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第一章 幼少時代
第三話 義信謀叛
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こうして、永録九年、(1566年)に元服を果たし、上野、箕輪の初陣、(川中島の合戦は除く)を終え、十一月三日に祖父上様の原美濃が亡くなった。
祖父上様は亡くなる前、息子達に与える兵以外に精鋭百人を家臣として譲って下された。
この精鋭百人は、武田家で一番勇猛な赤備えに匹敵し、嬉しい人材である。
また、祖父上様の息子、叔父上達も、今後、何か有れば合力すると約定まで書いてくれた。
こうしている間に駿河の今川義元を殺し、名を挙げた尾張の織田信長を脅威に思ったので、新たな得物の開発を模索していたのである。
しかし、躑躅ヶ崎館にて、俺の功績を苦々しく思っている者がいた。
武田家嫡男、武田太郎義信と親族衆の穴山信君である。
「憎っくき小僧め! 父上の関心を引いておる」
「さようですな義信様、御屋形様は、何故あの様な者を重用するのか? 解りませぬ! 義信様。あの様な浪人者の血筋を、もし、武田に残しては、甲斐、信濃の領地を乗っ取るやも知れぬ! 儂に策がございます。義信様。守役の飯富虎昌や側近の長坂昌国、曽根虎盛達に働きかけるのがよろしいかと……」
「うむ、考えておく……」
こうして、穴山信君に義信はそそのかされ、謀叛を企む切っ掛けとなった。
御屋形様が、上野、長野氏攻めから後に、駿河の今川氏真との同盟を辞め、侵略するとの噂が流れた。
永録十年、六月二日、この噂を聞き、御屋形様にお伺いを立て躑躅ヶ崎館に、家臣の疋田文五郎と率いてる軍勢を伴い守備に向かった。
すると、躑躅ヶ崎館は義信の家臣八十名の襲撃を受け混乱していた。
上杉政虎から奪った太刀で、襲い掛かって来た義信の家臣三人を相手に斬り結び、俺や疋田、上野衆、原衆の圧倒的な武力で義信の家臣を斬り倒し、御屋形様の下に馳せ参じた。
御屋形様も義信に対抗できる家臣を率いていたので、義信の謀叛は失敗し、義信やその家臣達は捕縛された。
義信は、その後自害し、義信謀叛騒動は終わったが、この時、裏で暗躍していた穴山信君の謀叛の関与が解らなかった。
しかし、御屋形様は俺を呼び出し、
「勘蔵。ご苦労であった。よくぞ助けてくれた……。お主に頼みがある。義信の家臣の中に殺すのが惜しい者がいる。その者達を説得し、お主の家臣としてもらいたい。頼むぞ」
義信家臣が捕縛され、牢に閉じ込められてる部屋に行き、そこに居た義信の守役であり、筆頭家老、飯富虎昌や側近の長坂昌国、曽根虎盛達二十名の旗本を家臣にすべく、説得を始めた。
「義信様の家臣の皆様、俺が山本勘蔵にござる。御屋形様から聞いているように、俺の家臣になって頂きたい。お頼み申す!」
「儂の名は、飯富虎昌じゃ。儂が皆の者の替わりに答えよう。否じゃ! 儂達は義信様に忠誠を誓っておる。そなたの様な童に仕える気がせぬ! 殺せ!」
「そなた達は殺せぬ。右目をやろう。そして、そなた達が俺の右目として家臣になって頂きたい」
おれが、右手で右目を太刀で斬り裂こうとした時である。
「待ちなされ。勘蔵殿。何故、それがし達に情けを掛け家臣にしようとする?」
「お主達の様な忠義に厚く、才のある者達を殺すのはあまりにも惜しい。頼む。俺の家臣になってくれ!」
涙ながらに、義信家臣達に平伏した。
「面を上げなされ勘蔵様。この儂、飯富虎昌は勘蔵様に忠誠を誓いまする。皆の者良いな!」
「「「御意!」」」
こうして、飯富虎昌と義信旗本二十名を家臣にした。
御屋形様は、義信家臣を家臣にしたことを、事の他喜び、山本家の所領を父、山本勘助が生きていた八百貫に加え、義信の所領の内、二百貫も与え加増した。
今まで山本家には疋田文五郎と上野衆原衆しかいなかったが、飯富虎昌と二十名の旗本はこれからの合戦において、山本軍四百名を指揮する必要な士卒となるのだった。
祖父上様は亡くなる前、息子達に与える兵以外に精鋭百人を家臣として譲って下された。
この精鋭百人は、武田家で一番勇猛な赤備えに匹敵し、嬉しい人材である。
また、祖父上様の息子、叔父上達も、今後、何か有れば合力すると約定まで書いてくれた。
こうしている間に駿河の今川義元を殺し、名を挙げた尾張の織田信長を脅威に思ったので、新たな得物の開発を模索していたのである。
しかし、躑躅ヶ崎館にて、俺の功績を苦々しく思っている者がいた。
武田家嫡男、武田太郎義信と親族衆の穴山信君である。
「憎っくき小僧め! 父上の関心を引いておる」
「さようですな義信様、御屋形様は、何故あの様な者を重用するのか? 解りませぬ! 義信様。あの様な浪人者の血筋を、もし、武田に残しては、甲斐、信濃の領地を乗っ取るやも知れぬ! 儂に策がございます。義信様。守役の飯富虎昌や側近の長坂昌国、曽根虎盛達に働きかけるのがよろしいかと……」
「うむ、考えておく……」
こうして、穴山信君に義信はそそのかされ、謀叛を企む切っ掛けとなった。
御屋形様が、上野、長野氏攻めから後に、駿河の今川氏真との同盟を辞め、侵略するとの噂が流れた。
永録十年、六月二日、この噂を聞き、御屋形様にお伺いを立て躑躅ヶ崎館に、家臣の疋田文五郎と率いてる軍勢を伴い守備に向かった。
すると、躑躅ヶ崎館は義信の家臣八十名の襲撃を受け混乱していた。
上杉政虎から奪った太刀で、襲い掛かって来た義信の家臣三人を相手に斬り結び、俺や疋田、上野衆、原衆の圧倒的な武力で義信の家臣を斬り倒し、御屋形様の下に馳せ参じた。
御屋形様も義信に対抗できる家臣を率いていたので、義信の謀叛は失敗し、義信やその家臣達は捕縛された。
義信は、その後自害し、義信謀叛騒動は終わったが、この時、裏で暗躍していた穴山信君の謀叛の関与が解らなかった。
しかし、御屋形様は俺を呼び出し、
「勘蔵。ご苦労であった。よくぞ助けてくれた……。お主に頼みがある。義信の家臣の中に殺すのが惜しい者がいる。その者達を説得し、お主の家臣としてもらいたい。頼むぞ」
義信家臣が捕縛され、牢に閉じ込められてる部屋に行き、そこに居た義信の守役であり、筆頭家老、飯富虎昌や側近の長坂昌国、曽根虎盛達二十名の旗本を家臣にすべく、説得を始めた。
「義信様の家臣の皆様、俺が山本勘蔵にござる。御屋形様から聞いているように、俺の家臣になって頂きたい。お頼み申す!」
「儂の名は、飯富虎昌じゃ。儂が皆の者の替わりに答えよう。否じゃ! 儂達は義信様に忠誠を誓っておる。そなたの様な童に仕える気がせぬ! 殺せ!」
「そなた達は殺せぬ。右目をやろう。そして、そなた達が俺の右目として家臣になって頂きたい」
おれが、右手で右目を太刀で斬り裂こうとした時である。
「待ちなされ。勘蔵殿。何故、それがし達に情けを掛け家臣にしようとする?」
「お主達の様な忠義に厚く、才のある者達を殺すのはあまりにも惜しい。頼む。俺の家臣になってくれ!」
涙ながらに、義信家臣達に平伏した。
「面を上げなされ勘蔵様。この儂、飯富虎昌は勘蔵様に忠誠を誓いまする。皆の者良いな!」
「「「御意!」」」
こうして、飯富虎昌と義信旗本二十名を家臣にした。
御屋形様は、義信家臣を家臣にしたことを、事の他喜び、山本家の所領を父、山本勘助が生きていた八百貫に加え、義信の所領の内、二百貫も与え加増した。
今まで山本家には疋田文五郎と上野衆原衆しかいなかったが、飯富虎昌と二十名の旗本はこれからの合戦において、山本軍四百名を指揮する必要な士卒となるのだった。
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