思いはするものの、元々交流があったらしい美しい姉から、どうやって王太子の心を奪えばいいのだろうか。
最悪、奪えなくてもいい。この縁談がダメになりさえすれば。
せめて、醜聞となるようなリーリエの欠点が見つかれば……。
クリスタは、リーリエがいない間にこっそり部屋に忍び込み、姉の縁談を壊すきっかけになりそうなものを探した。
初めの数回は何も収穫がなかったが、たまたま手に取った紙の束に、クリスタの求めるものは有った。
「魅了の術……」
特定の異性を自分に夢中にさせる術。
リーリエが別の魔術を研究している中で、偶然発見したらしい。
ただ、おそらく特定の星並びの日にしか成功しないであろうことと、気の遠くなるような周期に一度しかないこと、その日が差し迫っており、危険な術のためその日が過ぎてから発表することがメモ書きとして残してあった。
これだ、これしかない。
幸い自分も魔力持ちである。まともに魔術を使ったことはないが、幸い丁寧に手順が記してあるため、これなら素人のクリスタにも行うことができるだろう。
「待ってて、お姉様」
王太子は呪いを無効化する魔導具を身に着けているらしいが、ダメで元々だ。
何もやらないよりずっといい。
そうしてクリスタは、魅了の術を成功させたのだった。
◆◆◆
アレクシスは優しく、良い恋人だった。
顔を合わせれば心の底から嬉しそうな顔をし、どんな我儘も聞いてくれた。
ただ、不満がないわけではない。
「僕は本当はずっと君と一緒になりたかったんだ。隣国のフランシーヌ姫とは殆ど顔も合わせたこともなかったし……。だから、こうして君と一緒にいられて本当に嬉しいんだよ」
「私もよ、アレクシス様」
「ああ――愛してるよ。本当に、心の底から。あの時から、ずっと君に心奪われたままなんだ」
「あの時?」
「初めてあった時のことだよ。ほら、王宮の夜会で……。呪い無効のブローチが上手く動作しなくて、必死に我慢していた僕に気づいて、そっと解呪してくれたよね。美しくて、本当に女神のようだった」
「アレクシス様……」
こうして、存在しない思い出を語るのだ。
おそらくはリーリエとの出来事なのだろう。
この様子から見ると、王太子は心底姉に惚れていたようだ。
それも今は、クリスタのものだが。
「君のためならなんでもするよ、僕にどうして欲しいか教えて欲しいな」
「ありがとうございます、アレクシス様」
クリスタはアレクシスに微笑んだ。
整ってはいるが、華のある顔立ちではない。
キラキラと光る金の瞳は美しいが、それは眉目秀麗な第二王子も共通して持っているものだった。
(どうせなら、第二王子のほうが良かったかも)
王宮に出入りするようになったことで、第二王子のディートリヒとも頻繁に顔を合わせるようになった。
噂で聞いていた通りの美しい王子を初めて見かけた時、クリスタは思わず目を見開いた。
サラサラとした銀の髪に黄金の瞳を持つディートリヒは、絵本から出てきたような理想の王子様そのものだった。
それ以来、なんとかディートリヒに近づこうとしていてはいるものの、タイミングが合わないのかまだ直接言葉を交わすことはできないでいる。
魅了の術はもう使えないが、近づきさえすれば、ディートリヒと仲良くなることもきっとできる筈だ。
一方リーリエの方はというと、あれから部屋に引きこもって殆ど出てこなくなってしまった。
悔しがる顔をクリスタに見られたくないのだろう。
公爵はそもそもリーリエにはさほど興味はなさそうだし、クリスタの母はリーリエを目の敵にしていたので、これを機にリーリエを公爵家から追い出そうと考えているようだ。
(お姉様には、そばにいて私を支えて貰わないといけないから、追い出すのは阻止しないとな)
クリスタは幸せだった。
感想 0
あなたにおすすめの小説
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れんレオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
悪役令嬢に仕立て上げて婚約破棄したあなたへ、最大級のざまぁを贈ります
かきんとう「エレノア・ヴァレンティア公爵令嬢。貴様との婚約を、この場で破棄する!」
王宮の大広間に、第一王子レオンハルト殿下の高らかな声が響き渡った。
祝宴のために集まっていた貴族たちがざわめき、数百の視線が一斉に私へと突き刺さる。
……ああ、ついに来たのね。
私は静かに目を伏せた。
この瞬間が訪れることを、何度も夢で見てきた。いや、夢というより——予感と言った方が正しい。
婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。
エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。
──そして舞踏会の夜。
王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。
ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。
王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。
王国は“内乱寸前”へと傾いていく。
そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。
「僕と結婚してほしい。
僕以外が王になれば、この国は沈む」
冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。
「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」
エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。
それからの2人は──?
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。