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第八章 鉄の檻、群がる豚、飢えた狼
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アルバの野の戦いより一週間後──。
旅の果てに見えてきたのは、天を突く黒煙の柱だった。
グレイヴェリア帝国の首都、シュタールグラード。
『煙と鉄と、凍てつく風の都』の異名を持つこの巨大都市は、黒い岩と鉄板で補強された三重の城壁に囲まれ、美しさよりも「絶対に壊れないこと」を最優先した要塞のような威容を誇っている。
「あーあ、帰ってきちゃった。相変わらず鉄臭くて、空が灰色ね」
馬上で空を見上げたルスラーナは、心底うんざりしたように溜息をついた。
帝都の空は、絶え間なく稼働する製鉄所や武器工房が吐き出す煤煙で常に曇っており、降り積もる雪さえもうっすらと灰色に染まっている。
「我慢しろ、ルスラーナ。これが我が国の力の源泉だ」
隣を行くヴァレンティンは涼しい顔だ。
一行は城門をくぐり、市街地を進む。
最初に通るのは、石造りの集合住宅が密集して石炭と鉄の匂いが充満する『鉄の窯』──下層民区だ。
凱旋パレード──というには、あまりに熱のない行進だった。
沿道に集まった民衆の目は、英雄を称える輝きではなく、飢えた犬のように濁っていた。
「おい、南征軍が帰ってきたぞ」
「略奪品はあるのか?」
「配給が増えりゃいいんだが……」
彼らの関心は、ルスラーナたちの武勲ではなく、彼女たちが戦地から収奪して持ち帰った──ように見える食料に向けられていた。
路地裏では、家畜の血と内臓を煮込んだ『血のスープ』をすする者たちの姿が見える。
「……嫌な匂い。
戦場の死臭の方が、まだ生きる力が漲っている分だけマシだわ」
ルスラーナは鼻を覆う。
ここにあるのは、生殺与奪の権を握られた家畜たちの、諦めと停滞の臭いだった。
『鉄の釜』にある、薄汚い酒場の奥まった席。
昼間から安酒をあおる労働者たちの喧騒に紛れ、目立たない服装をした二人の男が、ひっそりと会話を交わしていた。
「……おい、聞いたか? 『計画』は中止だ」
男の一人が、苦虫を噛み潰したような顔で囁く。
「はあ? 中止だと?
北方のボロディン伯爵は、やる気だったはずだぞ。
『これ以上、中央に搾取されてたまるか。飢え死にするくらいなら、一矢報いてやる』ってな」
もう一人の男が抗議するが、最初の男は首を横に振った。
「ああ、確かに昨夜まではな。
だが、今朝になって急に連絡が途絶えた。
そして先刻、伯爵の使いから震える字で書かれた手紙が届いたよ。
『今は動けない。時期を待つ』とな」
「なんでだよ。今が好機だろ?
主力軍は西と東に張り付いてて、帝都は手薄だ」
「……窓の外を見てみろ」
男が顎でしゃくった先。
通りでは、南征から帰還した軍のパレードが行われていた。
その先頭を行く、黒い甲冑の女騎士──ルスラーナの姿が見える。
「『鉄蝗』が、帰ってきやがったんだよ」
「あぁ……あの『チョルニボフの黒姫』か」
「ボロディン伯爵は悟っちまったんだ。
もし今、反乱の旗を上げればどうなるか。
皇帝は間違いなく、手元に戻ってきた『あの怪物』を鎮圧に向かわせるだろう」
男は酒場の窓越しに、ルスラーナの横顔を忌々しげに睨む。
「飢えた地方貴族の反乱軍なんぞ、あの女にとっちゃ格好の餌だ。
物理的にすり潰され、文字通り食い尽くされる。
伯爵は言っていたよ。
『飢えて死ぬのは怖いが、あの死神に生きたまま引き裂かれるのはもっと怖い』とな」
「チッ……たった一人の女が、数万の反乱軍を抑止してるってのかよ。バケモンだな」
男たちは、恐怖と諦めが入り混じった溜息をつき、安酒を一気に流し込んだ。
帝国の歪な平和は、一人の皇女の圧倒的な暴力性によって、皮肉にも保たれているのであった。
*
ルスラーナたちが下層民区を抜け、小高い丘の上にある上層民区『剣の丘』へ登ると、空気は一変した。
南方のルミナ王国より購入した魔導具によって暖房が効き、煤煙も届かないこのエリアには、皇族や高位貴族たちの邸宅が立ち並んでいる。
その中心に聳えるのが、皇城『黒鉄宮』だ。
華美な装飾を排し、無骨な黒い槍のように天を刺す城。
その威圧的な正門の前で、ヴァレンティン率いる一行は足を止めた。
「……ここから先へ進めるのは、皇族の方々のみ。
親衛隊の皆様は、城外の兵舎にて待機を命じられております」
近衛兵が冷淡な口調で告げる。
当然の処置であろう。
いかに凱旋とはいえ、武装した私兵を三百も、皇帝の寝所近くに入れるわけにはいかないのだ。
「承知した。皆はここで待て」
ヴァレンティンは短く命じると、ルスラーナだけを伴って黒い門をくぐった。
武器も、兵も持たず、たった二人きり。
「ちぇっ……あいつらがいれば、こんなところ半日で制圧出来るのに」
ルスラーナが小声でぼやく。
「その気概やよし──だが、我慢しろ。
ここでお前が暴れたら、それこそ父上の思う壺だぞ」
「はいはい……」
謁見の間へと続く長い回廊。
そこで、待ち構えていたかのように一行の行く手を阻む者たちがいた。
「やあ、ヴァレンティン。そしてルスラーナ。
泥遊びから帰ってきたのかい?」
嘲るような声と共に現れたのは、煌びやかな軍服に身を包んだ金髪の男だった。
第一皇子、マクシミリアン・オブ・グレイヴェリア。
ヴァレンティンの異母兄であり、次期皇帝の座に最も近いとされる男だ。
その背後には、彼に取り入る貴族たちが腰巾着のように控えている。
「マクシミリアン兄上。
お出迎え感謝します。
南方の害虫駆除を終え、ただいま戻りました」
ヴァレンティンは恭しく礼をするが、マクシミリアンは鼻で笑った。
「害虫駆除、ね。
たかが一万や二万の小競り合いで、随分と大層な報告書を送ってきたものだ。
私が担当する西方戦線では、六万の大軍が対峙しているのだよ。
規模が違いすぎて、君たちの遊びが羨ましくなるよ」
マクシミリアンは、主力軍を握る自らの権勢を誇示し、ヴァレンティンの功績を矮小化してみせる。
「あら、ミクロミリアンの兄上。
その六万の大軍は、毎日どれだけの食料を消費しているのかしら?
数だけ多くても、ただ飯食らいの穀潰しなら、いない方がマシじゃない?」
ルスラーナが横から口を挟む。
ミクロ──微小と、露骨に名を呼び間違えるその不遜な態度に、マクシミリアンの眉がピクリと動いた。
「……相変わらず口の減らない半獣だ。
その卑しい血が、神聖な黒鉄宮を汚していることに気づかんのか?」
「その言いぐさだと、半分混じってる皇帝陛下の血も貶めてるわよ。
そんなことも分からないからミクロなのよ」
「貴様……!」
マクシミリアンとルスラーナの視線がぶつかり、目に見えぬ火花が散る。
「あらあら、マクシミリアンお兄様。
野良犬に言葉が通じると思ってはいけませんわ」
鈴を転がすような、しかし毒を含んだ声が響いた。
現れたのは、豪奢なドレスを纏った美女。
第一皇女、ベアトリス・オブ・グレイヴェリアだ。
彼女は扇子で口元を隠し、ルスラーナを品定めするようにじろじろと眺めた。
「見てください、その無骨な甲冑。
煤と脂の臭いが染み付いて真っ黒……ああ、臭い。
やはりオーガの血を引く者は、どれだけ着飾っても野蛮な獣の臭いが抜けませんのね」
ベアトリスの取り巻きの貴婦人たちが、「まあ汚らわしい」「獣臭いわ」とクスクス笑う。
ルスラーナはこめかみに青筋が浮かべ、拳を握り締める。
(……このズヴィーどもが。
自慢してる安物の扇子ごと顔面を握り潰してやるぞ!)
声には出さず、『豚』を意味する古語で罵り、殺気を漏れ出しかけたその時、ヴァレンティンがそっと妹の肩に手を置いた。
「──ベアトリス姉上。
ルスラーナの甲冑の汚れは、帝国のために戦った名誉の勲章です。
温室で造花を愛でるだけの貴女には、少々刺激が強すぎたかもしれませんね」
ヴァレンティンは微笑んだまま言い返す。
「なっ……!」
顔を真っ赤にするベアトリスを無視し、ヴァレンティンはマクシミリアンに向き直る。
「では、陛下がお待ちですので。失礼」
兄妹は慇懃無礼に一礼すると、立ち尽くす異母兄姉たちを残して回廊を進もうとする。
「──お待ちになって、ヴァレンティン」
立ち去ろうとする兄妹の背に、ベアトリスの粘り着くような声がかかる。
「わたくしの可愛い友人が、貴方たちに挨拶したいと申しておりますの。
ほら、エレオノーラ」
ベアトリスの背後から進み出た貴族令嬢は、氷のような冷ややかな視線でヴァレンティンを睨み据えた。
ゼノ男爵令嬢エレオノーラ。
かつてガルド・アイゼン千人長に求婚し、老馬を選ばれたことでプライドをズタズタにされた彼女だが、今や、第一皇女の取り巻きとして確固たる地位を築いていた。
「お久しゅうございます、ヴァレンティン殿下。
聞けば、あの薄汚い老騎士──ガルドとか申しましたか?
あのような礼儀知らずの狂人を重用されているそうですね」
エレオノーラは扇子をパチリと閉じる。
「主人が野蛮なら、飼い犬もまた躾がなっていないようで。
あのような粗忽者と持ち上げる殿下の審美眼、疑わしゅうございますわ」
彼女は、ガルドに抱く屈辱を、その主人であるヴァレンティンへの攻撃に転嫁したのだ。
ガルド本人はその頃、帝都の喧騒を離れて、自宅で茶をのんびりと啜っていた──が、ここでは恰好の攻撃材料だった。
「……エレオノーラ嬢。
ガルド千人長は、私欲より信義を重んじる、帝国騎士の鑑ですよ。
彼の無骨さを愛せないようでは、武門の妻は務まりますまい」
ヴァレンティンがさらりと受け流すと、エレオノーラは屈辱に顔を歪める。
「まあ、ヴァレンティン。淑女をその様に辱めるなど。
昔は可愛かったのに、ルスラーナを侍らせるから変わってしまったのね」
ベアトリスが口を挟む。
「お、お姉様方……もう、やめましょうよ……」
その時、ベアトリスの後ろから、おずおずと小さな声がした。
線の細い、儚げな少女。
第四皇女シルヴィア・オブ・グレイヴェリアだ。
「お黙り、シルヴィア!
貴女のような弱味噌が口を挟むことではありません!」
「ひっ……ご、ごめんなさい……」
ベアトリスに叱責され、シルヴィアは小動物のように震えて縮こまる。
だが、その潤んだ瞳は、チラチラとルスラーナの方を見ていた。
彼女にとって、強く、逞しく、自由奔放なルスラーナは、密かな憧れの対象なのだ。
「……弱いものいじめしてんじゃないわよズヴィーが」
ルスラーナの堪忍袋の緒が切れかけた、その時。
「では、これにて失礼」
ヴァレンティンは優雅に一礼すると、シルヴィアにだけ優しく微笑みかけ、ルスラーナの手を強く引いて歩き出した。
「……覚えてらっしゃい、泥つきの英雄気取りども!」
背後でベアトリスのヒステリックな声が響くが、二人は振り返らなかった。
*
謁見の間。
玉座に鎮座していたのは、肉の塊だった。
グレイヴェリア帝国皇帝、ガイゼリック・オブ・グレイヴェリア。
かつては勇猛な武人だったとも言われるが、今の彼は飽食に溺れ、肥え太った巨体を玉座に沈めている。
だが、脂肪に埋もれたその双眸だけは、老獪な支配者の光を宿していた。
「面を上げよ」
重々しい声が響き、ヴァレンティンとルスラーナは顔を上げる。
「ヴァレンティン、そしてルスラーナよ。
南征、大儀であった。
エルバニアの古狸グラハムを退け、アルバの野を確保したこと、予も鼻が高いぞ」
「はっ。全ては陛下の御威光のおかげであります」
ヴァレンティンが答える。
「うむ。褒美として、ヴァレンティンには勲一等鉄十字章を、ルスラーナには宝剣を下賜しよう」
侍従が盆に乗せた勲章と剣を持ってく。
(……ケチなズヴィーね。
剣なんて売るほどあるわよ。
兄上には、領地や権限。
あたしには、お肉を寄越しなさいよ、お肉を!)
ルスラーナが内心で悪態をついていると、ガイゼリック帝はニタリと口元を歪めた。
「して、ヴァレンティンよ。
聞けば、我が弟ゴーマン公爵を、最前線の砦に残してきたそうではないか」
「はい。叔父上のたっての希望でしたので、その勇猛な忠誠心に報いるべく、名誉ある任務をお任せしました」
「ククク……よかろう。
あの役立たずの弟も、捨て駒くらいにはなろうて。
維持費がかかるだけのズヴィーを、よくぞ整理してくれた」
ガイゼリック帝は愉快そうに喉を鳴らす。
肉親の情など欠片もない。あるのは損得勘定だけだ。
((──どの口が言うか!))
この時、ヴァレンティンとルスラーナ兄妹の心の内は見事にシンクロしていた。
「さて、南は落ち着いた。
だが、帝国には安息の時などない。
ヴァレンティン、ルスラーナ。其方らに新たな勅命を下す」
ガイゼリック帝が指を鳴らして合図すると、侍従武官が台車に乗った立体地図を手押ししてきた。
皇帝が指示棒で指し示したのは、帝国の東方。
「東の『灰色の森』だ。
近頃、森に棲む亜人ども──魔族が活発化し、国境付近の村を襲っているとの報告がある。
帝国の秩序を乱す害獣どもを、根絶やしにしてまいれ」
謁見の間にざわめきが走る。
『灰色の森』。
そこは鬱蒼とした原生林が広がる天然の要害であり、帝国軍が長年攻めあぐねている泥沼の戦場だ。
重騎兵の機動力は封じられ、地の利を持つ亜人たちのゲリラ戦に消耗を強いられる、誰も行きたがらない「ゴミ捨て場」。
「……東方、でありますか」
ヴァレンティンの表情が変わらないのを見て、ガイゼリック帝は意地悪く目を細めた。
「不服か?
なに、ルスラーナには、人里よりも森の方がお似合いであろう?
同じ人ならざる者同士、仲良く殺し合ってくるといい。
だが、ルスラーナを御せるのはヴァレンティンのみ。
故に其方も行くのだ」
それは明白な左遷命令であり、厄介払いであった。
マクシミリアン派の貴族たちが、扇子の陰で嘲笑を漏らす。
ルスラーナの堪忍袋の緒が切れかけた、その時。
「──謹んで、お受けいたします」
ヴァレンティンが深々と頭を下げた。
「我が妹、ルスラーナの『破城槌』が、灰色の森の木々ごと亜人を粉砕することをお約束しましょう」
「うむ、期待しておるぞ。
……下がってよい」
謁見を終えた二人が、廊下を歩いていると、背後からパタパタと足音が追いかけてきた。
「あ、あのっ……ルスラーナお姉様! ヴァレンティンお兄様!」
振り返ると、第四皇女シルヴィアが息を切らせて立っていた。
「シルヴィア? どうしたのよ、あのズヴィー皇女──ベアトリスに見つかったら怒られるわよ」
ルスラーナが驚いて声をかけると、シルヴィアはもじもじしながら、小さな包みを差し出した。
「これ……厨房から、こっそり貰ってきたクッキーです。
灰色の森は、とても遠くて寂しい場所だと聞きました。
だから、その……お腹が空いたら、食べてください」
それは、飢えた帝国において、宝石よりも価値のある「甘味」だった。
「……あんたねぇ。
こんなことで私に恩を売っても、いいことないわよ?」
ルスラーナは呆れたように言うが、その顔は少しだけ綻んでいた。
彼女は包みをひったくるように受け取ると、乱暴に、しかし優しくシルヴィアの頭を撫でた。
「ありがと。大事に食べるわ。
あんたも、あの意地悪女にいじめられて泣くんじゃないわよ」
「は、はいっ! 武運を、お祈りしています!」
シルヴィアは顔を赤らめて一礼し、パタパタと走り去っていった。
「……ふん。この国にも、まだマシな人間がいたもんだわ」
ルスラーナはクッキーの匂いを嗅ぎ、大切そうに懐に仕舞った。
*
離宮にあてがわれた自室に戻ったルスラーナは、下賜された宝剣をソファーに放り投げた。
「なによ、あのズヴィー帝!
あいつも、マクシミリアンも、ベアトリスも!
みんなまとめてミンチにして、馬の餌にしてやりたいわ!」
怒り心頭の妹に、ヴァレンティンはワインを注いでやりながら、「不味くて馬の方が食わんさ」と静かに笑った。
「そう怒るな。予想通りではないか」
「予想通りって……左遷じゃない、これ!
あんなジメジメした森、美味しいご飯なんてないわよ!」
「いや、これは好機だ」
ヴァレンティンは窓辺に立ち、灰色の空を見上げる。
「マクシミリアン兄上は西方六万を、父上は中央三万を握っている。
正面からぶつかれば、我々に勝ち目はない。
だが、東方には何がある?」
「何があるって……木と、虫と、反骨精神旺盛な亜人たちだけでしょ?」
「そうだ。帝国に従わぬ、強力な『亜人』たちがいる」
ヴァレンティンの瞳に、冷たく鋭い野心の光が宿る。
「エルフの魔法、ドワーフの技術、獣人の身体能力……。
もし、それらを我々の手中に収めることができれば?
それは、父上も兄上も持っていない、我々だけの『力』となる」
「……! 兄上、まさか……」
「討伐する振りをして、取り込むのだ。
ルスラーナ、お前の部下には、うってつけの人材がいただろう?」
「あ……ローネ!」
ルスラーナはポンと手を打つ。
エルフと人間の混血児ランスローネ。
彼女が交渉の鍵になる。
「そういうことだ。
父上は我々をゴミ捨て場に送ったつもりだろうが、そこが宝の山だと知れば、どんな顔をするかな」
ヴァレンティンはグラスを傾け、不敵に微笑む。
「行こう、ルスラーナ。東へ。
新たな獲物を食らい尽くし、より強大になって帰ってくるために」
「ふふっ……そうね。
森の『珍味』も、悪くないかもね」
ルスラーナもまた、肉食獣の笑みを浮かべた。
腐敗した帝都を背に、鉄の蝗たちは次なる狩り場へと飛び立とうとしていた。
旅の果てに見えてきたのは、天を突く黒煙の柱だった。
グレイヴェリア帝国の首都、シュタールグラード。
『煙と鉄と、凍てつく風の都』の異名を持つこの巨大都市は、黒い岩と鉄板で補強された三重の城壁に囲まれ、美しさよりも「絶対に壊れないこと」を最優先した要塞のような威容を誇っている。
「あーあ、帰ってきちゃった。相変わらず鉄臭くて、空が灰色ね」
馬上で空を見上げたルスラーナは、心底うんざりしたように溜息をついた。
帝都の空は、絶え間なく稼働する製鉄所や武器工房が吐き出す煤煙で常に曇っており、降り積もる雪さえもうっすらと灰色に染まっている。
「我慢しろ、ルスラーナ。これが我が国の力の源泉だ」
隣を行くヴァレンティンは涼しい顔だ。
一行は城門をくぐり、市街地を進む。
最初に通るのは、石造りの集合住宅が密集して石炭と鉄の匂いが充満する『鉄の窯』──下層民区だ。
凱旋パレード──というには、あまりに熱のない行進だった。
沿道に集まった民衆の目は、英雄を称える輝きではなく、飢えた犬のように濁っていた。
「おい、南征軍が帰ってきたぞ」
「略奪品はあるのか?」
「配給が増えりゃいいんだが……」
彼らの関心は、ルスラーナたちの武勲ではなく、彼女たちが戦地から収奪して持ち帰った──ように見える食料に向けられていた。
路地裏では、家畜の血と内臓を煮込んだ『血のスープ』をすする者たちの姿が見える。
「……嫌な匂い。
戦場の死臭の方が、まだ生きる力が漲っている分だけマシだわ」
ルスラーナは鼻を覆う。
ここにあるのは、生殺与奪の権を握られた家畜たちの、諦めと停滞の臭いだった。
『鉄の釜』にある、薄汚い酒場の奥まった席。
昼間から安酒をあおる労働者たちの喧騒に紛れ、目立たない服装をした二人の男が、ひっそりと会話を交わしていた。
「……おい、聞いたか? 『計画』は中止だ」
男の一人が、苦虫を噛み潰したような顔で囁く。
「はあ? 中止だと?
北方のボロディン伯爵は、やる気だったはずだぞ。
『これ以上、中央に搾取されてたまるか。飢え死にするくらいなら、一矢報いてやる』ってな」
もう一人の男が抗議するが、最初の男は首を横に振った。
「ああ、確かに昨夜まではな。
だが、今朝になって急に連絡が途絶えた。
そして先刻、伯爵の使いから震える字で書かれた手紙が届いたよ。
『今は動けない。時期を待つ』とな」
「なんでだよ。今が好機だろ?
主力軍は西と東に張り付いてて、帝都は手薄だ」
「……窓の外を見てみろ」
男が顎でしゃくった先。
通りでは、南征から帰還した軍のパレードが行われていた。
その先頭を行く、黒い甲冑の女騎士──ルスラーナの姿が見える。
「『鉄蝗』が、帰ってきやがったんだよ」
「あぁ……あの『チョルニボフの黒姫』か」
「ボロディン伯爵は悟っちまったんだ。
もし今、反乱の旗を上げればどうなるか。
皇帝は間違いなく、手元に戻ってきた『あの怪物』を鎮圧に向かわせるだろう」
男は酒場の窓越しに、ルスラーナの横顔を忌々しげに睨む。
「飢えた地方貴族の反乱軍なんぞ、あの女にとっちゃ格好の餌だ。
物理的にすり潰され、文字通り食い尽くされる。
伯爵は言っていたよ。
『飢えて死ぬのは怖いが、あの死神に生きたまま引き裂かれるのはもっと怖い』とな」
「チッ……たった一人の女が、数万の反乱軍を抑止してるってのかよ。バケモンだな」
男たちは、恐怖と諦めが入り混じった溜息をつき、安酒を一気に流し込んだ。
帝国の歪な平和は、一人の皇女の圧倒的な暴力性によって、皮肉にも保たれているのであった。
*
ルスラーナたちが下層民区を抜け、小高い丘の上にある上層民区『剣の丘』へ登ると、空気は一変した。
南方のルミナ王国より購入した魔導具によって暖房が効き、煤煙も届かないこのエリアには、皇族や高位貴族たちの邸宅が立ち並んでいる。
その中心に聳えるのが、皇城『黒鉄宮』だ。
華美な装飾を排し、無骨な黒い槍のように天を刺す城。
その威圧的な正門の前で、ヴァレンティン率いる一行は足を止めた。
「……ここから先へ進めるのは、皇族の方々のみ。
親衛隊の皆様は、城外の兵舎にて待機を命じられております」
近衛兵が冷淡な口調で告げる。
当然の処置であろう。
いかに凱旋とはいえ、武装した私兵を三百も、皇帝の寝所近くに入れるわけにはいかないのだ。
「承知した。皆はここで待て」
ヴァレンティンは短く命じると、ルスラーナだけを伴って黒い門をくぐった。
武器も、兵も持たず、たった二人きり。
「ちぇっ……あいつらがいれば、こんなところ半日で制圧出来るのに」
ルスラーナが小声でぼやく。
「その気概やよし──だが、我慢しろ。
ここでお前が暴れたら、それこそ父上の思う壺だぞ」
「はいはい……」
謁見の間へと続く長い回廊。
そこで、待ち構えていたかのように一行の行く手を阻む者たちがいた。
「やあ、ヴァレンティン。そしてルスラーナ。
泥遊びから帰ってきたのかい?」
嘲るような声と共に現れたのは、煌びやかな軍服に身を包んだ金髪の男だった。
第一皇子、マクシミリアン・オブ・グレイヴェリア。
ヴァレンティンの異母兄であり、次期皇帝の座に最も近いとされる男だ。
その背後には、彼に取り入る貴族たちが腰巾着のように控えている。
「マクシミリアン兄上。
お出迎え感謝します。
南方の害虫駆除を終え、ただいま戻りました」
ヴァレンティンは恭しく礼をするが、マクシミリアンは鼻で笑った。
「害虫駆除、ね。
たかが一万や二万の小競り合いで、随分と大層な報告書を送ってきたものだ。
私が担当する西方戦線では、六万の大軍が対峙しているのだよ。
規模が違いすぎて、君たちの遊びが羨ましくなるよ」
マクシミリアンは、主力軍を握る自らの権勢を誇示し、ヴァレンティンの功績を矮小化してみせる。
「あら、ミクロミリアンの兄上。
その六万の大軍は、毎日どれだけの食料を消費しているのかしら?
数だけ多くても、ただ飯食らいの穀潰しなら、いない方がマシじゃない?」
ルスラーナが横から口を挟む。
ミクロ──微小と、露骨に名を呼び間違えるその不遜な態度に、マクシミリアンの眉がピクリと動いた。
「……相変わらず口の減らない半獣だ。
その卑しい血が、神聖な黒鉄宮を汚していることに気づかんのか?」
「その言いぐさだと、半分混じってる皇帝陛下の血も貶めてるわよ。
そんなことも分からないからミクロなのよ」
「貴様……!」
マクシミリアンとルスラーナの視線がぶつかり、目に見えぬ火花が散る。
「あらあら、マクシミリアンお兄様。
野良犬に言葉が通じると思ってはいけませんわ」
鈴を転がすような、しかし毒を含んだ声が響いた。
現れたのは、豪奢なドレスを纏った美女。
第一皇女、ベアトリス・オブ・グレイヴェリアだ。
彼女は扇子で口元を隠し、ルスラーナを品定めするようにじろじろと眺めた。
「見てください、その無骨な甲冑。
煤と脂の臭いが染み付いて真っ黒……ああ、臭い。
やはりオーガの血を引く者は、どれだけ着飾っても野蛮な獣の臭いが抜けませんのね」
ベアトリスの取り巻きの貴婦人たちが、「まあ汚らわしい」「獣臭いわ」とクスクス笑う。
ルスラーナはこめかみに青筋が浮かべ、拳を握り締める。
(……このズヴィーどもが。
自慢してる安物の扇子ごと顔面を握り潰してやるぞ!)
声には出さず、『豚』を意味する古語で罵り、殺気を漏れ出しかけたその時、ヴァレンティンがそっと妹の肩に手を置いた。
「──ベアトリス姉上。
ルスラーナの甲冑の汚れは、帝国のために戦った名誉の勲章です。
温室で造花を愛でるだけの貴女には、少々刺激が強すぎたかもしれませんね」
ヴァレンティンは微笑んだまま言い返す。
「なっ……!」
顔を真っ赤にするベアトリスを無視し、ヴァレンティンはマクシミリアンに向き直る。
「では、陛下がお待ちですので。失礼」
兄妹は慇懃無礼に一礼すると、立ち尽くす異母兄姉たちを残して回廊を進もうとする。
「──お待ちになって、ヴァレンティン」
立ち去ろうとする兄妹の背に、ベアトリスの粘り着くような声がかかる。
「わたくしの可愛い友人が、貴方たちに挨拶したいと申しておりますの。
ほら、エレオノーラ」
ベアトリスの背後から進み出た貴族令嬢は、氷のような冷ややかな視線でヴァレンティンを睨み据えた。
ゼノ男爵令嬢エレオノーラ。
かつてガルド・アイゼン千人長に求婚し、老馬を選ばれたことでプライドをズタズタにされた彼女だが、今や、第一皇女の取り巻きとして確固たる地位を築いていた。
「お久しゅうございます、ヴァレンティン殿下。
聞けば、あの薄汚い老騎士──ガルドとか申しましたか?
あのような礼儀知らずの狂人を重用されているそうですね」
エレオノーラは扇子をパチリと閉じる。
「主人が野蛮なら、飼い犬もまた躾がなっていないようで。
あのような粗忽者と持ち上げる殿下の審美眼、疑わしゅうございますわ」
彼女は、ガルドに抱く屈辱を、その主人であるヴァレンティンへの攻撃に転嫁したのだ。
ガルド本人はその頃、帝都の喧騒を離れて、自宅で茶をのんびりと啜っていた──が、ここでは恰好の攻撃材料だった。
「……エレオノーラ嬢。
ガルド千人長は、私欲より信義を重んじる、帝国騎士の鑑ですよ。
彼の無骨さを愛せないようでは、武門の妻は務まりますまい」
ヴァレンティンがさらりと受け流すと、エレオノーラは屈辱に顔を歪める。
「まあ、ヴァレンティン。淑女をその様に辱めるなど。
昔は可愛かったのに、ルスラーナを侍らせるから変わってしまったのね」
ベアトリスが口を挟む。
「お、お姉様方……もう、やめましょうよ……」
その時、ベアトリスの後ろから、おずおずと小さな声がした。
線の細い、儚げな少女。
第四皇女シルヴィア・オブ・グレイヴェリアだ。
「お黙り、シルヴィア!
貴女のような弱味噌が口を挟むことではありません!」
「ひっ……ご、ごめんなさい……」
ベアトリスに叱責され、シルヴィアは小動物のように震えて縮こまる。
だが、その潤んだ瞳は、チラチラとルスラーナの方を見ていた。
彼女にとって、強く、逞しく、自由奔放なルスラーナは、密かな憧れの対象なのだ。
「……弱いものいじめしてんじゃないわよズヴィーが」
ルスラーナの堪忍袋の緒が切れかけた、その時。
「では、これにて失礼」
ヴァレンティンは優雅に一礼すると、シルヴィアにだけ優しく微笑みかけ、ルスラーナの手を強く引いて歩き出した。
「……覚えてらっしゃい、泥つきの英雄気取りども!」
背後でベアトリスのヒステリックな声が響くが、二人は振り返らなかった。
*
謁見の間。
玉座に鎮座していたのは、肉の塊だった。
グレイヴェリア帝国皇帝、ガイゼリック・オブ・グレイヴェリア。
かつては勇猛な武人だったとも言われるが、今の彼は飽食に溺れ、肥え太った巨体を玉座に沈めている。
だが、脂肪に埋もれたその双眸だけは、老獪な支配者の光を宿していた。
「面を上げよ」
重々しい声が響き、ヴァレンティンとルスラーナは顔を上げる。
「ヴァレンティン、そしてルスラーナよ。
南征、大儀であった。
エルバニアの古狸グラハムを退け、アルバの野を確保したこと、予も鼻が高いぞ」
「はっ。全ては陛下の御威光のおかげであります」
ヴァレンティンが答える。
「うむ。褒美として、ヴァレンティンには勲一等鉄十字章を、ルスラーナには宝剣を下賜しよう」
侍従が盆に乗せた勲章と剣を持ってく。
(……ケチなズヴィーね。
剣なんて売るほどあるわよ。
兄上には、領地や権限。
あたしには、お肉を寄越しなさいよ、お肉を!)
ルスラーナが内心で悪態をついていると、ガイゼリック帝はニタリと口元を歪めた。
「して、ヴァレンティンよ。
聞けば、我が弟ゴーマン公爵を、最前線の砦に残してきたそうではないか」
「はい。叔父上のたっての希望でしたので、その勇猛な忠誠心に報いるべく、名誉ある任務をお任せしました」
「ククク……よかろう。
あの役立たずの弟も、捨て駒くらいにはなろうて。
維持費がかかるだけのズヴィーを、よくぞ整理してくれた」
ガイゼリック帝は愉快そうに喉を鳴らす。
肉親の情など欠片もない。あるのは損得勘定だけだ。
((──どの口が言うか!))
この時、ヴァレンティンとルスラーナ兄妹の心の内は見事にシンクロしていた。
「さて、南は落ち着いた。
だが、帝国には安息の時などない。
ヴァレンティン、ルスラーナ。其方らに新たな勅命を下す」
ガイゼリック帝が指を鳴らして合図すると、侍従武官が台車に乗った立体地図を手押ししてきた。
皇帝が指示棒で指し示したのは、帝国の東方。
「東の『灰色の森』だ。
近頃、森に棲む亜人ども──魔族が活発化し、国境付近の村を襲っているとの報告がある。
帝国の秩序を乱す害獣どもを、根絶やしにしてまいれ」
謁見の間にざわめきが走る。
『灰色の森』。
そこは鬱蒼とした原生林が広がる天然の要害であり、帝国軍が長年攻めあぐねている泥沼の戦場だ。
重騎兵の機動力は封じられ、地の利を持つ亜人たちのゲリラ戦に消耗を強いられる、誰も行きたがらない「ゴミ捨て場」。
「……東方、でありますか」
ヴァレンティンの表情が変わらないのを見て、ガイゼリック帝は意地悪く目を細めた。
「不服か?
なに、ルスラーナには、人里よりも森の方がお似合いであろう?
同じ人ならざる者同士、仲良く殺し合ってくるといい。
だが、ルスラーナを御せるのはヴァレンティンのみ。
故に其方も行くのだ」
それは明白な左遷命令であり、厄介払いであった。
マクシミリアン派の貴族たちが、扇子の陰で嘲笑を漏らす。
ルスラーナの堪忍袋の緒が切れかけた、その時。
「──謹んで、お受けいたします」
ヴァレンティンが深々と頭を下げた。
「我が妹、ルスラーナの『破城槌』が、灰色の森の木々ごと亜人を粉砕することをお約束しましょう」
「うむ、期待しておるぞ。
……下がってよい」
謁見を終えた二人が、廊下を歩いていると、背後からパタパタと足音が追いかけてきた。
「あ、あのっ……ルスラーナお姉様! ヴァレンティンお兄様!」
振り返ると、第四皇女シルヴィアが息を切らせて立っていた。
「シルヴィア? どうしたのよ、あのズヴィー皇女──ベアトリスに見つかったら怒られるわよ」
ルスラーナが驚いて声をかけると、シルヴィアはもじもじしながら、小さな包みを差し出した。
「これ……厨房から、こっそり貰ってきたクッキーです。
灰色の森は、とても遠くて寂しい場所だと聞きました。
だから、その……お腹が空いたら、食べてください」
それは、飢えた帝国において、宝石よりも価値のある「甘味」だった。
「……あんたねぇ。
こんなことで私に恩を売っても、いいことないわよ?」
ルスラーナは呆れたように言うが、その顔は少しだけ綻んでいた。
彼女は包みをひったくるように受け取ると、乱暴に、しかし優しくシルヴィアの頭を撫でた。
「ありがと。大事に食べるわ。
あんたも、あの意地悪女にいじめられて泣くんじゃないわよ」
「は、はいっ! 武運を、お祈りしています!」
シルヴィアは顔を赤らめて一礼し、パタパタと走り去っていった。
「……ふん。この国にも、まだマシな人間がいたもんだわ」
ルスラーナはクッキーの匂いを嗅ぎ、大切そうに懐に仕舞った。
*
離宮にあてがわれた自室に戻ったルスラーナは、下賜された宝剣をソファーに放り投げた。
「なによ、あのズヴィー帝!
あいつも、マクシミリアンも、ベアトリスも!
みんなまとめてミンチにして、馬の餌にしてやりたいわ!」
怒り心頭の妹に、ヴァレンティンはワインを注いでやりながら、「不味くて馬の方が食わんさ」と静かに笑った。
「そう怒るな。予想通りではないか」
「予想通りって……左遷じゃない、これ!
あんなジメジメした森、美味しいご飯なんてないわよ!」
「いや、これは好機だ」
ヴァレンティンは窓辺に立ち、灰色の空を見上げる。
「マクシミリアン兄上は西方六万を、父上は中央三万を握っている。
正面からぶつかれば、我々に勝ち目はない。
だが、東方には何がある?」
「何があるって……木と、虫と、反骨精神旺盛な亜人たちだけでしょ?」
「そうだ。帝国に従わぬ、強力な『亜人』たちがいる」
ヴァレンティンの瞳に、冷たく鋭い野心の光が宿る。
「エルフの魔法、ドワーフの技術、獣人の身体能力……。
もし、それらを我々の手中に収めることができれば?
それは、父上も兄上も持っていない、我々だけの『力』となる」
「……! 兄上、まさか……」
「討伐する振りをして、取り込むのだ。
ルスラーナ、お前の部下には、うってつけの人材がいただろう?」
「あ……ローネ!」
ルスラーナはポンと手を打つ。
エルフと人間の混血児ランスローネ。
彼女が交渉の鍵になる。
「そういうことだ。
父上は我々をゴミ捨て場に送ったつもりだろうが、そこが宝の山だと知れば、どんな顔をするかな」
ヴァレンティンはグラスを傾け、不敵に微笑む。
「行こう、ルスラーナ。東へ。
新たな獲物を食らい尽くし、より強大になって帰ってくるために」
「ふふっ……そうね。
森の『珍味』も、悪くないかもね」
ルスラーナもまた、肉食獣の笑みを浮かべた。
腐敗した帝都を背に、鉄の蝗たちは次なる狩り場へと飛び立とうとしていた。
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