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 新しい学年になっても、王太子達三人は相変わらず当たり前のように生徒会室に入り浸っています。
 本当は、ここに居る資格が有るのは王太子だけなのですが、もうどうでも良いですわね。

「もう辛いですぅ」
 内容と合わない甘ったるい声が生徒会室へと響きます。
 側妃教育の前の、貴族としての基礎の復習しかしていないはずなのですが、音を上げるのが早過ぎませんか?
 まだ高位貴族としての教育も始まっておりませんよね?
「何がそんなに辛いんだ?」
「王妃様がぁ、私のことをバカにするんですぅ」
 あの王妃に、他人を馬鹿にする資格なんて無い……いえ、唯一馬鹿に出来るレベルの相手がフローラかもしれませんわね。

「アンシェリー様、あの方は前からあの様な話し方でしたっけ?」
 タイラーが困惑気味に私に質問をしてきました。
「王妃様の教育の賜物ではないのですか?」
 時期的には、本当にその頃から口調が変わってます。
 あの口調でオネダリしたら上手くいった為に、何か訴える時にはアレにする事にしたのでしょう。

 今は、教育係がどんどん取り替えられている時期です。
 質の良い家庭教師は軒並みクビにした辺りでしょうか。
 雇われた家庭教師と違って逃げる事の出来ない婚約者の私に、フローラの教育を押し付けたのが丁度この頃でした。
 今回は私が為に、王妃が教えているのでしょうね。

 前回の私は、毎日王宮へ行っていました。
 王太子よりも遅くまで生徒会の仕事をした後、王宮へ向かい王妃になる為の教育を受け、をして、自宅へ帰り学園の勉強をしていました。
 そこへフローラの教育がねじ込まれたのです。
 邸に帰るのなど、夜中でした。
 いっそ王宮に部屋があれば、どれほど楽だったか……。

 ですが私には部屋は与えられず、王宮から実家が遠いと言う理由だけでフローラには部屋を与えられました。
 だからこそ、フローラは懐妊したわけですが……あぁ、口調が変わった理由が判った気がします。
 王太子がフローラの我儘を全て許すようになった理由も。
 前回は「私と王太子」「私とフローラ」「王太子とフローラ」と、完全に会う時が分かれていました。
 このようにだらしなく、娼婦と客のように振る舞う二人の姿を見る事などありませんでした。


 駄目ですね。解っているつもりでも、つい自分の常識で物事を考えてしまいます。
 結婚する前に関係を持つ方達だと、前回の人生でハッキリと判っていたはずなのに。
 それにしても、これほど早く関係を持っていたのに、懐妊したのは卒業間近でした。
 それほど都合良く事が運ぶものなのでしょうか?

「突然変な事を聞いてごめんなさいね。男女の営みで都合良く子供を作る方法などあるのかしら?」
 あ、皆様の視線が痛いです。
 それでも察しの良いカレーリナが視線をへ向けた後、私の顔を見ました。
「作るのは無理でも、作らないようにする薬はございますね。仮面舞踏会では、入口で配られる事もあるそうですよ」
 後継を産む事が義務である私は知りませんでしたが、そのような薬があるのですね。


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