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33.会いたくないのに
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「う……ん……」
私——結菜が目を覚ました時、最初に目に入ったのは暗い天井だった。
どういう状況なのか考えながら横を向くと、パイプ椅子に座る大迫くんの姿があった。
「気が付いた?」
「あれ? ここは……」
「保健室だよ」
身を起こすと、確かにそこは学校の保健室で——窓の外はすっかり夜色に染まっていた。
「えっと、確か私……森の中で倒れたんだよね? みんなは?」
「保健室の外にいるよ。邪魔だからって、俺しか入れてもらえなかったんだ」
「そっか……って、学園祭は?」
「もう終わったよ」
「え! うそ……終わっちゃったの? まだどこも見てなかったのに……それにご飯だって」
私のお腹がぎゅうっと鳴って、大迫くんが破顔した。
「ふふ、食べるものなら、いくつか買っておいたよ」
「わ、りんご飴に焼きそばにハットク?」
手渡されたレジ袋にはたくさんの食べ物が入っていた。
私の胸がじんわりと胸が温かくなる中、大迫くんは優しい笑みを浮かべた。
「うん。でも帰ったら夜ご飯もあるだろうし、食べすぎないほうがいいかも」
「大丈夫。今日は親がいないから、これを夜ご飯にするよ。ありがとう」
私が大迫くんに笑顔を返していると、ふいに保健室のドアがガラガラと開いた。
「結菜さん、目が覚めたみたいですね」
藤間先輩だった。
悪い魔法使いから助けてくれた藤間先輩だけど、大した怪我はなかったようで。
いつも通りの様子を見て、ホッとした私は、慌てて頭を下げる。
「藤間先輩、あの……ありがとうございました」
「なんのことですか?」
「魔法使いから守ってくれたじゃないですか」
「ああ、それは当然のことですよ。なぜなら結菜さんは大迫様の——」
藤間先輩が言いかけたその時、さらに後ろから真紀先輩がひょっこりと頭をのぞかせた。
「結菜、大丈夫か?」
「真紀先輩! はい、もう大丈夫です」
「じゃあ、帰るか」
真紀先輩がやれやれといった雰囲気で息を吐く傍ら、大迫くんが挙手をする。
「結菜は俺が送っていくよ」
その言葉に、いつの間にか腕を組んで立っていた長谷部くんが頷く。
「そのほうがよさそうだな。また変なのが現れたら大変だろうし」
「長谷部くん?」
「……いや、変なマジシャンが現れたら困るだろ?」
そう言い直した長谷部くんは相変わらず棒読みで、私は苦笑してしまう。
すると、隣で考え込んでいた真紀先輩は、どこか不服そうな顔をしながらも大迫くんの肩をポンと叩いた。
「そうだな。俺は生徒会長に用があるから、大迫くんが結菜を送ってやってくれ」
そう言って真紀先輩が保健室をあとにする中、入れ違いでよく知る顔が現れる。
「あ! 見つけた大迫くんと結菜」
「明美?」
「ちょっとー、学園祭サボらせてあげたんだから、片付けくらいして帰りなよー」
「ごめんごめん……すぐ行くから」
「結菜はいいよ、倒れたんでしょ? また何かあったら大変だし、先帰りな」
「え、でも……」
私だけ何もせずに帰るなんて気が引ける——と思っていると、大迫くんはそれを察したように口を開く。
「俺一人でも大丈夫だから、ちょっとだけクラスの片付け手伝ってくるよ」
「わかった。じゃあ、ゆっくり帰るね」
「じゃあ、行ってくる」
「うん。一緒に片付けできなくてごめんね」
私が手を合わせて謝ると、大迫くんは「任してよ」と意気込んで去っていった。
***
「もう倒れたり……しないよね?」
帰り道の古い街並み。
背の高い街灯がぼんやりと照らす夜空に向かって、私は不安の言葉を吐いた。
魔法使いの男の子に攻撃された時、なんだか体が熱くなって、気づくと倒れてしまったのだけど……いくら考えても、理由はわからなかった。
「結局、あれはなんだったんだろう。大迫くんは、魔法を跳ね返したって言ってたけど……よくわからないな。……もしかして、私も魔法使い? ……なんちゃって。そんなこと、あるわけないよね」
なんて、自嘲していると——そんな時、
「帰りは一人なんだね」
向かいの暗がりから、ゆっくりと街灯の下に人影が現れる。
「……あなたはさっきの!」
文化祭の森の中で出会った、悪い魔法使いの男の子だった。
一日にそう何度も遭遇しないだろうと思っていたのに、まさか二度も会うなんて。
私が警戒して後ずさる中、男の子は笑って接近してくる。
「ねぇ、面白い君、さっきはいったい何をしたの?」
「え、あ、あの……」
馴れ馴れしく喋る男の子に、どう反応していいのかわからなくて、私がどもっていると——
ふいに、後ろから馴染みの声が聞こえる。
「おい、あんた」
「は、長谷部くん?」
気づくと、長谷部くんがすぐ後ろで怖い顔をして立っていた。
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