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小魚、餌にならない
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「Grrrrrr!!」
だいぶクマに近づいていくと、向こうも俺たちのことに気づいたようだ。
ギロリとするどい目を向け、低く唸った。
『クラッシュベア』Lv15
近づいたことでモンスターの情報が表示されたが、レベルもなかなか高い。
俺の今のレベルは11なので、普通に格上だ。
リズのレベルもまだ8だけど、2人で戦えばなんとかなるだろう。
「リズはどうやって立ち回る?」
「私は魔法特化だから近接戦闘は無理かなぁ。そこはウィズに任せちゃっても良い?」
「な、なんとかする」
真正面から突っ込んで勝てるか? いや、勝てない。
2メートル以上ある熊を相手に真っ向から突っ込むのをイメージしても、一瞬で刈り取られる未来しか見えなかった。
うまく立ち回るぞ。
幸いにも、クラッシュベアは川を下った場所で俺たちを見ている。この川はなかなかに水深もあるので、やりようによってはクラッシュベアを引っ掻き回せるはずだ。
「行ってくる。魔法攻撃は任せたぞ」
「任されました。私のレベルはまだ低いけど、信じて」
リズから心強い言葉をもらったので、潜ってクラッシュベアに接近する。
「Grrrrr!!!!」
俺が潜ったことで標的をリズに絞ったらしい。
ドシドシと地面を揺らしながら一直線に向かってくる。
まだ距離はあるが、思っていた以上に速いので10秒もあれば距離を詰められそうだ。
「蒼炎-ファストランス」
真っ直ぐ突っ込んでくるクラッシュベアに、リズが魔法を放つ。蒼炎で作られた槍だ。
大きさは1メートル程度と小さいが、目で追うのも大変なほどの速度の槍がクラッシュベアに突き刺さる。
「Grrrr!?」
槍は小さい割にかなり威力があったらしく、クラッシュベアがひるんだ。動きを止めてくれたので、俺からも攻撃を仕掛ける。
「いぐぞぉぉぉぉお!!」
水面から飛び出し、ただタックルするのではない。
スキルを発動させてタックルするのだ。
『Hoch springen』
高く跳ねるだけのスキルだが、進行方向を上ではなく、横向きにすればそれなりの威力は出るのではないか、そう考えた。
身体が赤く発光し、水面から勢いよく飛び出す。
クラッシュベアが川から飛び出してきた俺を見てニヤリと笑ったが、防御なんてさせない。
赤く光る身体を跳ねさせる。
リズのところに走り出そうとしていたところで無防備だった腹に一撃をたたきこんだ。
「ゴフッ!!」
クラッシュベアから苦しそうな声が漏れる。
俺のタックルはクリーンヒットしたらしく、そのまま地面に倒れた。
「よしっ!」
しかし、HPを全て削りきったわけではない。
すぐにクラッシュベアは立ち上がってくるだろう。
「ペチペチ跳ねてる場合じゃないぞー!」
クラッシュベアにタックルをかましたせいで俺は地面の上を跳ねていた。
「ほいやっ! そいやさっ!」
陸に上がった魚なんてただの餌でしかない。
全力で跳ねて、川まで戻る。
幸いにもクラッシュベアは立ち上がらなかったので、餌になることはなかった。
-餌チャレンジ生還により経験値575を獲得しました-
川に戻るとポップアップが表示される。
俺は餌じゃないぞ……。
「リズ! なんか攻撃を頼む!」
「まっかせなさーい!! 蒼炎-大蛇!」
リズは俺が攻撃をしている間にも魔法を準備していたらしい。川に飛び込んだとたんに、魔法を放った。
さっきとは違い、うねりながらクラッシュベアの元へと向かう。大蛇というだけあって魔法のサイズもかなりのものだ。
「やっちゃえ!!」
5メートル近くある大蛇はクラッシュベアを長い身体で巻きつける。
締め上げるのと同時に身体を燃やし、確実にダメージを与えていく。身動きも全く取れない状態だが、クラッシュベアはそこからなんとか抜け出そうとしていた。
ここを抜けられて突っ込まれると、リズがどうなるか分からない。
まだレベルも低いし、そこまで魔法を習得しているわけでもないはずだ。
ここを通すわけにはいかない。
一番深くまで潜ってからもう一度勢いをつけて水面から飛び出し、丸出しで防御も楽に取れない顔面に身体をぶつける。
「Grrrr!!!!」
口を大きく開けて飛び込んでくる俺を食べようとしてきた。
一瞬ヒヤッとしたが、クラッシュベアのHPはもう残りわずか。一気に押し切ってやる。
「おらぁぁぁぁあ!!!」
踊り食いしてみろやぁぁぁぁ!!!
噛み付かれはしたが、俺のタックルに耐えきれなかったらしい。
俺の凄まじい鮮度によって、クラッシュベアのHPは0になって消滅した。
-必殺! 踊り食い! 経験値を777獲得しました-
だいぶクマに近づいていくと、向こうも俺たちのことに気づいたようだ。
ギロリとするどい目を向け、低く唸った。
『クラッシュベア』Lv15
近づいたことでモンスターの情報が表示されたが、レベルもなかなか高い。
俺の今のレベルは11なので、普通に格上だ。
リズのレベルもまだ8だけど、2人で戦えばなんとかなるだろう。
「リズはどうやって立ち回る?」
「私は魔法特化だから近接戦闘は無理かなぁ。そこはウィズに任せちゃっても良い?」
「な、なんとかする」
真正面から突っ込んで勝てるか? いや、勝てない。
2メートル以上ある熊を相手に真っ向から突っ込むのをイメージしても、一瞬で刈り取られる未来しか見えなかった。
うまく立ち回るぞ。
幸いにも、クラッシュベアは川を下った場所で俺たちを見ている。この川はなかなかに水深もあるので、やりようによってはクラッシュベアを引っ掻き回せるはずだ。
「行ってくる。魔法攻撃は任せたぞ」
「任されました。私のレベルはまだ低いけど、信じて」
リズから心強い言葉をもらったので、潜ってクラッシュベアに接近する。
「Grrrrr!!!!」
俺が潜ったことで標的をリズに絞ったらしい。
ドシドシと地面を揺らしながら一直線に向かってくる。
まだ距離はあるが、思っていた以上に速いので10秒もあれば距離を詰められそうだ。
「蒼炎-ファストランス」
真っ直ぐ突っ込んでくるクラッシュベアに、リズが魔法を放つ。蒼炎で作られた槍だ。
大きさは1メートル程度と小さいが、目で追うのも大変なほどの速度の槍がクラッシュベアに突き刺さる。
「Grrrr!?」
槍は小さい割にかなり威力があったらしく、クラッシュベアがひるんだ。動きを止めてくれたので、俺からも攻撃を仕掛ける。
「いぐぞぉぉぉぉお!!」
水面から飛び出し、ただタックルするのではない。
スキルを発動させてタックルするのだ。
『Hoch springen』
高く跳ねるだけのスキルだが、進行方向を上ではなく、横向きにすればそれなりの威力は出るのではないか、そう考えた。
身体が赤く発光し、水面から勢いよく飛び出す。
クラッシュベアが川から飛び出してきた俺を見てニヤリと笑ったが、防御なんてさせない。
赤く光る身体を跳ねさせる。
リズのところに走り出そうとしていたところで無防備だった腹に一撃をたたきこんだ。
「ゴフッ!!」
クラッシュベアから苦しそうな声が漏れる。
俺のタックルはクリーンヒットしたらしく、そのまま地面に倒れた。
「よしっ!」
しかし、HPを全て削りきったわけではない。
すぐにクラッシュベアは立ち上がってくるだろう。
「ペチペチ跳ねてる場合じゃないぞー!」
クラッシュベアにタックルをかましたせいで俺は地面の上を跳ねていた。
「ほいやっ! そいやさっ!」
陸に上がった魚なんてただの餌でしかない。
全力で跳ねて、川まで戻る。
幸いにもクラッシュベアは立ち上がらなかったので、餌になることはなかった。
-餌チャレンジ生還により経験値575を獲得しました-
川に戻るとポップアップが表示される。
俺は餌じゃないぞ……。
「リズ! なんか攻撃を頼む!」
「まっかせなさーい!! 蒼炎-大蛇!」
リズは俺が攻撃をしている間にも魔法を準備していたらしい。川に飛び込んだとたんに、魔法を放った。
さっきとは違い、うねりながらクラッシュベアの元へと向かう。大蛇というだけあって魔法のサイズもかなりのものだ。
「やっちゃえ!!」
5メートル近くある大蛇はクラッシュベアを長い身体で巻きつける。
締め上げるのと同時に身体を燃やし、確実にダメージを与えていく。身動きも全く取れない状態だが、クラッシュベアはそこからなんとか抜け出そうとしていた。
ここを抜けられて突っ込まれると、リズがどうなるか分からない。
まだレベルも低いし、そこまで魔法を習得しているわけでもないはずだ。
ここを通すわけにはいかない。
一番深くまで潜ってからもう一度勢いをつけて水面から飛び出し、丸出しで防御も楽に取れない顔面に身体をぶつける。
「Grrrr!!!!」
口を大きく開けて飛び込んでくる俺を食べようとしてきた。
一瞬ヒヤッとしたが、クラッシュベアのHPはもう残りわずか。一気に押し切ってやる。
「おらぁぁぁぁあ!!!」
踊り食いしてみろやぁぁぁぁ!!!
噛み付かれはしたが、俺のタックルに耐えきれなかったらしい。
俺の凄まじい鮮度によって、クラッシュベアのHPは0になって消滅した。
-必殺! 踊り食い! 経験値を777獲得しました-
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