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第二章:丸太と魔法と、覇道の軍道
ハーフエルフ、閃く
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谷底へ降り立った三人を迎えたのは、圧倒的な重圧感だった。
松明の光に照らされ、目の前の赤茶けた岩壁にぽっかりと漆黒の口を開けている巨大な穴──それが、地下鉱脈へと続く『大坑道』だ。
「……これが『ヴェリアの心臓』の入り口か。まるでドラゴンの口みたいやな」
ランスローネが腰に手を当てて、巨大な生物が大口を開いた感がある入り口を見上げる。
大坑道の入り口付近には、いくつもの丸太小屋が立ち並び、掘り出されたばかりの鉄鉱石が山をなしていた。
そこからは、先ほど見下ろした命懸けの桟道が伸びており、その傍らには、ランスローネが先刻作ったばかりの「岩の階段」を嬉しそうに上っていく歩荷たちの姿があった。
「ここにも丸太小屋がいっぱいある……ほんま、あの姫様は丸太が好っきやなあ。でも、これだけの資材、ようこんなとこまで運び込んだな」
ランスローネの感心したような呟きに、エーリカがおずおずと小さく手を挙げた。
「それは……私が魔法で少しずつ……」
「──え? そうなん!?」
ランスローネはギョッとしてエーリカを見る。
「これを、一人でコツコツやったんか……?」
「はい……あまり大ぴらにやると目立って怖いので、夜中にコツコツと運び込みました」
「あんた、働き者やなあほんまに……」
苦笑いを浮かべて申し訳なさそうに言うエーリカの能力の高さに、ランスローネは改めて戦慄を覚えた。
「そうだったのか、エーリカ。其方の苦労、隠れた功績に、拙者は感銘を受けたぞ!」
ロランドは、エーリカが実は裏で現場を支えていた縁の下の力持ちだと知って感涙を浮かべる。
その瞬間、ランスローネの翡翠色の瞳が、獲物を見つけた猛禽のようにキラーンと音を立てて輝いた。
「……閃いたで、エーリカ! あんたの超凄い精密な魔法、丸太を『運ぶ』んやなくて、箱を『吊るす』方に使わせてもらうで!」
「吊るす? って、まさかローネさん、この絶壁を直接上り下りするっていうんですか!?」
「そうや! いくらうちやエーリカが魔法使って、この谷底まで馬車が通れる道を作るには、莫大な岩石の切削が必要や。そんなん下まで道掘ってたら三日やのうて一週間はかかってまう。でも、ここから吊り上げたり吊り下げたりしたら一瞬や!
頑丈な「昇降装置」を作れば、道を作る距離も工期も大幅に短縮できんで!」
ランスローネが導き出して提案したのは、岩山の頂までは坂道を作り、そこからこの谷底までは巨大な昇降装置で吊り下げて一気に引き上げる方法だった。
「それに必要なのは……!」
ランスローネは、丸太小屋の一つに向かって走った。
そこからは「カン、カン」という金属音が聞こえている。
「……やっぱりな。これだけ丸太小屋があるんや、道具を直す鍛冶場くらいあると思うたわ!」
ランスローネが小屋の扉を開けると、そこには使い込まれた炉と、煤に汚れた巨大な金敷が鎮座していた。
鉄を掘るための鶴嘴や鏨は、硬い岩を叩くのですぐに刃が丸くなる。
そのたびに山の上まで運ぶのは効率が悪すぎる。
現場で「焼き入れ」や「研ぎ」を行う必要がある。
更には、坑内を支える支柱の製作も必要だ。
坑道が崩れないように支える支柱には、丸太だけでなく、それらを固定するための特大の鉄釘や鉄の継手が大量に必要である。
坑道は常に形が変わるため、その場の地形に合わせて鉄を叩いて調整するという、現場合わせの加工の場所が不可欠なのだ。
「みんなー! ちょっとうちの話を聞いてー!」
ランスローネはあらん限りの声を張り上げて呼ばわった。
松明の光に照らされ、目の前の赤茶けた岩壁にぽっかりと漆黒の口を開けている巨大な穴──それが、地下鉱脈へと続く『大坑道』だ。
「……これが『ヴェリアの心臓』の入り口か。まるでドラゴンの口みたいやな」
ランスローネが腰に手を当てて、巨大な生物が大口を開いた感がある入り口を見上げる。
大坑道の入り口付近には、いくつもの丸太小屋が立ち並び、掘り出されたばかりの鉄鉱石が山をなしていた。
そこからは、先ほど見下ろした命懸けの桟道が伸びており、その傍らには、ランスローネが先刻作ったばかりの「岩の階段」を嬉しそうに上っていく歩荷たちの姿があった。
「ここにも丸太小屋がいっぱいある……ほんま、あの姫様は丸太が好っきやなあ。でも、これだけの資材、ようこんなとこまで運び込んだな」
ランスローネの感心したような呟きに、エーリカがおずおずと小さく手を挙げた。
「それは……私が魔法で少しずつ……」
「──え? そうなん!?」
ランスローネはギョッとしてエーリカを見る。
「これを、一人でコツコツやったんか……?」
「はい……あまり大ぴらにやると目立って怖いので、夜中にコツコツと運び込みました」
「あんた、働き者やなあほんまに……」
苦笑いを浮かべて申し訳なさそうに言うエーリカの能力の高さに、ランスローネは改めて戦慄を覚えた。
「そうだったのか、エーリカ。其方の苦労、隠れた功績に、拙者は感銘を受けたぞ!」
ロランドは、エーリカが実は裏で現場を支えていた縁の下の力持ちだと知って感涙を浮かべる。
その瞬間、ランスローネの翡翠色の瞳が、獲物を見つけた猛禽のようにキラーンと音を立てて輝いた。
「……閃いたで、エーリカ! あんたの超凄い精密な魔法、丸太を『運ぶ』んやなくて、箱を『吊るす』方に使わせてもらうで!」
「吊るす? って、まさかローネさん、この絶壁を直接上り下りするっていうんですか!?」
「そうや! いくらうちやエーリカが魔法使って、この谷底まで馬車が通れる道を作るには、莫大な岩石の切削が必要や。そんなん下まで道掘ってたら三日やのうて一週間はかかってまう。でも、ここから吊り上げたり吊り下げたりしたら一瞬や!
頑丈な「昇降装置」を作れば、道を作る距離も工期も大幅に短縮できんで!」
ランスローネが導き出して提案したのは、岩山の頂までは坂道を作り、そこからこの谷底までは巨大な昇降装置で吊り下げて一気に引き上げる方法だった。
「それに必要なのは……!」
ランスローネは、丸太小屋の一つに向かって走った。
そこからは「カン、カン」という金属音が聞こえている。
「……やっぱりな。これだけ丸太小屋があるんや、道具を直す鍛冶場くらいあると思うたわ!」
ランスローネが小屋の扉を開けると、そこには使い込まれた炉と、煤に汚れた巨大な金敷が鎮座していた。
鉄を掘るための鶴嘴や鏨は、硬い岩を叩くのですぐに刃が丸くなる。
そのたびに山の上まで運ぶのは効率が悪すぎる。
現場で「焼き入れ」や「研ぎ」を行う必要がある。
更には、坑内を支える支柱の製作も必要だ。
坑道が崩れないように支える支柱には、丸太だけでなく、それらを固定するための特大の鉄釘や鉄の継手が大量に必要である。
坑道は常に形が変わるため、その場の地形に合わせて鉄を叩いて調整するという、現場合わせの加工の場所が不可欠なのだ。
「みんなー! ちょっとうちの話を聞いてー!」
ランスローネはあらん限りの声を張り上げて呼ばわった。
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