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しばらくの別れを告げられたのは、その日、クエストを終えてパーティの共有リビングでくつろいでいた時だった。
王子は、現実の生活が忙しくなりゲームが出来なくなる旨を説明してくれた。
「うーん。早くて一か月くらい?長かったら数か月?ネットに繋げられない状況になるんだけど、早く戻ってくるつもりだから~」
「聖女さん、待っていてくださいね!」
「体に気を付けて過ごせ」
三人の言葉に、私は咄嗟に返事が返せなかった。
この状況には覚えがあった。
今までだって、まるで知人が出来なかったわけではないのだ。それなりの会話をする親しい人が出来ることもあった。
最初のフォーラムだって、様々なチャットの場所でだって、そこで会話をしてくれる人がいなかったら、私はもうとっくに狂っていたのだろうと思う。
本物の人との触れ合いではなかったけれど、それでも、人の声に触れ、想いに寄り添えることは、ほんの少しの救いになっていた。
だけれど、数年を共に過ごすと、誰もが何かのきっかけで縁が切れて行く。
就職・結婚・引っ越し、理由は様々だったけれど、現実の環境の変化で消えていく人が多い。
初めは少しログインできない、そう言うだけなのだけど、一度離れてしまえば、心が離れてしまうのはあっという間なのだ。
数か月もしなかったゲームのことなど、もう思い出すこともないだろう。
そうしてゲームの中でしか縁がなかった人物とはもう、この広いネットの中で再び会うこともないんだろう。
3年の期間、ほぼ毎日を共に過ごしたこの人たちも、きっとここで終わりだ。
「あ……気をつけて」
やっと言葉を紡ぎ出した私は、にへり、と笑顔を張り付けた。
とたんに勇者が不快そうに顔を顰めた。
(なぜ、最後のときまでそんな顔をするんだ)
ああ、最後くらいは、時折見せてくれた、心から楽しそうな笑顔が見たかったのに。
姫が走り寄って来て、両手で私の手を握った。
「お土産話いっぱい持って来ますからね!」
「聖女さんもゲームしすぎないで元気にしててね~」
「……まただ」
三人は笑顔で手を振って、徐々に姿を消すようにしてログアウトして行った。
シュン、と音がするように消えていく様子を見送った私は、無音の部屋の中で、一人になったことを実感していた。
さっきまで暖かだったその場所は、今では現実の自分の部屋と何も変わらないものに思えていた。
あの人たちは設定ごっこに三年も付き合ってくれた。
こんなに楽しく過ごせた日々は、きっと、もう人生で二度と訪れない。
感謝しているのに、それでも今は胸が張り裂けそうに苦しい。
「ふぇ……っ」
気が付くと止まらない涙が溢れかえり、号泣していた。
(嫌だ、嫌だ、一人は寂しい。出来るならあの人たちと一緒に行きたかった)
会ったこともない、現実のことなど何もしらない人間に夢を見るような、私は狂った人間だ。
ああ、夢だ。夢の中の私は、年相応の普通の人間なんだ。
今はどこかの村か都市に住むただの学生で。
毎日学校から帰って来てネトゲを楽しんでいたのだ。
そこで知り合った気の合う仲間と毎日一緒に遊び、そうして誰かが言い出すのだ「そろそろ現実でも遊ぼうよ」出会ってみると、アバターとは全然違う姿の子供たちで、みんなで笑いあうのだ。
そんなありもしない幸福を頭の中で考えるだけでも、寂しさを紛らわせることが出来てしまうくらい。
私は彼らのことがとても好きだった。
「うええええええ……」
誰も居ない部屋の中で奇声のような鳴き声をあげても、もう、誰にも届かない。
「なんだその声は……」
――――はずだった。
顔を上げると、勇者が部屋の中に立っていた。
背の高い引き締まった体の上の整った顔立ちには、今困惑の表情が浮かんでいた。
勇者はソファに座った私の前に跪くようにしゃがみこんだ。
「変な顔をしていたから戻ってみれば……なんで泣いているんだ?」
「うええ?」
しゃくりあげる私と会話にならないことを感じたのか、ため息をついた勇者は私の隣に座り込むと、私の頭を抱え込むように抱きしめた。
「ううぇ?」
「泣くな」
勇者は私が頭を撫でられることを好きなことを知っている。ゆっくりゆっくり大事なものに触れるように撫でてくれた。
「うええ勇者ぁぁぁ」
「なんだ……」
声にならない声で泣き叫ぶ私をいつまでも呆れることなく抱きしめ頭を撫でる勇者。
「もう二度と会えないと思ったよぉぉぉ」
「……そんなことは言ってない」
「言わなくてもそうなんだよ。生活が忙しくなると皆居なくなっていくんだよ」
「居なくならない」
「勇者だって恋人が出来たら、脳内お花畑になって、もう私のことなんて思い出さないんだよぉぉ」
「居なくならないと言ってるだろう」
「嘘でもそう言ってくれる勇者のぶっきらぼうな声がずっと好きだったんだよ……」
私の言葉に勇者は体を離すと、深いため息をついた。
「……お前は……」
諦めたように視線を伏せ、少し考えるようにしてから「ちょっと待っていろ」と移動魔法で姿を消した。
ログアウトした様子もないので、きょとんとしたままその場で待っていると、しばらくして勇者が手に何かを抱えて戻って来た。
そうしてソファの隣に座り込むと、有無を言わさず私の手を持ち上げ、その指に箱から出した指輪をはめようとしてきた。私は慌てて手を引っ込めて叫んだ。
「いやいやいや、何してんの勇者!?」
「恋人になればいいんだろう」
「ちょっとまって、それゲームマスターから直に買うしかない、ゲーム婚アイテムよね?」
「そうだ。これにお前と稼いだ金をほぼ費やした。ああ、恋人ではなく結婚だったか」
「そうだけど……そうじゃなくて!?」
このゲームの世界には結婚が出来ると言う概念が存在していた。
と言っても、現実の結婚とはまた違う。例えば現実で結婚している男性が、ゲームの中では女性アバターを作り、ゲームの中だけの関係の男性アバターと結婚することも可能だった。
だから、強制力はほとんどない、お遊びのような結婚なのだけど。
「なんで急にゲーム婚することになってるんだよ!」
「好きだからだ」
「なにを」
「お前が好きだからだ」
「……」
「側にいると約束をしたいからだ。居なくならないと何度言ってもお前が信じないからだ」
青い瞳がまっすぐに私を見つめている。
大人しくなった私を見ると、勇者はもう一度手を握り、私の指にするりと指輪をはめた。
「……いやなら、はずしてくれ」
「嫌じゃない……」
見つめ合ったまま、何を言ったらいいのか分からず、混乱と動悸が私を襲っていた。
「どこが、好きなの?」
「言っていることも、考えていることも、反応も全部だ」
「ゲームの中のこのキャラが好きなの?」
「それは分からないが、俺の心が、ゲームからログアウトしていても、ずっとお前のことを考えている。人を好きになったこと自体が初めてだ」
「そっか……一緒だね」
話していない時でも、ログアウトしているときでも、勇者の生真面目な顔を思い出すだけで私は幸せな気持ちになれていた。
きっと、一生現実で会うこともないのだろうけれど。
それでも私の心は確かに誰かを好きになることが出来た。
そうして、かりそめの私を好きだと言ってくれる人に出会えた。
「待っていてくれ。必ず戻る」
「……待ってる」
それはもしかしたら、残酷なことなのかもしれない。
ゲームの中だけの恋人を持ち続けることの意味をふと思う。
私は勇者とずっと一緒に居たいと思う気持ちと、彼の為にもう二度と戻って来なければいいという願いを、心の中で同時に持った。
「好きだよ、勇者」
最初で最後になるかもしれない言葉を紡いだ私に、返事のように、勇者の口づけが落とされた。
王子は、現実の生活が忙しくなりゲームが出来なくなる旨を説明してくれた。
「うーん。早くて一か月くらい?長かったら数か月?ネットに繋げられない状況になるんだけど、早く戻ってくるつもりだから~」
「聖女さん、待っていてくださいね!」
「体に気を付けて過ごせ」
三人の言葉に、私は咄嗟に返事が返せなかった。
この状況には覚えがあった。
今までだって、まるで知人が出来なかったわけではないのだ。それなりの会話をする親しい人が出来ることもあった。
最初のフォーラムだって、様々なチャットの場所でだって、そこで会話をしてくれる人がいなかったら、私はもうとっくに狂っていたのだろうと思う。
本物の人との触れ合いではなかったけれど、それでも、人の声に触れ、想いに寄り添えることは、ほんの少しの救いになっていた。
だけれど、数年を共に過ごすと、誰もが何かのきっかけで縁が切れて行く。
就職・結婚・引っ越し、理由は様々だったけれど、現実の環境の変化で消えていく人が多い。
初めは少しログインできない、そう言うだけなのだけど、一度離れてしまえば、心が離れてしまうのはあっという間なのだ。
数か月もしなかったゲームのことなど、もう思い出すこともないだろう。
そうしてゲームの中でしか縁がなかった人物とはもう、この広いネットの中で再び会うこともないんだろう。
3年の期間、ほぼ毎日を共に過ごしたこの人たちも、きっとここで終わりだ。
「あ……気をつけて」
やっと言葉を紡ぎ出した私は、にへり、と笑顔を張り付けた。
とたんに勇者が不快そうに顔を顰めた。
(なぜ、最後のときまでそんな顔をするんだ)
ああ、最後くらいは、時折見せてくれた、心から楽しそうな笑顔が見たかったのに。
姫が走り寄って来て、両手で私の手を握った。
「お土産話いっぱい持って来ますからね!」
「聖女さんもゲームしすぎないで元気にしててね~」
「……まただ」
三人は笑顔で手を振って、徐々に姿を消すようにしてログアウトして行った。
シュン、と音がするように消えていく様子を見送った私は、無音の部屋の中で、一人になったことを実感していた。
さっきまで暖かだったその場所は、今では現実の自分の部屋と何も変わらないものに思えていた。
あの人たちは設定ごっこに三年も付き合ってくれた。
こんなに楽しく過ごせた日々は、きっと、もう人生で二度と訪れない。
感謝しているのに、それでも今は胸が張り裂けそうに苦しい。
「ふぇ……っ」
気が付くと止まらない涙が溢れかえり、号泣していた。
(嫌だ、嫌だ、一人は寂しい。出来るならあの人たちと一緒に行きたかった)
会ったこともない、現実のことなど何もしらない人間に夢を見るような、私は狂った人間だ。
ああ、夢だ。夢の中の私は、年相応の普通の人間なんだ。
今はどこかの村か都市に住むただの学生で。
毎日学校から帰って来てネトゲを楽しんでいたのだ。
そこで知り合った気の合う仲間と毎日一緒に遊び、そうして誰かが言い出すのだ「そろそろ現実でも遊ぼうよ」出会ってみると、アバターとは全然違う姿の子供たちで、みんなで笑いあうのだ。
そんなありもしない幸福を頭の中で考えるだけでも、寂しさを紛らわせることが出来てしまうくらい。
私は彼らのことがとても好きだった。
「うええええええ……」
誰も居ない部屋の中で奇声のような鳴き声をあげても、もう、誰にも届かない。
「なんだその声は……」
――――はずだった。
顔を上げると、勇者が部屋の中に立っていた。
背の高い引き締まった体の上の整った顔立ちには、今困惑の表情が浮かんでいた。
勇者はソファに座った私の前に跪くようにしゃがみこんだ。
「変な顔をしていたから戻ってみれば……なんで泣いているんだ?」
「うええ?」
しゃくりあげる私と会話にならないことを感じたのか、ため息をついた勇者は私の隣に座り込むと、私の頭を抱え込むように抱きしめた。
「ううぇ?」
「泣くな」
勇者は私が頭を撫でられることを好きなことを知っている。ゆっくりゆっくり大事なものに触れるように撫でてくれた。
「うええ勇者ぁぁぁ」
「なんだ……」
声にならない声で泣き叫ぶ私をいつまでも呆れることなく抱きしめ頭を撫でる勇者。
「もう二度と会えないと思ったよぉぉぉ」
「……そんなことは言ってない」
「言わなくてもそうなんだよ。生活が忙しくなると皆居なくなっていくんだよ」
「居なくならない」
「勇者だって恋人が出来たら、脳内お花畑になって、もう私のことなんて思い出さないんだよぉぉ」
「居なくならないと言ってるだろう」
「嘘でもそう言ってくれる勇者のぶっきらぼうな声がずっと好きだったんだよ……」
私の言葉に勇者は体を離すと、深いため息をついた。
「……お前は……」
諦めたように視線を伏せ、少し考えるようにしてから「ちょっと待っていろ」と移動魔法で姿を消した。
ログアウトした様子もないので、きょとんとしたままその場で待っていると、しばらくして勇者が手に何かを抱えて戻って来た。
そうしてソファの隣に座り込むと、有無を言わさず私の手を持ち上げ、その指に箱から出した指輪をはめようとしてきた。私は慌てて手を引っ込めて叫んだ。
「いやいやいや、何してんの勇者!?」
「恋人になればいいんだろう」
「ちょっとまって、それゲームマスターから直に買うしかない、ゲーム婚アイテムよね?」
「そうだ。これにお前と稼いだ金をほぼ費やした。ああ、恋人ではなく結婚だったか」
「そうだけど……そうじゃなくて!?」
このゲームの世界には結婚が出来ると言う概念が存在していた。
と言っても、現実の結婚とはまた違う。例えば現実で結婚している男性が、ゲームの中では女性アバターを作り、ゲームの中だけの関係の男性アバターと結婚することも可能だった。
だから、強制力はほとんどない、お遊びのような結婚なのだけど。
「なんで急にゲーム婚することになってるんだよ!」
「好きだからだ」
「なにを」
「お前が好きだからだ」
「……」
「側にいると約束をしたいからだ。居なくならないと何度言ってもお前が信じないからだ」
青い瞳がまっすぐに私を見つめている。
大人しくなった私を見ると、勇者はもう一度手を握り、私の指にするりと指輪をはめた。
「……いやなら、はずしてくれ」
「嫌じゃない……」
見つめ合ったまま、何を言ったらいいのか分からず、混乱と動悸が私を襲っていた。
「どこが、好きなの?」
「言っていることも、考えていることも、反応も全部だ」
「ゲームの中のこのキャラが好きなの?」
「それは分からないが、俺の心が、ゲームからログアウトしていても、ずっとお前のことを考えている。人を好きになったこと自体が初めてだ」
「そっか……一緒だね」
話していない時でも、ログアウトしているときでも、勇者の生真面目な顔を思い出すだけで私は幸せな気持ちになれていた。
きっと、一生現実で会うこともないのだろうけれど。
それでも私の心は確かに誰かを好きになることが出来た。
そうして、かりそめの私を好きだと言ってくれる人に出会えた。
「待っていてくれ。必ず戻る」
「……待ってる」
それはもしかしたら、残酷なことなのかもしれない。
ゲームの中だけの恋人を持ち続けることの意味をふと思う。
私は勇者とずっと一緒に居たいと思う気持ちと、彼の為にもう二度と戻って来なければいいという願いを、心の中で同時に持った。
「好きだよ、勇者」
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