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#9 野外授業
しおりを挟む青い空、白い雲、そして緑深い森!
(今日は野外授業だ!やったぁ!)
そう、今日は魔法薬の実習に使う野草を取りに森へ来ている。
野外授業の時は制服の上から魔法師のローブを着る。
(本物の魔法師になったみたい)
「皆さん、今日はイモリナ草と月の雫草を摘みますよ。採取してもいいくらいに成長しているか、ちゃんと確認してくださいね」
引率の先生はモリー先生。
ちょっとふくよかな中年の女性の先生で、魔法薬の先生。
イーデン先生は魔法薬についての理論、モリー先生は精製方法を教えてくれている。
(モリー先生も優しくて好きだし)
リーシェが一人で浮かれてると、またアイツ。
後ろからアイツの「ふっ」と言う笑い声が聞こえて、つい振り向いてしまった。
「お前、外大好きだな」
クロードはニヤニヤしている。
「いっ、いいじゃない!」
リーシェは赤くなってそっぽを向いた。
クロードとはあれから何もない。
(あんな恥ずかしいこと忘れちゃいたい)
(あんなことダメだって言いたかったけど、やっぱり次期公爵様は忙しいみたい。でももうないなら、言う必要もないし)
「この森は比較的安全で薬草もたくさん生えてますが、小さい魔獣はいますのでグループで行動してください」
とモリー先生が言った。
「リーシェ、いこっか」
そう言ってきた彼女はクラウディア。
リーシェと同じく地方のホーネル子爵家のご令嬢で、同じく寮生。
おっとりした性格で気も合う。
グループはデイジーとクラウディアと3人。
「うん!」
と返事をして3人は森へと入った。
「月の雫草ないね」
「ないね」
イモリナ草はすぐに見つかったが、月の雫草が見つからない。
月の雫草は白い5枚の花弁の見た目は普通の花だが、茎を切ると白く輝く汁が出る。
この汁が色々な魔法薬の材料になる。
3人で探し始めて大分経つ。
(あっちの方見てみようかな?)
…とリーシェはうっかりグループから離れてしまった。
我を忘れて森の中をウロウロしていると、大きな木の下に小さな木の実が1つ落ちているのに気付いた。
(これは…ミラの実!)
ミラの実は傷薬として優秀な実だ。
(私ドジだし、これは拾っとくべき!)
木の実を拾いながら、ふと木を見上げるとたくさん生っている。
リーシェは木の前で腕を組み、しばし考えた。
(よし…)
気合いを入れると、木を強く押して揺らした。
(なかなか落ちないなぁ。もう一回…)
そして、力を込めて思いっきり押した。
するとコツンコツンと木の実が落ちてきた。
「やったぁ!」
とリーシェは満面の笑みで、木の実を拾おうとしゃがんだ。
その時リーシェの後ろで、ドゴッと大きな音がした。
「………」
嫌な予感がして、恐る恐る後ろを向くと、そこには特大のミニティビーの巢が落ちていた。
ミニティビーはその名の通り小さい蜂なのだが、とにかく群れの数が多く数百~数千の群れを作る。
毒性は低いが、当たり前だが刺されれば痛い。
その群れで襲われれば全身刺されて大変なことになる。
リーシェとミニティビーの巢が目が合った(?)瞬間、巢から黒いミニティビーの大群がブワッと沸いた。
「きゃああああああああああ!!!」
森にリーシェの叫び声が響き渡った。
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