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2章 2度目の人生の目標

24話 止まらない暴走

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「ア、アクア様がやられた・・・」

「だから言ったんだ!早く撤退すべきだって!なのに、あのクソガキは・・・!!」

「んな事言ってる場合か!早く逃げるぞ!」

「・・・いや、もう逃げられない。俺達は」

「はぁ!?何言ってんだよ!相手は油断している!今のうちに!!」

「自分の体を見ろ!!何が巻き付いている!!」

 主人を失った敵兵。彼らの体にまとわりついていたのは、主人を殺した影のだった。

「ま、待ってくれ!!助け────」

 命乞いを言い切る前に影の手は、敵兵を締め付け、熟れた果実のように弾けさせる。1人、2人と次々に破裂していき、あたりは血の池と化す。

 ものの一瞬で、残っていた24人の敵兵達は挽肉と血に変化。バール軍の防衛戦は成功を収めたのである。

 収めたのだが────。

「・・・・・・」

「あの・・・アル?」

「・・・ス」

「え?」

「コロス!!」

 感情に任せて、闇の魔法を使った結果、アルの心は暴走。理性を失ってしまっていた。今のアルは、目の前にいる敵を殲滅するだけのモンスターと化したのだ。

「うわぁ!オイラだよ!オイラ!親友の顔すら忘れちまったのかよ!!」

「ヨクモ・・・ヨクモ、カルー将軍ヲォォォォォォ!!」

「行くなゴップ!親友に殺されたくなかったならな!!」

 闇の魔法を熟知している魔族の兵士達は、すぐにアルから距離を取る。

「初めて闇の魔法を使うと、たまにこうなるヤツがいるんだ。俺の甥っ子もそうだった」

「じゃあ、どうすれば元に戻るの!?」

「ぶん殴って気絶させるしかない。それしか方法がないんだが・・・」

「魔力量が多すぎて、シャドウ・ハンドがかなり厄介だ。捕まったら、敵の二の舞になるぞ!!」

 熟練の兵士ですら、近づくのを躊躇するアルの状態。しかし、このままにしておいたら、街が破壊される。どのみち止めなければならない。

「凄い魔力を感じたと思ったら・・・なぁんだ、そういう事だったのかぁ。コツを掴んだみたいだね、アル」

 そこに現れたのは、最高戦力であり、バール領最高権力者のバール。彼女は、兵士達を退けて、アルの前に出る。

「そこのゴブリン君、何があったのかな?」

「カルー将軍が、アルを庇って死んじゃいました・・・」

「なるほどぉ~把握把握。これはまた、惜しい戦力を失った。弔いはしっかりとしよう。その前に、アルを止めなきゃね」

「でも、バール様。一体どうやって・・・」

「はぁ?そんなの簡単だろう?殴れば良いのさ・・・闇より出し黒き手よ、冷たいその手で包み込め『シャドウ・ハンド』」

 バールが使ったのは、アルが現在使用している魔法。しかし、数えきれないほど作っているアルとは違い、バールは巨大な影の手を作り、握り拳を作らせた。

「ひっさ~つ!シャドウ・パーンチ!!」

 巨大な影の拳は、アルへと真っ直ぐ飛んでいき、アルを思い切り殴り飛ばす。

 しっかり気絶したようで、アルのシャドウ・ハンドは消えていた。

「よーし!終わり!それじゃ、後片付けと行こうかぁ!」

 人員と壁共に甚大な被害を受けているにも関わらず、バールはとても嬉しそうだったと、兵士達は後に語った。
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