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I
VI
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「五月蝿いし...暗いし...。」
止まっていた時を動かしたのは、低くて艶のある声の持ち主。
「如月__きさらぎ__#様!」
「おはようございますっ、如月様...!」
如月という男の「暗い」という発言で、ようやく四方のランプに明かりが灯る。
クラスメイトの挨拶を無視して、身長に全ステータスを振ったような男は眠そうに目を擦りながら、というか半分寝ながら月城の隣の席に腰を掛けた。
「四季、紹介するよ。
彼は僕の親戚の如月 景光。」
「どーも...。」
「あっ...黒須 四季です...、よろしく。」
大きな体を丸めて寝る如月という男は、何だか猫に近い。
昨日居なかったと言うことから、如月も夜間授業を受けているヴァンパイアなのだろう。
こんな大きなやつに血を吸われたらさぞかし痛いんじゃなかろうか...。
「あの...綾斗様。
日中の授業に参加されるなんて珍しいですね?」
頬を染めた可愛らしい男が数人、月城の周りを一斉に取り囲んだ。
「今日は気分が良かったんだ。」
「それは何よりです...♡」
「僕たちも綾斗様と同じ空気が吸えて嬉しいって言うか...、ね?」
「そうそう!月城様、今日も大変お美しいです...♡」
(す、凄いな。同性相手にこんな熱烈なアピールされてる人、初めて見た。)
「ありがとう。」
でも、何か...
「で?
他に用事があるのかな?」
自分と話してる時と、全然雰囲気が違う気がする。
「いえ!特には...!失礼します!!」
焦りながら席へ戻っていく三人は、潜めた声で「かっこよかったね~!」「いい匂いする!」「あの目で殺されたい♡」と大興奮な様子。
なるほど、ヴァンパイアの中で月城 綾斗はかなり崇拝されている人物のようだ。
授業が始まったが、月城は自前の分厚い本を読んでおり、その間如月は爆睡。
この人たちは一体何をしに来たんだろう。
体育の授業は無く、基本は座学。
ただただ時間が過ぎていく中で、月城は一冊の本を読み終え、ついには二冊目にまで手を伸ばす。
四季はというと、課題が白紙だったことを怒られ、さらに課題を増やされた。
「つ...疲れた...。
授業のスピードが早い...ついていけない...。」
帰りのホームルームが終わる頃には既に意気消沈。
この環境に慣れるまで時間がかかりそうなのに、さらに授業の内容もこんなに難しいなんて思ってもみなかった。
「やっていける気がしない...。」
「やあ、四季!」
「あ...西園寺...。」
「君の魂が抜けきった顔を見に来てやったぞ。」
「ソウデスカ...。」
その場から1歩も動けないでいる四季に、そっぽを向きながら手を差し伸べる西園寺は何やら頬を赤らめている。
「どした?西園寺。」
「勉強...、教えてやってもいいぞ。」
今なら見える。
西園寺の後ろから差し込む後光が。
差し伸べられたそれは輝く手と言っても過言では無い。
今の自分を救ってくれる神の加護。
「西園寺...!」
学級委員の仕事が忙しくて早急に教室を出ていってしまった加賀美は、今度勉強を教えてくれると言っていたが
まさか、こんな近くにもう一人救いを差しのべてくれる神がいたなんて。
「勉強なら僕が教えよう。」
背後で穏やかな声を漏らした月城は鞄に分厚い本をしまい、四季の肩を掴んだ。
「君さえ良ければだけど。」
「えっ!?あ...でも西園寺が...!」
「四季!月城様にお勉強を教えていただけるなんて滅っっっっっっっ多にない機会なんだ!早く行け!」
(えええ...、さっきまでの会話は何だったんだよ。)
「景光、そろそろ起きる時間だよ。」
「んぇ...っ。」
結局来てから今の今まで眠っていた如月は、眠そうに目を擦りながら辺りを見渡した。
そして、西園寺を見るなり
「あ...ひそか...。」
西園寺の腕をガッチリと掴む。
「俺の枕が何でこんなところに...。」
「わわっ、如月様!?私はあなたの枕じゃありませんよ!お目覚めになってください!」
「さて、俺の部屋でもう一眠り...。」
「うわああああ!」
自分の鞄すら置き去りにした如月は西園寺をズルズルと引き摺って教室を後にした。
接点が無さそうな二人だが、意外と仲良し...?なのかもしれない。
「僕達も行こうか。」
薄く開いた口から、鋭い牙が見える。
それを見る度、昨夜触った薔薇の棘を思い出し、月城も西園寺も...あの加賀美でさえもヴァンパイアなのだということを実感する。
「う、うん。」
「僕の部屋でいいよね?」
「図書室は?めちゃくちゃ広いだろ、ここの図書室って。」
密閉された空間に二人きりだなんて、少し緊張する。
完治した傷のこと、ヴァンパイアである月城のこと、四季の名前を知っていた理由...聞きたいことは沢山あるけど...
「僕と二人きりは不安かな...?」
ハッキリ言ってめちゃくちゃ不安だ。
「月城様」、「綾斗様」なんて呼ばれて、一線置かれてるような人は絶対に只者じゃない。
しかも手の甲に平然とキスするような人だし...。
ただ、そんなことを本人に向かって言える訳もなく...
「不安じゃない...です。」
「そう、じゃあ行こう。」
黒須 四季
入学二日目にして、新月クラスのボスらしき人物と接点を持ってしまいました。
止まっていた時を動かしたのは、低くて艶のある声の持ち主。
「如月__きさらぎ__#様!」
「おはようございますっ、如月様...!」
如月という男の「暗い」という発言で、ようやく四方のランプに明かりが灯る。
クラスメイトの挨拶を無視して、身長に全ステータスを振ったような男は眠そうに目を擦りながら、というか半分寝ながら月城の隣の席に腰を掛けた。
「四季、紹介するよ。
彼は僕の親戚の如月 景光。」
「どーも...。」
「あっ...黒須 四季です...、よろしく。」
大きな体を丸めて寝る如月という男は、何だか猫に近い。
昨日居なかったと言うことから、如月も夜間授業を受けているヴァンパイアなのだろう。
こんな大きなやつに血を吸われたらさぞかし痛いんじゃなかろうか...。
「あの...綾斗様。
日中の授業に参加されるなんて珍しいですね?」
頬を染めた可愛らしい男が数人、月城の周りを一斉に取り囲んだ。
「今日は気分が良かったんだ。」
「それは何よりです...♡」
「僕たちも綾斗様と同じ空気が吸えて嬉しいって言うか...、ね?」
「そうそう!月城様、今日も大変お美しいです...♡」
(す、凄いな。同性相手にこんな熱烈なアピールされてる人、初めて見た。)
「ありがとう。」
でも、何か...
「で?
他に用事があるのかな?」
自分と話してる時と、全然雰囲気が違う気がする。
「いえ!特には...!失礼します!!」
焦りながら席へ戻っていく三人は、潜めた声で「かっこよかったね~!」「いい匂いする!」「あの目で殺されたい♡」と大興奮な様子。
なるほど、ヴァンパイアの中で月城 綾斗はかなり崇拝されている人物のようだ。
授業が始まったが、月城は自前の分厚い本を読んでおり、その間如月は爆睡。
この人たちは一体何をしに来たんだろう。
体育の授業は無く、基本は座学。
ただただ時間が過ぎていく中で、月城は一冊の本を読み終え、ついには二冊目にまで手を伸ばす。
四季はというと、課題が白紙だったことを怒られ、さらに課題を増やされた。
「つ...疲れた...。
授業のスピードが早い...ついていけない...。」
帰りのホームルームが終わる頃には既に意気消沈。
この環境に慣れるまで時間がかかりそうなのに、さらに授業の内容もこんなに難しいなんて思ってもみなかった。
「やっていける気がしない...。」
「やあ、四季!」
「あ...西園寺...。」
「君の魂が抜けきった顔を見に来てやったぞ。」
「ソウデスカ...。」
その場から1歩も動けないでいる四季に、そっぽを向きながら手を差し伸べる西園寺は何やら頬を赤らめている。
「どした?西園寺。」
「勉強...、教えてやってもいいぞ。」
今なら見える。
西園寺の後ろから差し込む後光が。
差し伸べられたそれは輝く手と言っても過言では無い。
今の自分を救ってくれる神の加護。
「西園寺...!」
学級委員の仕事が忙しくて早急に教室を出ていってしまった加賀美は、今度勉強を教えてくれると言っていたが
まさか、こんな近くにもう一人救いを差しのべてくれる神がいたなんて。
「勉強なら僕が教えよう。」
背後で穏やかな声を漏らした月城は鞄に分厚い本をしまい、四季の肩を掴んだ。
「君さえ良ければだけど。」
「えっ!?あ...でも西園寺が...!」
「四季!月城様にお勉強を教えていただけるなんて滅っっっっっっっ多にない機会なんだ!早く行け!」
(えええ...、さっきまでの会話は何だったんだよ。)
「景光、そろそろ起きる時間だよ。」
「んぇ...っ。」
結局来てから今の今まで眠っていた如月は、眠そうに目を擦りながら辺りを見渡した。
そして、西園寺を見るなり
「あ...ひそか...。」
西園寺の腕をガッチリと掴む。
「俺の枕が何でこんなところに...。」
「わわっ、如月様!?私はあなたの枕じゃありませんよ!お目覚めになってください!」
「さて、俺の部屋でもう一眠り...。」
「うわああああ!」
自分の鞄すら置き去りにした如月は西園寺をズルズルと引き摺って教室を後にした。
接点が無さそうな二人だが、意外と仲良し...?なのかもしれない。
「僕達も行こうか。」
薄く開いた口から、鋭い牙が見える。
それを見る度、昨夜触った薔薇の棘を思い出し、月城も西園寺も...あの加賀美でさえもヴァンパイアなのだということを実感する。
「う、うん。」
「僕の部屋でいいよね?」
「図書室は?めちゃくちゃ広いだろ、ここの図書室って。」
密閉された空間に二人きりだなんて、少し緊張する。
完治した傷のこと、ヴァンパイアである月城のこと、四季の名前を知っていた理由...聞きたいことは沢山あるけど...
「僕と二人きりは不安かな...?」
ハッキリ言ってめちゃくちゃ不安だ。
「月城様」、「綾斗様」なんて呼ばれて、一線置かれてるような人は絶対に只者じゃない。
しかも手の甲に平然とキスするような人だし...。
ただ、そんなことを本人に向かって言える訳もなく...
「不安じゃない...です。」
「そう、じゃあ行こう。」
黒須 四季
入学二日目にして、新月クラスのボスらしき人物と接点を持ってしまいました。
応援ありがとうございます!
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