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24.いつもと違う真紀先輩
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——翌朝。
寝坊してしまった私——結菜は、食事を抜いて飛び出した甲斐あって、なんとか始業までに教室に滑り込んだ。
「良かった。なんとか間に合った」
思わず私が机に突っ伏していると、そこへ明美がやってくる。
「珍しいね。結菜がギリギリの時間に来るなんて」
「うん。昨日ちょっと夜更かししちゃって」
「そっか……それよりさ、今朝、面白いもの見たよ」
「面白いもの?」
「結菜は今日も部活動あるよね?」
「うん、あるよ」
「だったら、部室で見られるよ」
「何が?」
「面白いものだよ……いや、面白い人か」
「奇術部員はみんな面白いよ」
「そうじゃなくて……まあいいや。私はあえて言わないでおくよ」
「……変な明美」
そして放課後になり、私は明美から聞いた言葉を思い出しながら奇術部室に向かった。
「明美が変なこと言ってたけど……なんだろう」
でも奇術部員が変なのはいつものことだし、私はあまり気にせず部室のドアを開ける。
すると——
「こんにちは……」
そこには、妙にキラキラした真紀先輩の姿があった。
キラキラと言っても、発光しているわけじゃなくて——今日の真紀先輩はなんだか髪の毛がサラサラで、制服もきっちりと着こなしているから、雰囲気がいつもと違って見えた。
その変貌ぶりに私が驚く中、真紀先輩は顔をぱあっと輝かせてこちらにやってくる。
「結菜!」
「へ?」
「会いたかった」
「せ、先輩!? どうしたんですか? その頭」
「結菜は嫌いか? この髪型」
「そんなことはないですけど……なんだか雰囲気が変わりましたね」
「そうかな? 外側は変わっても、俺が結菜を好きなことは変わらないよ」
「な、な、な、ななな」
「どうしたの? 結菜、真っ赤な顔して」
「せ、先輩? 今なんて……」
「今更だろう? 俺が結菜を好きなのは、生まれる前から決まっていたことだから」
「えっと……本当に真紀先輩ですか? 大丈夫ですか? 頭でも打ったんですか?」
「冷たいなぁ、結菜は。そんなところも好きだけど」
「はい?」
何があったのだろうか。先輩のいつもと違う様子に、若干ひいていると、長谷部くんがやってくる。
「ちょっと先輩、アピールはいいけど、三木がドン引きしてますよ。何かあったんですか?」
「ドン引き? どうして? 俺は思っているままを伝えているだけだけど」
「それが先輩らしくないって言ってるんですよ」
「俺らしくない? じゃあ、俺ってどういう人間なの?」
「え?」
「他の誰かに取られるのを見ているだけでいいなんて思わないけど?」
先輩の言葉に、何がなんだかわからず狼狽えていると、部室のドアがガラガラと開く音がする。
「こんにちは」
「あ、大迫くん!」
「どうしたの? みんな変な顔して」
「いや、あのね……ちょっと先輩の様子がいつもと違ってて……」
「先輩?」
「真紀先輩だよ」
私が大迫くんに告げると、大迫くんはふと周囲を見回して怪訝な顔をする。
「この教室、なんだか毒々しい空気が漂ってるね……」
「どういうこと?」
大迫くんがいつになく険しい顔をする中、そんな大迫くんに真紀先輩はゆっくりと詰め寄る。
「この際だから言っておくけど、結菜は俺のだから。横取りするなよ」
真紀先輩の言葉にさっと青ざめた私は、思わずツッコミを入れる。
「は? 先輩、何言ってるんですか! 私は誰の物でもないです!」
「真紀先輩、さすがに今の発言はよくないですよ」
呆れた顔で指摘する長谷部くんに、真紀先輩はムッとした顔をする。
「自分の物を自分の物と言って何が悪いの?」
「ダメだ、この人……話が通じない」
私が頭を抱えていると、大迫くんも諌めるように口を挟む。
「先輩、結菜が困ってますよ」
「なんだよ、邪魔するなよ大迫くん」
「邪魔っていうか、いつも優しくてカッコいい先輩が変ですよ」
「なんだと?」
「ちょっと、喧嘩はダメだよ!」
喧嘩腰の真紀先輩を止めようと割り込むと、真紀先輩は口をぷうっと膨らませた。
「大迫くんが変なことを言うから」
「変なのは真紀先輩ですよ」
さすがの大迫くんも困惑する中、藤間先輩がそんな大迫くんにそっと耳打ちする。
「ちょっと大迫様、よろしいですか?」
「え?」
そして藤間先輩は大迫くんに何か告げたあと、教室を出て行ったのだった。
***
「大迫様……遅いですね」
十一月中旬にもなると夜になるのは早く、すでに赤焼けは暗い色に変わろうとしていた。
大迫啓太を屋上に呼び出した藤間保は、肌寒い外気に十五分ほど晒されていたが、啓太はいっこうに現れず。
そろそろ帰ろうかと考えていたところ、ようやく階下から足音が聞こえて安堵の息を吐く。
だが——
「待たせたね」
現れたのは、なぜか奇術部部長の紺野真紀だった。
「? え……部長?」
「藤間くん、大迫くんと何を話すつもりだったんだ? もしかして俺のこと?」
「どうしてあなたがここに」
「大迫くんなら、来ないよ。先生に仕事を頼まれてたから」
「……なら、私はあなたに用はありませんので、失礼しま——」
「藤間くんは魔法使いなんだよね?」
真紀の言葉に、保は大きく見開いた。
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