上 下
64 / 184
4章 魔王の肩書きを持つ少女

62話 まずは、新参者から

しおりを挟む
「お前には、これから1週間、妾の身を守りながら、裏切り者は誰なのかを見つけてもらう」

 裏切り者になった次は裏切り者探しか。なんだか面白い人生を歩んでいるなと自分でも思ってしまう。

「でも、どうするんです?もしかしたら僕がその暗殺者かもしれませんよ?バール様の通常運転なのももしかしたら嘘かも」

「そうなのか!?」

「そうかもしれないって話です。僕はしっかりと魔王軍に忠誠を誓ってますよ。だから、僕以外には言わない方が良いと思いますよ。魔王様が言う暗殺者がビビッて引っ込んじゃうだろうし」

「ううむ・・・それはマズイな・・・今週中に突き止めて、エンデ王国に進攻したいのに・・・」

「やっぱり、進攻を渋っていたのは、新兵器とかではなく、暗殺者の為だったんですね」

「当たり前だ!!魔王が、他種族の新兵器なんかにビビッてたまるか!!」

 それを聞けただけで良かった。でも、その事情を皆に説明できないのは、魔王様からしてももどかしいものなのだろう。

「というわけで、これから1週間、頼むぞ!!」

「任せてください!しっかりと見つけますよ!!」

「・・・と言いたい所なのだが、お前の先程の発言で少しお前にも不信感を抱いてしまった。これは事が済むまでどうも払拭する事が出来ない。なので、こうする」

「・・・え?」

「我が合図があるまで、その場で待機せよ。『ランドマイン』」

 体のあちこちに光る丸い点が現れたかと思いきや、すぐに消え、目立たなくなった。今のは一体なんなのだろうか。

「お前に地雷を仕込んだ」

「はぁ!?地雷!?人の体に!?そんな事できるんですか!?ていうか何やってるんですか!!」

「落ち着け。妾が合図を出さなければ、爆発はしない。お前がもし、妾に背くような行動を行った場合・・・」

「爆発させる・・・つまり、爆破されたくなければ、裏切るなって事ですね」

「・・・すまないな」

 あんな事言わなければ良かった。地雷を仕掛けられたのは僕の方に責任がある。それと、物理的な干渉ではなくて、合図で爆発するのは地雷とは呼べないのでは?

「ここでの会話も、誰にも話さないように分かったか?」

「はい・・・」

「では、失礼する・・・頼んだぞ」

 魔王様の体が、霞のように消えていく。消える際に言い放った最後の言葉は、とてもか細く、不安を募らせている声だった。

 魔王様が消え、残されたのは僕のみ。周りにはだれもおらず、聞かれた心配もない。

 さて、魔王様直々に2度目の任務が与えられたわけだが、まず最初は誰をマークしようか・・・。

「・・・無難にスネイクさんかな?」

 裏切りと言ったら、彼しか出てこない。第一印象が原因かもしれない。 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:67,763pt お気に入り:23,358

オススメネット小説

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:15

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:208,530pt お気に入り:12,428

【完結】待ってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,598pt お気に入り:44

気弱令息が婚約破棄されていたから結婚してみた。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:189

処理中です...