17 / 37
小魚、連れ去る
しおりを挟む
街の構造はよくわからなかったが、路地をうまいこと使って移動すると人目につかないところまで女の子を連れてこれた。
あたりには俺たち以外にプレイヤーもおらず、遠くから城下町の騒がしい声が聞こえてくる。
「ど、どこに行くんですかー」
女の子が不安そうにしているし、移動はやめて話を聞いても良いだろう。
「人気のないところの方が話しやすいかと思ってさ」
「確かにこの辺で十分ね」
「さっきの奴は何だったんだ? 結構な絡まれ方をしてたけど」
古代のナンパのやり方のように見えた。
俺としては新鮮だったけど、やられる側からしたらたまったもんじゃないはずだ。
「なんか、俺と遊べるのは光栄なことだぞって言ってきてたんですけど……。興味ないし大変だったんです」
「まぁ、あの態度だと何を言ってもおかしくないよなぁ」
「20年ぐらい前の人間のやり方よね……。見てて痛いし寒かったわ」
20年前の漫画の世界のやり方だったしな。
女性陣にも不評のようだが、最後に出てきた取り巻きの女性達がなんだったのかは気になる。
リュウのことを心配していたようだったし、普通にあの男のことを好いてるんだろうか。
あんな化石のような口説き方をするやつですらモテてるというのにどうして俺はトカゲもどきで燻っているんだ……。
「とにかく、すごく助かりました。始めたのは良いものの右も左も分からなくて本当に困惑してたんです」
「別にいいのよ。もしよければだけど、私たちと一緒にやらない? 一人で何も分からずにやるよりは良いだろうし」
「そうだな。一人よりみんなでやった方が楽しいし。さっきの男みたいに無理強いはしないけどね」
「もちろんですっ! 頑張るのでよろしくお願いしますねっ!」
女の子はリズと俺の誘いに二つ返事で答えた。
女の子の名前はアリスというらしい。
アリスをパーティに誘い、これから3人で狩りにでも行こうかと話していたところ、
「そういえばアリスはなんて種族にしたの? 人間?」
アリスの姿は完全に人間のそれだけど、容姿がいじられている気がする。
髪は金髪だし、なんか尊い感がすごい。崇めたくなる。
「一応種族的には人間なんですけど、私は特殊なんです」
「「特殊?」」
リズと顔を見合わせる。
種族が色々あるのは知ってるけど、人間って職業が固定されてるのに特殊なことなんてあるんだろうか。話には一度も聞いたことがない。
「私は、人間ですけど聖女なんです。人間の種族を選んだ時に与えられた私だけのユニークジョブです」
「せ、聖女!? リズ、聞いたことあるか?」
「ないわよ……。というか、だからそれっぽい格好してたのね」
「そういや修道女っぽい格好してるな。なるほど、崇めたくなるのは聖女だったからか」
「えぇっ……。あんたそんなこと思ってアリスに接してたの? 気持ちわる……」
リズにドン引きされて少し悲しくなる。
助けを求めてアリスの方を見てみたが、似たような表情で俺のことを見ていた。
仕方ないだろっ!! そんな感じがしちゃったんだから。
きっと俺が魚だから変な感情が生まれてくるに違いない。
化物魚のことをママとか呼ぶぐらい狂ってるからな。うん。
「その話は苦しいからやめよ? もう今からどうするか話をしようよ」
「そうね。とりあえずアリスがどれだけ戦えるのかみたいわね。まだ狩りもろくにしてないんでしょ?」
「少しだけ……ですかね。一応レベル10にはなってますけど、多分ちゃんとやってる人からしたら全然なんだと思います」
右も左も分からないって感じだったからどうかと思ったけど、意外とアリスのレベルは高かった。
レベルが10まで上がっていて、ユニークジョブを獲得してるなら一緒の狩場でも問題ない気がする。
まぁ、俺が言えたことじゃないんですけどね。
「ウィズがどれだけ陸地で戦えるようになったのかもみたいし、ちょっとやりにいきましょうか」
「はいっ! 私、リズさんと一緒に頑張ります!トカゲさん? もよろしくお願いしますね」
「名前はウィズだから……。トカゲさんじゃないからね?」
とにもかくにも新たな仲間、アリスと一緒に冒険にいくことになった。
俺の評価は後々上がっていくと……信じたい。
あたりには俺たち以外にプレイヤーもおらず、遠くから城下町の騒がしい声が聞こえてくる。
「ど、どこに行くんですかー」
女の子が不安そうにしているし、移動はやめて話を聞いても良いだろう。
「人気のないところの方が話しやすいかと思ってさ」
「確かにこの辺で十分ね」
「さっきの奴は何だったんだ? 結構な絡まれ方をしてたけど」
古代のナンパのやり方のように見えた。
俺としては新鮮だったけど、やられる側からしたらたまったもんじゃないはずだ。
「なんか、俺と遊べるのは光栄なことだぞって言ってきてたんですけど……。興味ないし大変だったんです」
「まぁ、あの態度だと何を言ってもおかしくないよなぁ」
「20年ぐらい前の人間のやり方よね……。見てて痛いし寒かったわ」
20年前の漫画の世界のやり方だったしな。
女性陣にも不評のようだが、最後に出てきた取り巻きの女性達がなんだったのかは気になる。
リュウのことを心配していたようだったし、普通にあの男のことを好いてるんだろうか。
あんな化石のような口説き方をするやつですらモテてるというのにどうして俺はトカゲもどきで燻っているんだ……。
「とにかく、すごく助かりました。始めたのは良いものの右も左も分からなくて本当に困惑してたんです」
「別にいいのよ。もしよければだけど、私たちと一緒にやらない? 一人で何も分からずにやるよりは良いだろうし」
「そうだな。一人よりみんなでやった方が楽しいし。さっきの男みたいに無理強いはしないけどね」
「もちろんですっ! 頑張るのでよろしくお願いしますねっ!」
女の子はリズと俺の誘いに二つ返事で答えた。
女の子の名前はアリスというらしい。
アリスをパーティに誘い、これから3人で狩りにでも行こうかと話していたところ、
「そういえばアリスはなんて種族にしたの? 人間?」
アリスの姿は完全に人間のそれだけど、容姿がいじられている気がする。
髪は金髪だし、なんか尊い感がすごい。崇めたくなる。
「一応種族的には人間なんですけど、私は特殊なんです」
「「特殊?」」
リズと顔を見合わせる。
種族が色々あるのは知ってるけど、人間って職業が固定されてるのに特殊なことなんてあるんだろうか。話には一度も聞いたことがない。
「私は、人間ですけど聖女なんです。人間の種族を選んだ時に与えられた私だけのユニークジョブです」
「せ、聖女!? リズ、聞いたことあるか?」
「ないわよ……。というか、だからそれっぽい格好してたのね」
「そういや修道女っぽい格好してるな。なるほど、崇めたくなるのは聖女だったからか」
「えぇっ……。あんたそんなこと思ってアリスに接してたの? 気持ちわる……」
リズにドン引きされて少し悲しくなる。
助けを求めてアリスの方を見てみたが、似たような表情で俺のことを見ていた。
仕方ないだろっ!! そんな感じがしちゃったんだから。
きっと俺が魚だから変な感情が生まれてくるに違いない。
化物魚のことをママとか呼ぶぐらい狂ってるからな。うん。
「その話は苦しいからやめよ? もう今からどうするか話をしようよ」
「そうね。とりあえずアリスがどれだけ戦えるのかみたいわね。まだ狩りもろくにしてないんでしょ?」
「少しだけ……ですかね。一応レベル10にはなってますけど、多分ちゃんとやってる人からしたら全然なんだと思います」
右も左も分からないって感じだったからどうかと思ったけど、意外とアリスのレベルは高かった。
レベルが10まで上がっていて、ユニークジョブを獲得してるなら一緒の狩場でも問題ない気がする。
まぁ、俺が言えたことじゃないんですけどね。
「ウィズがどれだけ陸地で戦えるようになったのかもみたいし、ちょっとやりにいきましょうか」
「はいっ! 私、リズさんと一緒に頑張ります!トカゲさん? もよろしくお願いしますね」
「名前はウィズだから……。トカゲさんじゃないからね?」
とにもかくにも新たな仲間、アリスと一緒に冒険にいくことになった。
俺の評価は後々上がっていくと……信じたい。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる