ファンタジア・オンライン~最弱種族の小魚になったけど、高速進化で最強種へ成り上がる~

しのこ

文字の大きさ
16 / 37

小魚、街に行く

しおりを挟む
「これが、街! それに人がたくさんいる!!」

「恥ずかしいから騒がないで。元々恥ずかしい見た目なんだから余計に目立つでしょ」

 リズに連れてこられた街は活気溢れる城下町だった。獣人、人間、悪魔。

 色々入り混じってるせいで見た目はちょっと不気味だけど、みんな楽しんでいるのが分かる。

 色んな種族がいても俺は不気味な存在のようで、街に入ってからも好奇の目に晒されている。

 見られるのは諦めて街を楽しむことにしたのだ。リズが連続で悪口を言ってくるのが気にならないぐらいには、今テンションが上がっている。

 ペチペチと地面を歩けることを感謝しながら、街を歩いていると、嫌な光景を見ることになった。

「あ、あのあの! 解放してほしいんですけど!?」

「そんなこと言うなって? 俺が遊んでやろうって言ってんだぜ?」

 白昼堂々、男が白い装束を身に纏った女の子に話しかけている。
 それも、声から察するに無理矢理どこかに連れて行こうとしているようだ。

 周りのプレイヤーもそれは分かっているはずだが、声をかけるやつはいない。
 どうしてかと思ったが、男の装備がやけに強そうなものを使っているからかもしれない。

 どんな装備を使っていようが、全裸の俺には関係ない。
 ヒロインを救う外見じゃないが、助けに行こう。

 俺が声を出して男を止めようとした時だった。

「あんたさぁ、その子が嫌がってるって分からないわけ? 周りの人もあんたにドン引きしてるんですけど」

 先にリズが動いた。
 随分とご立腹のようだ。会ってから一度も見たことないような表情を浮かべている。

「な、何か変なものを連れてるがお前も可愛いじゃないの」

 男は一瞬俺のことを見た後、リズに向いて言葉を発する。

 あいつ、俺のことをチラッと見たよな。
 変なのって俺のことを言ってんのか? いや、周りに俺より変わった外見のやつなんて一人もいないから間違いない。

 確かに俺はトカゲとおたまじゃくしの間みたいな! 
 そんな出来損ないのモンスターみたいな容姿をしているけど!

 人から言われたら傷つくんだ。

「はぁ? あんたにそんなこと言われてもうれしくないわよ。その子も迷惑しているみたいだし、貰っていくわよ」

 リズはドンドンと足音を鳴らしながら男と女の子の間に入り、女の子の腕をつかんでその場を離れようとする。

「俺が相手してやろうって言ってんのに何処行こうとしてるんだ?」

 離れようとしたリズの腕を男がつかむ。
 結構強く握ったようで、リズが動きを止められた。

「うるさいっ。その汚い手を放しなさい」

 パンッ!!! パンッ!!!! ドンッ!!! ゴッ!!

 ここで少女漫画なら平手打ちの1つでも喰らわせるのがセオリーなんだろうが、残念ながらこの世界はそんなに甘くない。よりによって相手はリズだ。

 リズは男の顔面を2回ぶん殴ったあとに腹に膝をぶち込んだ。
 前かがみになったところで股を蹴り上げる。

 えげつねぇ……。
 リズの腕をつかんだだけでここまでぶちのめされるのか……。

 男は膝から崩れ落ち、股間を抑えながらリズを見上げる。

「おもしれぇ……おんな……っ……」

 おとこぉぉぉ!!!!!
 少女漫画の不良ポジションみたいなセリフを残したまま、ガクッと倒れた。

 いや、このゲーム痛覚とかないし間違いなく演技。
 そもそも気絶したらログアウトするので、こいつはやられたふりをしてるだけ。

 おもしれぇ男だ……。

「あぁぁ! リュウくんが倒れてる!? 大丈夫!?」

「リュウ……どうして倒れてるの……」

 男はリュウというらしい。
 騒ぎを聞きつけたのか、取り巻きらしい女の子がゾロゾロと現れた。

 このまま放っておくとさらに揉め事に発展しそうだ。

「リズ! 一時撤退!」

「仕方ないわね」


「な、なにこのキモい生物」

「いやぁぁ!!」
 リュウをじっと見ていてもなかなか起き上がらないし、女の子も注目されちゃって可哀想なので、リズを回収して別の場所に移ることした。


 回収ついでに取り巻きの子たちからは悲鳴が上がったが、強い俺は気にしない。


 画面が歪んでいる気がしたが、それはきっと気のせいだ。
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】私は聖女の代用品だったらしい

雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。 元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。 絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。 「俺のものになれ」 突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。 だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも? 捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。 ・完結まで予約投稿済みです。 ・1日3回更新(7時・12時・18時)

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...