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断罪後のお話 ※ざまぁ要素はもうありません
第89話:利害
しおりを挟む失敗した、と自覚したのは、大きく目を見開くリュオと不思議そうに顔を傾げるシュヴァルツェを見た時。
この反応には覚えがある。
ミリフィールとサラだ。
転生者仲間のミリフィールと今世の友人のサラに、『甘王公式本』を見せた時の反応。
それなら、と、胸の前に両手を上げた。
「何してるの?フィオ」
そう言ったのは、シュヴァルツェ。
絶句して私の胸元を凝視してるのはリュオ。
リュオの様子に気付いたシュヴァルツェが、脇腹を肘で小突く。
「いくら小さくても凝視するのは失礼だよ?」
よし、シュヴァルツェ。
お前は後で校舎裏集合な。
ダンスを終了したミリフィールとジェラールの元へと移動する。
2人ともコッソリとピースしてきた。
私のあの階段落ちの仕返しをしてくれたようだ。
サラとライジ殿下も舞台を降りダンスしていたようで、曲の終わりと同時にこちらへ歩いて来る。
絵文字のorzみたいになっていたマカルディーは、豆コンビに回収されていった。
「御婚約おめでとうございます。
イライジャ王太子殿下、サラシーア公爵令嬢」
軽くカーテシーをしながらお祝いの言葉を掛ける。
一応、社交の場だからね。
私の言葉に、リュオ以外が軽く礼をする。
これで判明した。
リュオの身分は、私より確実に上だ。
「王太子になれて良かったな、ライジ」
リュオがサムズアップをする。
「フィオを構い倒した甲斐があった」
ライジ殿下の黒い笑顔に、思わず腹パンくらいなら良いかな?と、拳を握る。
「良いと思うわ」
にこやかにサラが身体を寄せてきた。
「ええ、そのくらいなら許容範囲ですわ」
ミリフィールも近寄って来る。
「協力しよう」
ジェラールも笑顔。
皆を盾にして、遠慮なくライジ殿下の腹にワンパン叩き込んだ。
「勝手に巻き込んだ事は、申し訳なかった」
ここは王族控え室。
「王脈もない人間が筆頭公爵家を後ろ盾にすれば王位継承できるなんて、おかしな話だろう?」
私にワンパンされた腹をさすりながら、ライジ殿下が話す。
「フィオがマカルディーを嫌っていたのは知っていた。だが家の為に婚約解消しないのだと思っていた」
いや、公爵家ごと嫌ってますがな。
「魔法学園に入って、サラから婚約解消を望んでいると聞いてな。利害が一致するならと……」
ほほぅ?勝手に利用したと。
握り拳を作ると、ライジ殿下が慌てて身体を引く。
うん。さっき拳に氷を纏わせたのはやり過ぎだったか?
「フィオ、そのくらいで許してあげたら?貴女、顔に出過ぎるもの。
先に相談されてたらバカにバレバレだったでしょう?」
うぅん。否定出来ない。
しょうがない。許してやろう。
両手を胸の前に上げる。
「さっきからなにしてるの?フィオ」
首を傾げるシュヴァルツェ。
ブフッと吹き出したのは、ミリフィールとリュオ。
ライジ殿下は、周りの皆の様子をキョロキョロと見ていた。
「そこに何かがあるんだな?」
鋭い。当たり。
でも、見えてはいないのね。
「ここには、シフォンティーヌ・エクレール嬢がおります」
そんな私の台詞に被せるように、リュオが言った言葉。
「俺の推しの悪役令嬢だ」
この台詞に、私とミリフィールがドン引きしても、誰も責めないと思う。
「乙女げえむとか言うのだったか?」
ライジ殿下が手をポンと叩く。
シュヴァルツェもあぁ、と頷いていた。
この2人は、リュオから『甘王』……『王立魔法学園~幸せの甘い恋~』の話を聞いていたのだろう。
ビゼタールとルーベンが今いないのは、2人は誰からもゲームの話を聞いていないから。
しかし前世の記憶があるだけじゃなく、『甘王』をやった事があるとは……。
別に乙女ゲームを男がやっちゃいけないとかないけどね。
エロゲをする女性もいるだろうし。
胸の前に掲げていた『甘王公式本』をテーブルの上に置いた。
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