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「イアン様は?」
「あ、俺?」
バロンがチラリとイアンを見てそう口にする。そう言えば体きつかった、くらいにしか話してないなぁと、それぞれ席に戻ったのを見届けてから口を開く。
「まぁ皆と似た様なもんだよ。とにかく離してくれなくってさぁ。死ぬかと思った」
「死ぬほど、ですかぁ?それはそれで怖いですねぇ」
「怖いなんてもんじゃなかった!気持ち良かったけど流石にやり過ぎっていうか」
あっけらかんと話すイアンに皆が頬を赤らめる。それぞれのその時を思い出しているのだろう。バロンは震えているが。
あまりに皆の話が強烈で、イアンは意外とアルフレートは真面だったなぁと思いながら掻い摘んで話しをした。奴隷の手枷をつけられていた事、そのまま襲われた事、寝てる間も突っ込まれていた事、扉の隙間から覗かれていたり、意識が朦朧としている間に風呂も食事もトイレも全てやってくれていた事、やられ過ぎて衰弱した事。泣いても謝っても許されず二週間近くの記憶が朧げな事、など。
「最終的には和解してデートとかしまくったら可愛くなっちゃって。これがギャップ萌えかなって」
「ぎゃ……?可愛い要素が皆無なのですが……」
「どれい……怖い」
「トイレってそんな……いくら何でも笑えなくない?」
「そもそも衰弱するほどって一体どれだけなのぉ?」
「イアン様は、だ、大丈夫なんですか?」
心なしか皆の顔が青ざめている。イアンは心配してくれてるなぁなんて呑気に笑って、口を開く。
「そもそもさ、俺が塩対応してたから傷つけちゃってたみたいで。悪い事したなって思ったし、そんなだったのに好きでいてくれるってすごいじゃん?そう思うと俺もなんか大事にしたくなっちゃったっていうか」
照れる、と言いつつ笑うイアンに他の面々は王城で初めて顔合わせをした時の事を思い浮かべた。傷つく?そんな人間じゃないだろ、と思ったが誰も口にはしなかった。イアンが照れ照れ笑っているのだ。それでいいのだろう。
その後は結局、好きというフィルターがかかっている為、各自おずおずとイアンに続いて惚気だす。イアンが惜しげもなくそういう話を披露するので皆触発されたらしい。バロンですら言葉少なに惚気てしまった。元々尊敬していて好きな人なのだ。恐怖はあれど良いところも沢山知っているし、と。なんだかイアンに乗せられたような形で皆の空気が悲愴なところからほわほわした空気になってくる。
皆一足先に学園復帰しているが、イアンも明日からまた学園で学生らしい生活に戻る。英雄扱いされるらしいのである意味疲れそうだが、主人公に会えるので色々と気になる事は全て聞くつもりだ。
「まぁでも、何にしても呪いとけて良かった!」
そろそろ迎えが来る頃、イアンの言ったそのセリフに皆が泣きそうな顔で笑う。結局好きな人が自分を見てくれるようになったのだから、色々思うところはあれど皆死ぬほど安堵しているのだ。
どれくらいそうして惚気ていただろうか。従者が迎えがきたと丁寧に知らせに来た。相変わらず気配がなく尊敬する仕事ぶりだ。
皆が軽い挨拶をしてサッと立ち上がるとゾロゾロとお出迎えの婚約者達がやってくる。ここはウォーターズ邸なのに何故かハロルドまで参上して意味が分からないが、ドミニクの顔がパッと煌めいたので良しとしよう。
「アル!わざわざありがとな」
「あぁ。来い」
両手を広げるアルフレートを見て、まさか俺にその腕に飛び込めと言っているのかと頬が引きつる。そもそも家から迎えの馬車が来るのだから迎えなど要らぬと何度も言ったのに頑として譲らなかったアルフレートである。これもまた塩対応した弊害かと思うと罪悪感がすごい。
無表情に両腕の広げるその姿に一瞬戸惑ったが、ええいままよ、とその腕に飛び込んでやる。ギュッと瞬間的に強く抱きしめられ苦笑しながら見上げると、驚いた様にイアンを穴が開くほど見つめてくるので照れてしまう。
「なんだよ。アルが来いって言ったんだろ」
「あぁ。でも、人前では嫌かと思った」
「嫌だよ……あ、違う違う。嫌っていうか恥ずかしいんだよ。こういう事が嫌なわけじゃない」
目に見えて絶望するアルフレートに慌てて言い直す。この男には羞恥心と言うものが皆無なので、皆の前でイチャイチャすることに戸惑いが無い。デートの時に何度羞恥心が爆発しそうになったことか。
しかしこれもイアンが変な態度を取り続けた為、アルフレートが確かめる様にわざと行っているのだ。そう思うと強く拒絶も出来ない。嫌なわけでもないし、と自身の羞恥心を心の中でぶん殴ってなるべくアルフレートが安心できるような対応を取っている。ホッと息を吐いて愛おしそうに額に口付けてくるアルフレートの耳元に首を伸ばして囁く。
「でもエッチは人前じゃ嫌だからな。あんな姿アル以外に見られたくない」
「イアン……!」
これはもう耳にタコが出来る程言っておかないといけない。人前でイチャイチャする度、その手が尻に触れて揉む動作をする度、言い聞かせている。
感動したように更にぎゅうぎゅう抱きしめてくるアルフレートは、直ぐに言った事を忘れて人前で尻を揉もうとするのだ。現に今も尻を掴んできた為そうやって牽制している。
ちゅっちゅと唇を顔中に浴びせてくるアルフレートに呆れたような笑みを浮かべつつ、まんざらでもないイアンは、他の面々をさり気なく観察しつつ全員同じだなぁと呑気に笑った。
「あ、俺?」
バロンがチラリとイアンを見てそう口にする。そう言えば体きつかった、くらいにしか話してないなぁと、それぞれ席に戻ったのを見届けてから口を開く。
「まぁ皆と似た様なもんだよ。とにかく離してくれなくってさぁ。死ぬかと思った」
「死ぬほど、ですかぁ?それはそれで怖いですねぇ」
「怖いなんてもんじゃなかった!気持ち良かったけど流石にやり過ぎっていうか」
あっけらかんと話すイアンに皆が頬を赤らめる。それぞれのその時を思い出しているのだろう。バロンは震えているが。
あまりに皆の話が強烈で、イアンは意外とアルフレートは真面だったなぁと思いながら掻い摘んで話しをした。奴隷の手枷をつけられていた事、そのまま襲われた事、寝てる間も突っ込まれていた事、扉の隙間から覗かれていたり、意識が朦朧としている間に風呂も食事もトイレも全てやってくれていた事、やられ過ぎて衰弱した事。泣いても謝っても許されず二週間近くの記憶が朧げな事、など。
「最終的には和解してデートとかしまくったら可愛くなっちゃって。これがギャップ萌えかなって」
「ぎゃ……?可愛い要素が皆無なのですが……」
「どれい……怖い」
「トイレってそんな……いくら何でも笑えなくない?」
「そもそも衰弱するほどって一体どれだけなのぉ?」
「イアン様は、だ、大丈夫なんですか?」
心なしか皆の顔が青ざめている。イアンは心配してくれてるなぁなんて呑気に笑って、口を開く。
「そもそもさ、俺が塩対応してたから傷つけちゃってたみたいで。悪い事したなって思ったし、そんなだったのに好きでいてくれるってすごいじゃん?そう思うと俺もなんか大事にしたくなっちゃったっていうか」
照れる、と言いつつ笑うイアンに他の面々は王城で初めて顔合わせをした時の事を思い浮かべた。傷つく?そんな人間じゃないだろ、と思ったが誰も口にはしなかった。イアンが照れ照れ笑っているのだ。それでいいのだろう。
その後は結局、好きというフィルターがかかっている為、各自おずおずとイアンに続いて惚気だす。イアンが惜しげもなくそういう話を披露するので皆触発されたらしい。バロンですら言葉少なに惚気てしまった。元々尊敬していて好きな人なのだ。恐怖はあれど良いところも沢山知っているし、と。なんだかイアンに乗せられたような形で皆の空気が悲愴なところからほわほわした空気になってくる。
皆一足先に学園復帰しているが、イアンも明日からまた学園で学生らしい生活に戻る。英雄扱いされるらしいのである意味疲れそうだが、主人公に会えるので色々と気になる事は全て聞くつもりだ。
「まぁでも、何にしても呪いとけて良かった!」
そろそろ迎えが来る頃、イアンの言ったそのセリフに皆が泣きそうな顔で笑う。結局好きな人が自分を見てくれるようになったのだから、色々思うところはあれど皆死ぬほど安堵しているのだ。
どれくらいそうして惚気ていただろうか。従者が迎えがきたと丁寧に知らせに来た。相変わらず気配がなく尊敬する仕事ぶりだ。
皆が軽い挨拶をしてサッと立ち上がるとゾロゾロとお出迎えの婚約者達がやってくる。ここはウォーターズ邸なのに何故かハロルドまで参上して意味が分からないが、ドミニクの顔がパッと煌めいたので良しとしよう。
「アル!わざわざありがとな」
「あぁ。来い」
両手を広げるアルフレートを見て、まさか俺にその腕に飛び込めと言っているのかと頬が引きつる。そもそも家から迎えの馬車が来るのだから迎えなど要らぬと何度も言ったのに頑として譲らなかったアルフレートである。これもまた塩対応した弊害かと思うと罪悪感がすごい。
無表情に両腕の広げるその姿に一瞬戸惑ったが、ええいままよ、とその腕に飛び込んでやる。ギュッと瞬間的に強く抱きしめられ苦笑しながら見上げると、驚いた様にイアンを穴が開くほど見つめてくるので照れてしまう。
「なんだよ。アルが来いって言ったんだろ」
「あぁ。でも、人前では嫌かと思った」
「嫌だよ……あ、違う違う。嫌っていうか恥ずかしいんだよ。こういう事が嫌なわけじゃない」
目に見えて絶望するアルフレートに慌てて言い直す。この男には羞恥心と言うものが皆無なので、皆の前でイチャイチャすることに戸惑いが無い。デートの時に何度羞恥心が爆発しそうになったことか。
しかしこれもイアンが変な態度を取り続けた為、アルフレートが確かめる様にわざと行っているのだ。そう思うと強く拒絶も出来ない。嫌なわけでもないし、と自身の羞恥心を心の中でぶん殴ってなるべくアルフレートが安心できるような対応を取っている。ホッと息を吐いて愛おしそうに額に口付けてくるアルフレートの耳元に首を伸ばして囁く。
「でもエッチは人前じゃ嫌だからな。あんな姿アル以外に見られたくない」
「イアン……!」
これはもう耳にタコが出来る程言っておかないといけない。人前でイチャイチャする度、その手が尻に触れて揉む動作をする度、言い聞かせている。
感動したように更にぎゅうぎゅう抱きしめてくるアルフレートは、直ぐに言った事を忘れて人前で尻を揉もうとするのだ。現に今も尻を掴んできた為そうやって牽制している。
ちゅっちゅと唇を顔中に浴びせてくるアルフレートに呆れたような笑みを浮かべつつ、まんざらでもないイアンは、他の面々をさり気なく観察しつつ全員同じだなぁと呑気に笑った。
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