外れスキルの下剋上~超万能な解体スキルで世界最強の冒険者~

しのこ

文字の大きさ
3 / 4

もしかして英雄

しおりを挟む
「ハル、あんな化物に立ち向かって勝てるわけがないだろ! 俺達冒険者でも手も足も出ないんだぞ!」

「た、戦うんだ! どのみちこのまま追いかけられても殺されるだけなんだ!」

「馬鹿な真似はやめろ! こっちに向かって突っ込んできてるだけかもしれないだろ!」

 確かにルーさんの言う通りかもしれないが、そうじゃないかもしれない。

     俺はあいつと目があった時に殺気のようなものを感じた。

 今まで冒険もせずろくに戦ったこともない俺にそんな野生の勘が備わっているのか疑問だが、それでもミノタウロスから俺に向けられる何かは感じたんだ。

「おい、あいつ正気か……」

「だれか、あいつをなんとかしろよ! このままだと本当に死ぬぞ!」

 すでに俺の周りに人はいない。

 ミノタウロスがこちらに向かって突っ込んできた時点で、色んな場所に散っていったからだ。

 いつもは活気のある街も、今この場は閑散としている。

 自分の身を守らなきゃいけないんだから当然だ。俺はミノタウロスの標的になっているだろうから、逃げる意味もないけどな。

 再び覚悟を決めてミノタウロスに向き合う。


 今もなお、ミノタウロスはドシドシと重い身体を動かして俺の方に向かってきている。その距離は20mもない。

 あと数秒すればミノタウロスは俺の元にたどり着き、その巨大な斧で俺のことを八つ裂きにするだろう。

「覚悟を決めろ。ミノタウロスなんて何度も調理してきただろ」


 こんな巨大なやつはみたことないが、ミノタウロスは俺の店でもよく出してる。何回もバラしたことがあるんだ。

 殺意に満ちた瞳をこちらに向け、巨体が一直線に突っ込んでくることに本能から怯えてるのか、身体がゾクリとした。

 でも、今はびびってる場合じゃない。



 ここまでサイズの大きなミノタウロスは見たことも聞いたこともないが、ミノタウロス自体は食用として使われている。

 俺が基本的に手を加えるのは丸ではなく部位に解体された後だが、こいつを丸の上体から解体したことも何度もある。


 そう、こいつは俺にとって食材だ。

 何も怖がることなんてない。

「お前なんて調理してやる」

「グァアアアアアア!!!!」

「あぁ!? ハルが!!」

「逃げてくれよぉぉお!!」

 ミノタウロスを止められず、この結末を見ることしかできなくなった冒険者たちが悲しみの声を上げた。

 みんな俺の店に来ていた人だ。ルーさんだけじゃなく、いろんなお客さんが俺の結末を見ている。中には泣いている人もいた。 

 お客さんを喜ばせて泣かれるのはいいけど、こういう泣かれ方はいやだなぁ。


 だったら、この場をなんとか乗り切るしかない。
 それが出来なければ、俺は死ぬ。


「ガァァァアアア!!」

「お前なんて食材だ!!」

 突っ込んできたミノタウロスはその斧を俺に向かって振りかざす。大して、俺は調理スキルを発動させてミノタウロスに突っ込んだ。


 ガランガラン!

 ミノタウロスが持っていた斧が、装備していた防具が大きな音を立てて床に落ちる。


「え? ハル……? お前いったいどうやって……」

「なんだ、これ……どういうことなの」

 ミノタウロスと俺が対峙していた場所にあるのは、無傷の俺と肉に分解されたミノタウロス、それとミノタウロスの装備だけだ。


 思わず目を瞑って突っ込んでしまったが、どういうことだ……?


「スキルでミノタウロスをバラした……?」

 それしか考えられない。俺の近くに落ちているミノタウロスの肉塊は、部位ごとに綺麗に解体されていた。


 以前俺がミノタウロスを分解したときと同じ状態に変化している。


「ハルッッ! お前すっげぇよ! ヒーローじゃねぇか!」

「すげぇ! あのミノタウロスを一撃だぞ! お前料理人じゃなくて冒険者になったほうが良いんじゃねぇか!?」

「街が救われた! 救ったのは冒険者でも騎士でもなく、料理人だ!」

 パチ

 パチパチ!

 パチパチパチパチ!!

「こいつは俺達の救世主だ!」

「「ワァァァァァ!!!」」

 遠巻きに結末を見ていた人たちが俺の元にバタバタと駆け寄り、辺りは拍手で包まれる。


 恐怖から解放された街の住人たちの悲痛な声とは違う、喜びの声で街中が満たされた。


「ど、どうすれば良いんだ……」

 まさかこんなことになるなんて思っていなかったからどうすれば良いのか分からない。

 助かったのは素直に嬉しいが、俺のスキルにこんな能力が秘められているなんて思ってもいなかった。


 街の人に喜ばれるのは嬉しいが、どうすれば良いのか分からずに顔を引きつらせる。



「おう! とりあえずこの場から抜け出すぞ! ついてこい」

「あ、ありがと!」

 街を救ったヒーローとして街中の人に囲まれたが、その後ルーさんの取り計らいでうまく騒ぎから抜け出すことが出来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...