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05:王太子と神殿
しおりを挟むアニョロは、要再教育となり、その間は神殿に近付く事を禁止された。
その期間は思ったりも長く、アニョロは17歳に、神の巫女カテリーナは11歳になっていた。
アニョロは久しぶりに訪れた神殿で、神の像の前に立つ。
そこは神官や巫女が祈りを捧げる場ではなく、誰でも神に祈りを捧げる事の出来る開放された講堂であった。
特に決まりもなく、各々が好きに祈りを捧げている。
膝を突き、両手を胸の前で組んで、目を閉じている者。
平伏するようにして祈る者。
立ったまま、お辞儀をするようにしている者。
像を見つめたまま手を合わせ、何やらブツブツと独語を呟いている者も居る。
神の前では全てが平等。
王太子であっても、誰も場所を譲らないし、挨拶をしてくる者も居なかった。
アニョロは、神殿が嫌いだった。
外では自分の顔を見る事すら叶わない平民が、平気で自分の横に立つのだ。
幼い頃にそれが納得いかず、隣の平民の足を蹴った事があった。
慌てて神官がとんで来て、蹴られた男に謝っていた。
男は「子供のした事だから」と、さも自分は寛大だというように、アニョロを許した。
神殿の敷地から出た瞬間に無礼討ちにしようと後を付けたら、護衛に捕まり王宮へと無理矢理連れ帰られた。
神殿からは「王太子殿下は、神殿に来るには些か早いようですな」との苦言を貰った。
「なぜ、国で1番偉い王族が、平民に気を使わなきゃいけないんだ!」
何を言われても、どれだけ諭されても、アニョロの考えは変わらなかった。
神殿に行けるようになるのに、5年以上掛かってしまった。
しかも神殿に行けるようになっても、アニョロは神官達の出入口を使用していた。
中で何か気に入らない事があっても、その相手がどこの誰だか調べる事が出来ないようにだ。
成人して、やっと普通の扉からの出入りが許された。
神の国であるキメンティ王国の王太子が、神との交流の場である神殿に入るのに制約があるのは、外聞が悪いからである。
そんなアニョロの二度目の神殿使用禁止令。
王太子の座に翳りが見えてきていた。
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