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拓真と休日が重なった日、買い出しに行ったドラッグストアの帰り道で両手に買い物バックを持って信号待ちをしていると、ブランドバックを持ったマダムに声をかけられた。
「あら、やっぱり村井先生だわ。ご無沙汰しております」
綺麗にセットされた髪型をしたマダムに頭を下げられ、スウェット姿の拓真も頭を下げた。
「息子さん、お元気にしてますか?」
「ええ、とても元気にしております。その節は息子が大変お世話になりました。先生がいてくれなかったら息子は今ごろ冤罪をかけられたまま刑務所の中でした」
「…………」
どうやらマダムは拓真の依頼人の母親で、拓真は息子を冤罪から救ったらしい。
……ドラマみたいな立派な弁護士してるじゃねぇか。親友を騙してセックスを強要した人間とは思えねぇな。
「先生のような立派な方がいらっしゃれば、この国の将来は明るいですわ」
……そうか? こいつの性格は根暗だぞ?
「先生、どうかこれからも弱者を助けるヒーローでいてくださいね」
……マダム、こいつの特技はチンコマッサージですよ?
そう言ってやりたいのをぐっと堪えて、信号が青になるのを待った。
信号が青になると、拓真とマダムはまた頭を下げ、歩き出した。
「なぁ、お前って今まで何人と寝た?」
後ろを歩くマダムに聞こえないように小さな声で拓真に聞いた。
「なんで?」
「俺、お前のこと何も知らないかもって思って」
俺だって前はこいつのことをピンチに必ず助けてくれるヒーローだと思ってたけど、今じゃすっかり見返りを求めるダークヒーローになってしまった。
でも誰かにとってはこいつはまだヒーローなんだ。
「一人」
拓真が前を見ながら言った。
「一人?」
絶対嘘だ。こいつは俺の知らないところでヤりまくってるんだ。
「愛のないセックスはカウントしないって決めてるから」
……その一人って、俺かよっ!
横断歩道を渡り切ったところで、マダムが追い抜いて行ったのを確認し、宣戦布告をした。
「俺はお前と付き合う気はないからなっ!」
「わかってる。セックスもする親友だろ?」
「ちがうっ! もう親友ではないし! セフレもいらないっ!」
「俺はお前とセックスできればどんな関係でもいいから」
拓真はしれっとそう言って俺を置いて歩き出した。
……拓真のくせに開き直りやがって! 悪徳弁護士がっ!
「……んっ……んっ……、……もう、やめろって……」
俺の乳首を舐め続けている拓真の肩を掴み、乳首から引き剥がした。
「前から言ってるだろっ? お前は前戯が長過ぎるんだよっ!」
今までどんなセックスしてきやがったんだ。これじゃ前戯だけで空っぽになっちまうじゃねーかっ!
赤く腫れ上がった乳首は、シーツが擦れるだけで感じて最悪だった。
「久しぶりの休みなんだから楽しませろよ」
拓真が抱きついてきた。
「俺の体で楽しむなっ」
「スマホもパソコンも事務所に置いてきたから今日は絶対に仕事しない」
「久しぶりの休みなのにセックスしかしないつもりかっ!?」
「最高の休みだな」
拓真が眼鏡をしていない顔で珍しくニッコリと笑った。
……最悪の休みだっ!
ただの親友だったころは全く性の匂いをさせなモブ人間だったくせに今じゃ性獣にしか見えない。
拓真の言う通り、すっかり親友なのにセックスもする関係になっているのが悔しい。
……まんまと嵌められたんだ。こいつは親友の皮を被った獣だったんだ。
ベッドの下に敷いてあった布団に移動し、毛布にくるまった。
「お母さん、彼氏と旅行行きたいんだって?」
「なんで知ってるんだよ?」
「俺に工面してくれって連絡があった」
「あいつっ!!」
拓真にまで金せびりやがったのかっ!
「今までも何度かあったけど黙って渡してた。お前のために」
「…………」
……知らなかった。俺の知らないところでそんなことまでしてくれてたのか。
毛布から顔を出すと、拓真はベッドの上から俺を見ていた。
「俺の目的はいずれお前を借金地獄に落として俺とセックスすることを選択させることだったから、お母さんもその材料だったし」
「人の母親を材料って言うなっ!」
感動して損したっ!
こいつの目的は結局俺の体じゃねーかっ!
毛布にくるまってこのまま眠ってしまうことにした。
「俺だってお前の幸せだけを願ったこともあったよ。お前のために稼げる職業も選んだし、お前に金を貸せるように仕事も頑張ったよ」
「…………」
「でもやっぱりお前が俺以外と幸せになるのを想像すると耐えられなかった。お前の前で聖人でいることができなくなって、お前を手に入れる方法ばかりを考えるようになった」
「…………」
「お前の代わりにたくさんの人と寝たけど、お前一人いれば十分なんだ」
「…………」
「好きだって言ったってお前は離れていくだけだから、そばにいるためにいっぱい優しくしたよ。お前をいつか抱くために」
「…………」
たしかに俺が欲しい優しさはいつも親じゃなくてこいつがくれた。
それが下心の裏返しなんて気づきもしなかったけど。おかげで俺だって今さらこいつを失うことはできなくなったし、こいつが他の男としてるところなんて想像したくもない。
……それがどういう感情なのかわからない。だってこいつは男だから。俺は男を好きになるなんてできないから。
……でもさすがに母親の分の恩返しはした方が良いだろうか。
毛布にくるまりながら恩返しの方法を考えた。
……こいつが求めるのが俺の体で、俺も差し出せるものが体しかないなら、セックスくらいさせてやった方がいいのだろうか。
俺は全然したくないけどこいつが喜ぶのはセックスだけだし。
「…………」
毛布から顔を出すと、いつの間にか拓真が横に座っていた。
「……週に二回だけならしてやってもいい」
指を二本立てると拓真に押し倒された。
「駄目。回数は俺が決める」
……こいつが性獣じゃなければなっ!
「あら、やっぱり村井先生だわ。ご無沙汰しております」
綺麗にセットされた髪型をしたマダムに頭を下げられ、スウェット姿の拓真も頭を下げた。
「息子さん、お元気にしてますか?」
「ええ、とても元気にしております。その節は息子が大変お世話になりました。先生がいてくれなかったら息子は今ごろ冤罪をかけられたまま刑務所の中でした」
「…………」
どうやらマダムは拓真の依頼人の母親で、拓真は息子を冤罪から救ったらしい。
……ドラマみたいな立派な弁護士してるじゃねぇか。親友を騙してセックスを強要した人間とは思えねぇな。
「先生のような立派な方がいらっしゃれば、この国の将来は明るいですわ」
……そうか? こいつの性格は根暗だぞ?
「先生、どうかこれからも弱者を助けるヒーローでいてくださいね」
……マダム、こいつの特技はチンコマッサージですよ?
そう言ってやりたいのをぐっと堪えて、信号が青になるのを待った。
信号が青になると、拓真とマダムはまた頭を下げ、歩き出した。
「なぁ、お前って今まで何人と寝た?」
後ろを歩くマダムに聞こえないように小さな声で拓真に聞いた。
「なんで?」
「俺、お前のこと何も知らないかもって思って」
俺だって前はこいつのことをピンチに必ず助けてくれるヒーローだと思ってたけど、今じゃすっかり見返りを求めるダークヒーローになってしまった。
でも誰かにとってはこいつはまだヒーローなんだ。
「一人」
拓真が前を見ながら言った。
「一人?」
絶対嘘だ。こいつは俺の知らないところでヤりまくってるんだ。
「愛のないセックスはカウントしないって決めてるから」
……その一人って、俺かよっ!
横断歩道を渡り切ったところで、マダムが追い抜いて行ったのを確認し、宣戦布告をした。
「俺はお前と付き合う気はないからなっ!」
「わかってる。セックスもする親友だろ?」
「ちがうっ! もう親友ではないし! セフレもいらないっ!」
「俺はお前とセックスできればどんな関係でもいいから」
拓真はしれっとそう言って俺を置いて歩き出した。
……拓真のくせに開き直りやがって! 悪徳弁護士がっ!
「……んっ……んっ……、……もう、やめろって……」
俺の乳首を舐め続けている拓真の肩を掴み、乳首から引き剥がした。
「前から言ってるだろっ? お前は前戯が長過ぎるんだよっ!」
今までどんなセックスしてきやがったんだ。これじゃ前戯だけで空っぽになっちまうじゃねーかっ!
赤く腫れ上がった乳首は、シーツが擦れるだけで感じて最悪だった。
「久しぶりの休みなんだから楽しませろよ」
拓真が抱きついてきた。
「俺の体で楽しむなっ」
「スマホもパソコンも事務所に置いてきたから今日は絶対に仕事しない」
「久しぶりの休みなのにセックスしかしないつもりかっ!?」
「最高の休みだな」
拓真が眼鏡をしていない顔で珍しくニッコリと笑った。
……最悪の休みだっ!
ただの親友だったころは全く性の匂いをさせなモブ人間だったくせに今じゃ性獣にしか見えない。
拓真の言う通り、すっかり親友なのにセックスもする関係になっているのが悔しい。
……まんまと嵌められたんだ。こいつは親友の皮を被った獣だったんだ。
ベッドの下に敷いてあった布団に移動し、毛布にくるまった。
「お母さん、彼氏と旅行行きたいんだって?」
「なんで知ってるんだよ?」
「俺に工面してくれって連絡があった」
「あいつっ!!」
拓真にまで金せびりやがったのかっ!
「今までも何度かあったけど黙って渡してた。お前のために」
「…………」
……知らなかった。俺の知らないところでそんなことまでしてくれてたのか。
毛布から顔を出すと、拓真はベッドの上から俺を見ていた。
「俺の目的はいずれお前を借金地獄に落として俺とセックスすることを選択させることだったから、お母さんもその材料だったし」
「人の母親を材料って言うなっ!」
感動して損したっ!
こいつの目的は結局俺の体じゃねーかっ!
毛布にくるまってこのまま眠ってしまうことにした。
「俺だってお前の幸せだけを願ったこともあったよ。お前のために稼げる職業も選んだし、お前に金を貸せるように仕事も頑張ったよ」
「…………」
「でもやっぱりお前が俺以外と幸せになるのを想像すると耐えられなかった。お前の前で聖人でいることができなくなって、お前を手に入れる方法ばかりを考えるようになった」
「…………」
「お前の代わりにたくさんの人と寝たけど、お前一人いれば十分なんだ」
「…………」
「好きだって言ったってお前は離れていくだけだから、そばにいるためにいっぱい優しくしたよ。お前をいつか抱くために」
「…………」
たしかに俺が欲しい優しさはいつも親じゃなくてこいつがくれた。
それが下心の裏返しなんて気づきもしなかったけど。おかげで俺だって今さらこいつを失うことはできなくなったし、こいつが他の男としてるところなんて想像したくもない。
……それがどういう感情なのかわからない。だってこいつは男だから。俺は男を好きになるなんてできないから。
……でもさすがに母親の分の恩返しはした方が良いだろうか。
毛布にくるまりながら恩返しの方法を考えた。
……こいつが求めるのが俺の体で、俺も差し出せるものが体しかないなら、セックスくらいさせてやった方がいいのだろうか。
俺は全然したくないけどこいつが喜ぶのはセックスだけだし。
「…………」
毛布から顔を出すと、いつの間にか拓真が横に座っていた。
「……週に二回だけならしてやってもいい」
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「駄目。回数は俺が決める」
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