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#22 ミツリ草
しおりを挟む(私、走ってどこに行くんだろう。かなり森の奥まで来てしまった。戻らないとまた誰かに迷惑かけちゃう)
そう思った瞬間だった。
リーシェは緩やかな斜面で滑り、そのまま滑落した。
「いたぁ…」
リーシェは起き上がると斜面を見上げた。
草に覆われた斜面は捕まる木はなかったが、緩やかだったので登ることは出来そうだ。
そう思い立ち上がろうとした。
「いたっ!」
右足首に痛みが走った。
(挫いちゃったんだ…。少し痛みが引くまで待とう)
そう思って目線を変えると、そこにミツリ草が一輪咲いていた。
(ミツリ草は持って帰ろう)
そう思って手を伸ばした時だった。
ポツリと雨が手の甲に当たった。
上を見上げると大粒の雨がポツポツと降ってきた。
そして、それは間もなくしとしと降りだしたのだ。
「ついてない…」
傘もない。
雨が降った斜面は挫いた足で登れないだろう。
ミツリ草は雨に打たれて痛そうに揺れていた。
(足の痛みが引けばまだ登れるかも)
そう思ってリーシェは降り頻る雨の中、暫く座って待つことにした。
だが雨に濡れる度、不安と孤独感が広がっていく。
(アレクシスはどうしたかな。ちゃんとミツリ草見つけれたかな)
(いつもクロードが助けてくれたけど、今回はきっと無理…)
そんなことを考えて、抱えた膝に頬を当てた時だった。
「リーシェ!!」
斜面の上からリーシェを呼ぶ声がした。
斜面を見上げると、そこにはクロードがいた。
リーシェはクロードの顔を見た途端に涙が出そうになった。
「クロード…」
クロードは斜面を滑り降りてくると、リーシェに駆けつけた。
「滑り落ちたのか。ずぶ濡れだ」
クロードはリーシェを抱き抱えて歩きだした。
だが、そう言ったクロードもずぶ濡れだ。
「クロード…」
「またお前はどうしてそんなに鈍臭いんだ」
そんなクロードのいつもの言葉に心から安堵した。
「うっ…うぅ…」
リーシェの目からは安心から涙が溢れた。
「泣くな。鼻水が付く」
そう言ってクロードはリーシェを抱えたまま暫く歩くと、小さな洞窟を見つけた。
洞窟はほら穴程度の大きさだったが、土はまだ乾いていた。
リーシェはずぶ濡れで、ブラウスが透けて胸の形が露になっていた。
クロードは少し赤くなりながら、リーシェを座らせると、
「まず乾かそう」
と言ってリーシェと自分を魔法で乾かした。
そして、
「怪我はしてないのか?」と尋ねた。
「足首を捻ったみたい…」
リーシェがそう言うと、クロードはリーシェの足を触り治癒魔法をかけた。
それから薪も木の枝もないのに、地面に小さな炎を燃やし、二人で並んで座り暖を取った。
「クロード、ありがとう…」
「クロードはどうして私の居場所が分かったの?」
とリーシェが聞いた。
するとクロードは少し罰が悪そうな顔をした。
「…俺は人の魔力を探知する魔法が使える。アレクシスが一人で戻ってきたから…それでリーシェを探した」
(…………)
(それじゃあ、いつも私がドジをした時は探しに来てくれてたの…?ミニティビーに襲われた時も…?)
急に胸がいっぱいになった。
(この胸に広がる、苦しいけど暖かな気持ちは…)
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