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#18 ディナー
しおりを挟む最後に廃部室に言った日から数日経ったが、クロードは多忙な日々を送っていた。
(クロードは忙しそう。王宮にも通ってるって聞いた。そりゃそうよね、時期公爵様だもん…)
リーシェは教室の机に座って頬杖をついていた。
そして何となく、心の片隅の寂しさが隠せないでいた。
(あんなことしといて…)
と思って、急に恥ずかしくなった。
するとアレクシスがリーシェの元へとやってきて、
「リーシェ、この前のカフェ、今日はどうかな」
と、少し照れた様子で言った。
(アレクシスは私を心配して誘ってくれてるんだ)
リーシェはニコッと笑って、
「うん、いいよ」
と答えた。
ーーー放課後。
アレクシスと二人でやってきた場所を目の前にリーシェは驚いていた。
「ここは…カフェじゃない…!」
アレクシスが用意した馬車に乗って到着したのは、きらびやかな建物の高級レストランだった。
「ここって、予約が取れなくて有名なところじゃ!?」
とリーシェが驚いているとアレクシスは、
「ここはうちが経営してるレストランなんだ。この前のお詫びだよ。ディナーには少し早いけど」
と微笑んだ。
(うっ…ブルジョアめ…!クロードだけじゃなかった!アレクシスはチェスター侯爵家のご子息だった!)
「でも、私制服…」
とリーシェが言うと、
「俺もだ。大丈夫だよ」
と笑顔で答えた。
(アレクシス、きっとわざと着替えなかったんだ)
と、その優しさに心がじんとした。
「アレクシス様、お待ちしておりました」
とドアマンが深々とお辞儀をしている。
中に入ると客も数組いた。
そして、そのうちの一組を見てリーシェはビクッとした。
(クロードとシェリー様…)
二人を余所目に案内された席に座る。
いつもなら高級で美味しそうな料理に夢中になるところが、ソワソワして落ち着かない。
そしてシェリーはとても美しく、きらびやかなドレスを着ている。
リーシェの目にはとても眩しく映った。
クロードもいつもと装いが違い、とても大人っぽく見えた。
「クロードとシェリー様だね」
とアレクシスが言った。
そして落ち着かない様子のリーシェを見て、
「気になる?」と聞いた。
「ううん…」
(シェリー様…)
そのあと食事が運ばれて来たが、リーシェは正直味が分からなかった。
アレクシスとも何か会話をしたが、何を話したか覚えていなかった。
アレクシスはその様子を時々黙って見ていた。
そして帰りーーー。
アレクシスが馬車で送ってくれ、寮に着いた。
「アレクシス、今日はありがとう」
と言って降りようとした時、
「リーシェ!」
と声を張り上げてリーシェの手を掴んで呼び止めた。
リーシェは少しビックリして振り向いた。
「…クロードはやめた方がいい。婚約者がいるんだ」
アレクシスは少し泣きそうな、切ない顔をしている。
「? クロードは友達だよ」
とリーシェは答えた。
「……」
するとアレクシスは何か言いたげだったが、リーシェの手を離して寂しげに笑い、
「うん。そうだね」と言った。
「じゃあ、また明日ね」
とリーシェは笑って言った。
「…うん。また明日」
(今日のアレクシス、何か変だった。どうしたんだろう…)
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