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第三章:アイゼン・ガルドの平穏な日々
ハーフエルフ、遊撃執行長と対面する
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「なかなかよい話だ。ならばランスローネよ。お前は、我が覇道を『珠』に一周させよ」
不意に、低く冷徹な声が広間に響く。
一同が顔を向ければ、はち切れんばかりの肉感美を白い衣装に包んだシャルマーニが立っていた。
「シャルマーニ殿下!」
ロランドが慌てて立ち上がろうとするも、シャルマーニは片手を上げて制し、上座の席へと移動するとどっしりと腰を下ろし、腕組みをして、豊かな双丘を重たげに持ち上げ、金の瞳で食卓の雰囲気を支配する。
給仕の少女がワゴンを押してやって来て、運んだパンやスープや果物をシャルマーニの前に並べたその時、大広間の重厚な扉が音を立てて開いた。
一同は、背後から眩い光を浴びて黒い異形が現れたかのような錯覚を起こす。
漆黒の鬢髪、黒い肌、整った顔をした、漆黒の甲冑を身に纏う若い娘が、黒い長剣を手に携え、大きな籠を背負って立っていた。
「……誰さんや?」
ランスローネが小声でロランドに問う。
「シャルマーニ殿下の従姉妹筋にあたるアイネ・シュヴァルツ殿だ。遊撃執行長という役職に就いている」
「何やそのけったいな役職は?」
聞いたことのない役職名に、ランスローネは正直な感想を述べる。
「──あ? 何か文句あんのか?」
アイネは目を眇め、背負った大きな籠の紐を無造作に解くと、それを石畳の床へと投げ出した。
鈍い音と共に、籠の中から中身が転がり出る。
人間の、生首であった。
「「ヒィィ!」」
ランスローネとエーリカは恐怖に慄いて身を寄せ合う。
「おいおい、酒が不味くなるじゃねえか」
シュミットは眉を顰め、ロランドも押し黙る。
だが、シャルマーニは眉一つ動かさず、パンを千切って口に入れて咀嚼する。
「……騒がしい奴らだぜ。
開通したばかりの『蛇の道』をうろついてたネズミどもを掃除しておいたよ、姉上。
昨夜は宴会だったようだけど、あたしの分の肉は残ってるんだろうね?」
アイネは黄金の縦割れ瞳孔の双眸を細める。
「無論だ。すぐに用意させよう」
「あたしの部屋に運んでおいてくれ。ひとっ風呂浴びてから、ゆっくり食べるぜ」
シャルマーニに人懐っこい笑みを向け、ランスローネを一瞥すると、アイネは籠と生首を放りっぱなしにして大広間から出て行こうとするが、ランスローネが「ちょい待ちや」と呼び止めた。
「あんたそれ、放ったらかしにするつもりかいな? 片付けて行きいや」
「──あ?」
アイネは振り向き、猛禽のような黄金の瞳が、ランスローネの翡翠色の縦割れ瞳孔を射抜くように見据える。
「ロ、ローネさん……!」
エーリカが止めようとするが、ランスローネは引き下がらず、アイネと睨み合う。
一触即発の空気に、シュミットは期待するような笑みを浮かべ、エーリカはオロオロとし、ロランドは固唾を呑んで見守る。
「アイネよ、後で検分する。礼拝堂に運んでオリビエに預けておけ」
ここでシャルマーニが裁定を下した。
「チッ……」
アイネは舌打ちすると、溢れた生首を拾い上げ、籠を背負って大広間から出て行った。
「ふぅ……」
ランスローネは椅子に背をもたれて息をつく。
「ガハハハ! やるじゃねえかランスローネ!」
「うむ、拙者も見直したぞ」
「ローネさん、凄いです。あんな怖そうな人に一歩も引かないで……私も、見習わないと」
「うちから見たら、ちょっと粋ってるだけのやんちゃ娘や。もっと怖い人おるしな」
ランスローネはチラリとシャルマーニを見つつ、震える手をグッと握る。
(膝ガクガクや。あんまし関わりたないやっちゃで……)
「ランスローネよ。食事を終えたら、我の部屋に来い。
執務室ではなく、我の私室だ。
お前に次の仕事を命じる」
シャルマーニは席を立ち、大広間から出て行った。
(……私室? 執務室やなくて? なんや、またややこしいこと言われそうな予感がするなぁ……)
ランスローネは不安と期待が入り混じった目で、去り行く白い衣装の背中を見送るのであった。
不意に、低く冷徹な声が広間に響く。
一同が顔を向ければ、はち切れんばかりの肉感美を白い衣装に包んだシャルマーニが立っていた。
「シャルマーニ殿下!」
ロランドが慌てて立ち上がろうとするも、シャルマーニは片手を上げて制し、上座の席へと移動するとどっしりと腰を下ろし、腕組みをして、豊かな双丘を重たげに持ち上げ、金の瞳で食卓の雰囲気を支配する。
給仕の少女がワゴンを押してやって来て、運んだパンやスープや果物をシャルマーニの前に並べたその時、大広間の重厚な扉が音を立てて開いた。
一同は、背後から眩い光を浴びて黒い異形が現れたかのような錯覚を起こす。
漆黒の鬢髪、黒い肌、整った顔をした、漆黒の甲冑を身に纏う若い娘が、黒い長剣を手に携え、大きな籠を背負って立っていた。
「……誰さんや?」
ランスローネが小声でロランドに問う。
「シャルマーニ殿下の従姉妹筋にあたるアイネ・シュヴァルツ殿だ。遊撃執行長という役職に就いている」
「何やそのけったいな役職は?」
聞いたことのない役職名に、ランスローネは正直な感想を述べる。
「──あ? 何か文句あんのか?」
アイネは目を眇め、背負った大きな籠の紐を無造作に解くと、それを石畳の床へと投げ出した。
鈍い音と共に、籠の中から中身が転がり出る。
人間の、生首であった。
「「ヒィィ!」」
ランスローネとエーリカは恐怖に慄いて身を寄せ合う。
「おいおい、酒が不味くなるじゃねえか」
シュミットは眉を顰め、ロランドも押し黙る。
だが、シャルマーニは眉一つ動かさず、パンを千切って口に入れて咀嚼する。
「……騒がしい奴らだぜ。
開通したばかりの『蛇の道』をうろついてたネズミどもを掃除しておいたよ、姉上。
昨夜は宴会だったようだけど、あたしの分の肉は残ってるんだろうね?」
アイネは黄金の縦割れ瞳孔の双眸を細める。
「無論だ。すぐに用意させよう」
「あたしの部屋に運んでおいてくれ。ひとっ風呂浴びてから、ゆっくり食べるぜ」
シャルマーニに人懐っこい笑みを向け、ランスローネを一瞥すると、アイネは籠と生首を放りっぱなしにして大広間から出て行こうとするが、ランスローネが「ちょい待ちや」と呼び止めた。
「あんたそれ、放ったらかしにするつもりかいな? 片付けて行きいや」
「──あ?」
アイネは振り向き、猛禽のような黄金の瞳が、ランスローネの翡翠色の縦割れ瞳孔を射抜くように見据える。
「ロ、ローネさん……!」
エーリカが止めようとするが、ランスローネは引き下がらず、アイネと睨み合う。
一触即発の空気に、シュミットは期待するような笑みを浮かべ、エーリカはオロオロとし、ロランドは固唾を呑んで見守る。
「アイネよ、後で検分する。礼拝堂に運んでオリビエに預けておけ」
ここでシャルマーニが裁定を下した。
「チッ……」
アイネは舌打ちすると、溢れた生首を拾い上げ、籠を背負って大広間から出て行った。
「ふぅ……」
ランスローネは椅子に背をもたれて息をつく。
「ガハハハ! やるじゃねえかランスローネ!」
「うむ、拙者も見直したぞ」
「ローネさん、凄いです。あんな怖そうな人に一歩も引かないで……私も、見習わないと」
「うちから見たら、ちょっと粋ってるだけのやんちゃ娘や。もっと怖い人おるしな」
ランスローネはチラリとシャルマーニを見つつ、震える手をグッと握る。
(膝ガクガクや。あんまし関わりたないやっちゃで……)
「ランスローネよ。食事を終えたら、我の部屋に来い。
執務室ではなく、我の私室だ。
お前に次の仕事を命じる」
シャルマーニは席を立ち、大広間から出て行った。
(……私室? 執務室やなくて? なんや、またややこしいこと言われそうな予感がするなぁ……)
ランスローネは不安と期待が入り混じった目で、去り行く白い衣装の背中を見送るのであった。
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