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第一章:三日の猶予と、二人の出会い
ハーフエルフ、アイゼン・ガルドの水を清める
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アイゼン・ガルドの街は、整然とした四角形をしている。
街全体を囲うのは、まだ石壁を築く余裕がないことを物語る丸太の簡易柵だ。
その中心にある大広場からは、東西南北へと真っ直ぐに道が伸びている。
街の北西部の高台には、隙間なく打ち込まれた頑丈な丸太杭に囲われた領主館が鎮座していた。
いざという時は全住民を収容する避難所も兼ねているのだ。
対照的に南半分は、活気に満ちた居住区と商業区。
北東部だけは、将来の拡張を見据えた広大な空き地が、灰色の砂を巻き上げていた。
「……うちが頑張って道を整えたら、ええ街になりそうなやな、アイゼン・ガルド」
領主館を出たランスローネは高台から街全体を俯瞰して独りごちる。
ふと視線を感じて振り向けば、本館二階のバルコニーからシャルマーニが、豊かな胸を腕組みして支えた姿勢で立ち、此方を見据えていた。
軽く会釈するが、シャルマーニは睥睨したままだ。
「あ、ロランドはん、ちょっと待っててな」
「おい何処に行く? 目指す岩山はこの街から北だぞ」
呼び止めるロランドを尻目に、ランスローネは大広場に向かった。
ヴェリア辺境領は灰色の岩肌と灌木だらけで草木も生えず小川も無い。
そんな土地の水源は地下水だ。
大広場には地下水が湧き出る大井戸と、湧き水の噴水があった。
(……これから世話になる場所や。変なモンが混じってたら寝覚めが悪いしな)
ランスローネは右手の五指を広げて噴水の前に翳した。
「水の精霊ドゥーフ・ヴォーダ、うちに力を貸しや」
小さな声で呟くと、呼応するようにして半透明な少年の人魚が水面から浮き上がった。
「この街の水を濾過して、ついでに毒消しもしてや」
ランスローネが言うと、精霊は微笑み、再び水面に溶け込んで消えた。
精霊の姿は、エルフの血を引く彼女にしか見えない。
噴水の周囲の住民たちには、ただ美しい旅娘が噴水の前で涼んでいるようにしか映っていなかった。
「……お前、今何をした?」
だが、騎士として鍛え上げられたロランドだけは、一瞬、噴水の水が意思を持ったように輝いたのを見逃さなかった。
背後で怪訝そうな顔をする彼に、彼女は笑みを浮かべて振り返った。
「ん? 別に。ちょっとしたおまじないや。さ、行こか」
「───」
それがとても輝いて見えたロランドの心に、ランスローネに対する淡い感情が芽生えた瞬間であった。
街全体を囲うのは、まだ石壁を築く余裕がないことを物語る丸太の簡易柵だ。
その中心にある大広場からは、東西南北へと真っ直ぐに道が伸びている。
街の北西部の高台には、隙間なく打ち込まれた頑丈な丸太杭に囲われた領主館が鎮座していた。
いざという時は全住民を収容する避難所も兼ねているのだ。
対照的に南半分は、活気に満ちた居住区と商業区。
北東部だけは、将来の拡張を見据えた広大な空き地が、灰色の砂を巻き上げていた。
「……うちが頑張って道を整えたら、ええ街になりそうなやな、アイゼン・ガルド」
領主館を出たランスローネは高台から街全体を俯瞰して独りごちる。
ふと視線を感じて振り向けば、本館二階のバルコニーからシャルマーニが、豊かな胸を腕組みして支えた姿勢で立ち、此方を見据えていた。
軽く会釈するが、シャルマーニは睥睨したままだ。
「あ、ロランドはん、ちょっと待っててな」
「おい何処に行く? 目指す岩山はこの街から北だぞ」
呼び止めるロランドを尻目に、ランスローネは大広場に向かった。
ヴェリア辺境領は灰色の岩肌と灌木だらけで草木も生えず小川も無い。
そんな土地の水源は地下水だ。
大広場には地下水が湧き出る大井戸と、湧き水の噴水があった。
(……これから世話になる場所や。変なモンが混じってたら寝覚めが悪いしな)
ランスローネは右手の五指を広げて噴水の前に翳した。
「水の精霊ドゥーフ・ヴォーダ、うちに力を貸しや」
小さな声で呟くと、呼応するようにして半透明な少年の人魚が水面から浮き上がった。
「この街の水を濾過して、ついでに毒消しもしてや」
ランスローネが言うと、精霊は微笑み、再び水面に溶け込んで消えた。
精霊の姿は、エルフの血を引く彼女にしか見えない。
噴水の周囲の住民たちには、ただ美しい旅娘が噴水の前で涼んでいるようにしか映っていなかった。
「……お前、今何をした?」
だが、騎士として鍛え上げられたロランドだけは、一瞬、噴水の水が意思を持ったように輝いたのを見逃さなかった。
背後で怪訝そうな顔をする彼に、彼女は笑みを浮かべて振り返った。
「ん? 別に。ちょっとしたおまじないや。さ、行こか」
「───」
それがとても輝いて見えたロランドの心に、ランスローネに対する淡い感情が芽生えた瞬間であった。
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