モラハラ王子の真実を知った時

こことっと

文字の大きさ
15 / 16

15

しおりを挟む
 マルクルとの争いは、時間との勝負だった。

 私は自分の身を守るため、世間ではフェルザーによる独善的な行動により、フェルザーの生家であるバルテン公爵家に私が監禁される事になっていた。 約束通り使用人全員を引き連れてである。

 世間では、私を離縁させたいお母様とフェルザー。 離縁したくない私とマルクル、そして離縁させたくない陛下、マルクルよりの貴族が存在している構図のまま時間は進んでいく。

「父上は引退なさるべきです」

 年末の大会議の際、マルクルは満を持して声を大にした。

「今、この国は王家の支配から離れている事をご存じでしょうか? 現国王である父上は、物腰の柔らかさで民に人気がある。 だが、この人気は、人に嫌われたくないと言う彼の軟弱な意志が反映されたものであって、国としては正しくはないでしょう。 この国は瀕しています。 我が正妃を見てください。 彼女こそが貴族のあるべき姿なのです」

 そうして美しく飾り付けられた。
 この国では指差されるほどの華美な姿で挨拶を行う。

「なぜ……この国の経済が閉ざされているか考えた事がありますか? それは国民の機嫌をとっているからです。 その税率の低さにあります。 そのくせ領地に問題が起これば、領主達に責任が問われます。 問題への対処で厳しくなった財政を整えるため、増税を行おうとしても、国が、国王が了承しない。 このご機嫌取りに不満に思った者は多いでしょう!!」

 等と言えば、誰もが聞き耳を立てていた。

 社交界は未だ出た事が無いため分かりませんが、自然災害による領地問題に関しては国から財政支援が与えられており、領主達の負担はそれほど大きくないはずだ。 ただし……領主達の怠慢や金を惜しんだ事で起こった問題には、支援は許可しませんけど。

 そしてマルクルの演説は続く。

「何より、この国は王家の支配に無い。 一代貴族の子である王妃により支配されています。 庶民の娘に支配され、貴方方は許す事が出来るのですか!! 今の国王夫婦は、国の代表として相応しくない!!」

 血統主義者が歓声を上げた。

「そして……領地を持たぬ名ばかりの伯爵家の娘を迎え、我が子のように育てた。 一代貴族の娘が!! ですよ。 王家の血統を何処までも汚そうとしているのです。 貴方達はソレを許す事が出来るのですか!!」

 その後も、いかに他国に恥ずかしい国王夫婦であるかを、他国からどのように言われているかを繰り返し語られた。 マルクルとその立派な正妃によって。

 何があっても、王妃と喧嘩になってもただ一人マルクルを庇い続けた、国王は呆然とし、大会議の閉会を求めた。

 だが……。

「今こそ貴方は己の無能さと向き合い、私に国王の座を譲るべきです」

「マルクル……お前に国王の座を許す訳にはいかないよ」

 消え入りそうな声で国王は言った。

 この大会議でマルクルが、離反する事は既に情報を得ていた。 だからこそ……彼は彼が語るような可哀そうな子ではなく、嘘つきで、残虐な存在だと突きつけたのだ。

 時間との問題だった。

 王妃、レーネ、フェルザー、三人に個人的な恩を持つ者達まで総動員して、事に当たってもらった。

1、 文官達への仕事の振り分けは二十三人に及び、そのうちの三人が貴族に情報を売り払い金銭としていた。
2、 過去の理不尽な暴力・拷問調査、次期国王に逆らえないからと泣き寝入りした貴族達の惨状を訴えて貰い集めた。
3、 王子妃であったレーネのために組まれていた予算の遣い込み。

 それらがフェルザーによって順に報告がなされた。

「心を入れ替え国に尽くした。 と、周囲に偽っていた方の実情ですよ」

 そう言って回される資料。

「そして……マルクルとレーネとの婚姻は本日付けで正式に白い結婚が認められ解消がなされ、同時に俺との婚約が成立しました」

 マルクルが彼に都合の良い拍手や歓声を仕込んだように、フェルザーもまた仕込んでいて一斉におめでとうございますと言う声と拍手が上がった。

「これにより、マルクルの国王としてその業務を行われるかどうかに疑問が呈される事になるでしょう。 文官に任せればいいなんて思いませんよね? 彼の時代が来れば、貴方方は各地の領主の情報を金で買う事が出来るかもしれませんが、自分達の情報も金で売れられる時代になるのですから……領地内争いの悪化一直線。 いやぁ~怖い怖い」

「ふざけるな!! そんなもの文官の誠実を徹底させれば良い事でしょう!!」

「確かにソレは可能だろうな。 お前がしてきた暴行、監禁、拷問の数々、恐ろしくて逆らう事が出来ないだろうが……それがまかり通る。 ソレを当たり前にしたい者がどれほどいるかな? 王の機嫌で投獄され、拷問され、殺され、家が潰される」

 おどろおどろしくフェルザーは語った。

「まるで自分の方が王位に相応しいとでも言っているかのように聞こえますが、貴方はその名だけの貴族の娘を妻に迎え、子を成し、王国を汚すつもりですか?」

 マルクルの言葉にフェルザーは笑う。

「なぜ、陛下がレーネの両親を気に掛けたか? それは先々代、現国王の祖父から頼まれたからだ。 親代わりだった叔父が貧乏貴族に全てを捨てて婿入りした事をずっと気にされていて、何かあれば助けてやって欲しいと遺言されたそうだ。 血こそ薄くなってはいるがレーネも王家の血を継いでいる。 何の問題もない」

「なぜ、ソレを教えて頂けなかったのですか!!」

「レーネに興味を持たなかったのは貴方ですよ。 私は幾度となく貴方に語っておりますよ」

 王妃様が応じた。

「それで、次は何を材料に王位を簒奪しようとする?」

「簒奪? 私は国王夫婦の子、正当な要求をしているだけです!! どちらにしろ……妻の質の違いは大きいですね。 隣国との交易が盛んとなり、何より妻アリアーヌには魔皇石の産地を与えられている」

「そのアリアーヌ姫ですが……昨年の食料難に対して対応する予算が組めなかったのは、彼女の贅沢が影響していると言う噂を聞きましたが?」

「まさか、姫君1人の贅沢で国をどう潰す。 そもそもない金は払えないだろう」

「えぇ、何処の国も国庫で組まれた予算以上の使い込みは禁じられていますが、各貴族に貢ぎ物を強要したならどうなるかな?」

「それは領地を運営を蔑ろにした領主の問題だ。 アリアーヌ姫の魅力の問題ではない!! それに……姫は、魔皇石の産地を持っている」

 国王は憔悴しきった顔で言う。

 マルクルの悪事も計画も全て国王には隠していた。 罪を小出しにすれば、罪の大きさを理解できないだろうと考えたから……何より、彼の未熟を理由に王位を得るには未だ早い実績を積む必要があると、手取り足取り指導された可能性があったから。

 その政治が駄目だしされ、唯一彼が欲した存在である王妃を否定され、彼が庇護する民に暴力を振るわれていた……ソレ等事実に国王は愕然とし、憔悴し、震える声で伝えだす。

「これだけの事をしておいて、王位につくと言うのは誰も賛同するまい」

「父上!! 貴方だけは味方だと思っていたのに……」

「どう味方が出来ると言うのだ!! 今まで、どれだけお前の悪事の後始末をしてきたか……。 お前は王位を得るにはふさわしくない……だが、最後の恩情を授けよう。 その魔皇石の産地を統治し成果を出し、5年以内に国内領地利益5位以内に入って見せよ。 口先だけでどれほど立派な御託を立てるよりも、その力を見せつけるのだ」

「分かりましたよ。 父上」

 自信満々のマルクル。
 顔色の悪いアリアーヌ姫。

 翌日マルクルとアリアーヌ、そしてその二人に賛同していた貴族の中で、長年その悪道に加担していた貴族達は、王妃の直属軍を護衛として王都を立った。

 その姿に華々しさはなく、監獄に送られる罪人のようだったと人々は語り継ぐこととなる。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】夫が愛人と一緒に夜逃げしたので、王子と協力して徹底的に逃げ道を塞ぎます

よどら文鳥
恋愛
 夫のザグレームは、シャーラという女と愛人関係だと知ります。  離婚裁判の末、慰謝料を貰い解決のはずでした。  ですが、予想していたとおりザグレームとシャーラは、私(メアリーナ)のお金と金色の塊を奪って夜逃げしたのです。  私はすぐに友人として仲良くしていただいている第一王子のレオン殿下の元へ向かいました。  強力な助っ人が加わります。  さぁて、ザグレーム達が捕まったら、おそらく処刑になるであろう鬼ごっこの始まりです。

婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?

みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。 婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。 なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。 (つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?) ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる? ※他サイトにも掲載しています。

エメラインの結婚紋

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――

私と結婚したいなら、側室を迎えて下さい!

Kouei
恋愛
ルキシロン王国 アルディアス・エルサトーレ・ルキシロン王太子とメリンダ・シュプリーティス公爵令嬢との成婚式まで一か月足らずとなった。 そんな時、メリンダが原因不明の高熱で昏睡状態に陥る。 病状が落ち着き目を覚ましたメリンダは、婚約者であるアルディアスを全身で拒んだ。 そして結婚に関して、ある条件を出した。 『第一に私たちは白い結婚である事、第二に側室を迎える事』 愛し合っていたはずなのに、なぜそんな条件を言い出したのか分からないアルディアスは ただただ戸惑うばかり。 二人は無事、成婚式を迎える事ができるのだろうか…? ※性描写はありませんが、それを思わせる表現があります。  苦手な方はご注意下さい。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

処理中です...