魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います

5章 望まれていない勇者

85話 嫉妬によるイジメ

「良し！朝の訓練終わり！朝食を食べた後、開始だ！！」

「「「ありがとうございます！ヴァネス教官！！」」」

　訓練を終える事によって、ようやく朝食へとありつける。アタシは今にも倒れそうな体で食堂まで向かう。

「チッ・・・さっさと以っていきな汚らわしい」

　食堂の中年女性に文句を言われながら、パンとスープの乗ったトレイを受け取り、席に座る。そして、口に運ぼうとした瞬間、パンは宙を舞い、スープは床にこぼれた。

「半端者が飯なんて食ってんじゃねぇよ・・・そこらへんの草でも食っとけや」

　蹴り飛ばしたのは、先ほどボコボコにしたアビルダと取り巻き達。目は憎悪に満ちており、アタシを憎んでいるのが手に取るように分かる。

　取り巻きの蹴りが顎にクリーンヒット。後頭部を打つ形で椅子から落下する。

「おい、立てよ。立てよ！！ゴミムシが！！良くも俺様をコケにしてくれたなぁ！！あぁ！？」

　立てと指示できる割には立たせる気の無い蹴りが続く。立とうとしても、立てる分の体力と栄養がもう無い事ぐらい、痩せ具合から察してほしい。

「チッ・・・つまんねぇ。こんなのがニグン神が地上に降臨させた勇者なのかよ・・・汚い上に弱いだなんて最悪だな」

「やっぱり、アビルダ様が勇者になるべきだったんですよ～！！それなのに！この穢れがそれを奪った！！」

「忌み子め！！恥を知れ！！」

　食堂のど真ん中で行われる一方的な暴力。しかし、誰も止めようとはしない。ルイン家が怖いから？違う。見ていて楽しいからだ。

　アタシが嬲られる事は、彼らにとって娯楽なのだ。娯楽をわざわざ止める者がいるだろうか？

　汚い笑い声が聞こえてくる。アタシの事を散々汚いだの言ってくるくせに自分らの醜さに気づいていないみたいだ。

　できる事ならいっその事死にたい。けれど、死ねない。アタシには魔王とかいう奴を倒す使命があるらしいから死ねない。

　そのせいで、死ぬ事が許されない。何度も飛び降りたが、怪我どころか痛みすら感じない。

　神様は自殺を許してくれないと5度目の飛び降りで気がついた。だから、仕方なく別に憎んでもいない魔王を倒すことにした。

「フゥ・・・すっきりした。それじゃあな！半端者！！昼の訓練楽しみにしてるぜー！！」

　言うまでも無いかもしれないが、その日の昼の訓練は滅茶苦茶。怪我と体力不足でロクに動けないアタシは、皆に技を打ち込まれ続けた。

「じゃあな！死ぬなよ！勇者様！！」

「「「「ギャハハハハハハ！！！」」」」

「・・・・・・死にたい」

　痣だらけで、肋骨も腕も心も折れた体は、朽ちる事なく、アタシを生かした。まるで死ぬなと言うように。