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36:街デートのお誘い
しおりを挟む甘々な空気を振り撒いているオズヴァルドと婚約者を観察しながら、理想の結婚の話をする。
それがここ最近のフェデリーカ達の、食堂での過ごし方だった。
ロザリアもイレーニアも、政略結婚では無い。
多少はそのきらいがあるが、強制された訳では無い。
その為に婚約者の愚痴や惚気けも多い。
「研究に没頭するのは良いのですよ。その成果で今回フェディの事も上手くいきましたもの。でもね、もっと私との時間を取ってくださっても良いと思うの」
イレーニアが愚痴る。
「解ります!街にデートとか行きたいですよね!」
ロザリアもイレーニアに同意する。
二人は、卒業したら間を置かずに結婚となる。
恋人期間は、学園に居る間だけなのである。
「街デート、良いですよね。憧れます」
フェデリーカも二人を支持すると、今まで一線引いていたジェネジオが話に加わった。
「フェデリーカ嬢は、街デートをした事が無い?」
「はい。あ、いえ……一応街デートらしき事は婚約前にしましたが、今思えば相手の決めた場所へ連れて行かれただけで、一緒に楽しむという感じでは無かったです」
まだ12歳だったフェデリーカは、スティーグに連れられて色々な場所に行ったのをデートだと思っていた。
しかし今になって振り返ると、ただ単に一緒にデートスポットを歩いて回っただけだった。
手を繋ぐでも、腕を組むでもなく、スタスタと歩くスティーグの後を付いて歩いていただけだ。
そしてスティーグの決めた店で食事をし、スティーグの決めたカフェで休憩をし、スティーグの決めたメニューを注文した。
女性が喜びそうなカフェなどは、きっとカーラからの情報か、もしくは一緒に行ったのだろう。
そしてカーラおすすめのメニューをそのまま注文したに違いない。
店員がメニューをフェデリーカに渡そうとしたのを手で制し、勝手にどんどん注文していた。
その当時を思い出したフェデリーカの表情が曇る。
それにいち早く気付いたジェネジオは、フェデリーカに提案をする。
「フェデリーカ嬢、一緒に街に行こうか」
とても良い笑顔のジェネジオは、冗談を言っている様子は無い。
「え?」
フェデリーカが戸惑うと、ジェネジオは前のめりになり、更に話を続ける。
「フェデリーカ嬢の好きな場所に行こう。可愛い雑貨屋でも、評判のカフェでも良い」
グイグイとくるジェネジオに、思わずといった感じでフェデリーカは頷いてしまった。
昼休みも終わりに近付き、三人を1年の教室へ送ったジェネジオは、4年生の教室へと帰って行った。
「なりふり構わなくなってきたわ……」
呟いたのはイレーニアだ。
「えぇと、出掛けるのはリアとレーニも一緒なのかしら?」
フェデリーカが困惑しながら、二人へと問い掛ける。
「は?それじゃ、デートに保護者が付いて行くようなものよ。そんな無駄な時間を使うなら、私はディーと会うわ」
ロザリアが容赦の無い返答をする。
「そうですわね。特に私など、兄と出掛けても何も面白くないですわ」
イレーニアも断りを入れてきた。
「それでは、本当にデートになってしまうわ」
フェデリーカが頬を染め、それを両手で隠すようにする。
「いや、完全にデートのお誘いでしょ。何だと思ってたの?」
ロザリアの驚いた声に、イレーニアも同意の頷きを見せる。
「え?でも、だって……」
更に耳まで赤くなったフェデリーカを見て、二人が笑った。
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